サンデン・リテールシステムとN-Sports tracking Labが事例を披露
物流やスポーツ分野に広がるIoT ソラコムのサービスを位置情報や動態管理で活用
ソラコムの年次イベント「Discovery2021」で、位置情報、動態管理にIoT活用した事例について、2社の担当者が講演を行なった。バッテリ式保冷ケースの監視を実現したサンデン・リテールシステムとスポーツパフォーマンス分析を手がけるN-Sports tracking Lab(ニュースポーツトラッキングラボ)のIoT事例を見ていこう。
コールドチェーンを効率化するバッテリー式保冷ケースを、IoTで守る
1社目のサンデン・リテールシステムは、1943年に創業したサンデン(現サンデンホールディングス)から分社独立した流通システムのメーカー。自動販売機やショーケース、冷凍ケースなどを製造販売している。海外に12拠点、国内に20拠点を展開する。コールドチェーンすべてを支える製品とサービスを提供しており、自販機の世界シェアは1位の企業である。
冷凍倉庫や自販機などの製品と、それらをネットワークでつなぎ、温度管理や決済のプラットフォームとして利用できる自社クラウド「RS Cloud」のサービスを展開している。近年の新製品は、冷凍食品を24時間無人販売できる「ど冷えもん」、置くだけで2.5年間温度情報をクラウドに送り続ける電池駆動のIoTシステム「ON-Reco」などがある。これは、6月から義務づけられた食品衛生管理制度「HACCP(ハサップ)」にも対応する。
そして、同社のIoT活用例が、新型のコールドロールボックス「REVOCOOL(レボクール)」だ。これは、バッテリー搭載の保冷ボックスで、外部電源なしで10時間の冷凍、冷蔵保存を実現している。大きな特徴は、トラックに載せる「カゴ車」と同サイズであることだ。常温の荷物と混載して運ぶことができ、10時間以内であれば冷凍専用車を使わなくてもコールドチェーンを実現することができる。吉井氏は「レボクールは、物流業界のコスト削減と、人手不足問題を解決する」と語る。
レボクールの導入領域は、食品や花などを生産する1次産業、冷凍食品メーカーなどの2次産業、そしてスーパーやコンビなどの3次産業と幅広い。「生産者から一般消費者の家まで、コールドチェーンを切らすことなく、商品を安心、安全に届けることができる。最近はコロナワクチンの配送にも使われている」(吉井氏)
レボクールの特徴の1つが、コールドチェーンを保つための遠隔監視サービスだ。同社はソラコム製品を活用し、きめ細かな管理を実現している。「ソラコムを選定した理由は、経済性、豊富なサービス、AWSとの親和性の3点だ」(吉井氏)
開発時の評価システムでは、レボクールの本体側に、通信データの暗号化機能を実装していたため、HTTPSパケットのオーバーヘッドによってLTE通信のデータ量が想定を大幅に超えてしまった。そこで、IoTデバイスにかかる暗号化負荷をクラウドにオフロードするサービスの「SORACOM Beam」を使い、データ量を1/5に削減することができた。「SORACOM Beamがなければ、ソフトの改修に少なくとも1カ月はかかっていたと思う。課題発見から改修までおよそ1週間で完了し、コストダウンも実現したのでたいへん満足している」(吉井氏)
また吉井氏は、ソラコムのプラットフォーム機能によって運用の課題を解決できていると話す。「特に、グループ機能によるSIMの一括設定や、遠隔でのアクティベート、サスペンド機能は、運用工数の大幅削減につながっている」。今後も、ソラコムの豊富なサービスを使って機能の拡張を図っていきたいと語った。