2015年に「冬は必ずやってくる」というサブタイトルの本が出版されたこともあるファーウェイ。同社にとっては長い冬が続いている。8月初めに報告された2021年上半期の業績は、通信インフラ、端末ともに大幅のマイナスを記録。ソフトウェアへ軸足を急いで移しているところだが、まだトンネルは長そうだ。
2021年上半期の売り上げは約30%という大きな減少
ファーウェイが2021年上半期(1~6月期)の業績報告を行なった。売上高は3204億人民元(約494億3800万ドル、約5兆4300万円)、2020年同期からは29.4%のマイナスとなった。
同社は基地局など通信インフラの「キャリア事業」、スマートフォンなどの「コンシューマ事業」、サーバーやストレージなど法人向け「エンタープライズ事業」の3つの事業を持っている。キャリア事業からスタートさせ、2000年代後半にコンシューマ事業を確立。そしてエンタープライズ事業を3つ目の柱として成長させてきた。米中貿易戦争の前までは、キャリア事業を上回る勢いでコンシューマー事業が成長し、エンタープライズ事業も自国中心とは言え、日本も含めた国内で顧客を増やして急成長中という流れだった。
さて2021年上半期、3事業の内容はというと、キャリア事業は1369億人民元(約211億2300万ドル、約2兆3200億円)。前年同期から14.2%のマイナスとなった。これまで強かった欧州においてもファーウェイ排除の動きが目立ち、軒並み5Gインフラに採用されない状況だ。それでも、お膝元の中国では5G向けをはじめ通信事業者のネットワーク投資が活発。そのこともあってマイナスは14.2%にとどまったようだ。
とにかく打撃が大きいコンシューマ事業 売上はほぼ半減
HUAWEI P50シリーズは4G端末として登場することに
3つの事業で最も減少したのが、コンシューマー事業だ。言うまでもなく、米国の制裁、そして世界的な半導体不足というダブルパンチを受けた。2021年上半期の売上高は1357億人民元(209億4000万ドル、約2兆3000億円)、これは前年同期からなんと47%の減少となる。ファーウェイは2020年11月に、「Honor」ブランドを切り離したが、これも影響したようだ。
ファーウェイのスマートフォン事業の苦しさは、7月末に発表した最新のフラッグシップ「HUAWEI P50」シリーズが5G対応ではないところからも感じられる。かつてはフランス・パリなど欧州の主要都市で華々しくローンチしていた同社のフラグシップ端末だが、HUAWEI P50の発表はオンラインで中国語のみだった。
5000万画素のメインカメラなど3眼構成の高性能のカメラ機能には注目が集まるものの、肝心のネットワークでは4Gまでの対応。米国の制裁により米国製の技術を利用できないためだ。一方で、Wi-Fi 6、AIアルゴリズムなどで、5Gスマートフォンと遜色ないレベルの性能を出せると、コンシューマ事業を率いるRichard Yu氏は語っていた。
HUAWEI P50には自社の「HarmonyOS」を搭載、もちろん(そのままでは)Google製アプリは使えない。プロセッサは、HiSiliconのKirin 9000またはSnapdragon 888となっている。
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