2021年7月20日、ネットアップは2022年度の事業戦略説明会を開催した。同社が実施した調査でDXやAI、クラウドの利用動向を披露しつつ、近年拡充してきたクラウドサービスで実現する「Data Fabric」の利用価値をアピールした。
ネットアップユーザーはDXの成熟度が高い
冒頭、登壇したネットアップ 代表執行役員社長 中島 シハブ氏は、同社とスマプラ総研行なったDX、AI、クラウド動向調査をひもとき、業務の最適化、働き方改革、収益向上、新規事業、顧客満足度の向上などさまざまな目的のためにDXが加速している現状を説明。その上で、DXの成熟度合いを7レベルに分け、対象者が自己診断した結果、ネットアップユーザーの成熟度の方が成熟度が高いという結果を示した。「ネットアップがお客さまのDX推進に貢献していると感じている」とシバブ氏は語る。
また、現状オンプレ8割、クラウド2割というストレージインフラの割合が逆転し、今後はクラウドが8割になっていくと指摘。さらにDXにおけるデータ管理において、データの多様化、連携、サイロ化が大きな課題になってきていることも明らかになったという。こうした課題によって、迅速な対応ができずにビジネスチャンスを逃したり、全体最適化をできないためにコストが上昇したり、ガバナンスが創出し、セキュリティ面で課題が噴出するといったリスクが顕在化してくるという。
クラウド、データやAIの課題を解消し、活用を促進するネットアップの戦略がData Fabricになる。現在、同社は用途にあわせたさまざまなオンプレ・クラウドのストレージのほか、場所を選ばずにデータを管理できるユニファイドデータマネジメント、従来型とは異なるサブスクリプション型の購入モデル、そしてDXジャーニーを支援するサービスの4つをもって、ユーザー企業のDXを支援するという。「私たちの戦略はシンプル。お客さまにシンプルで、経済的で、使いやすいモデルで、Data Fabricを利用してもらい、ビジネスの成功に成長してもらいたいと考えている」とシハブ氏は語る。
クラウドコストの課題を解消するSpot by NetApp
続いて登壇したネットアップ常務執行役員 CTOの近藤政孝氏は、膨張するクラウドコスト、コロナ禍におけるランサムウェア、データ利活用への機運、IT内製化へのシフトといったトピックで、最近の顧客動向と検討課題について説明した。
まず膨張するクラウドコストに関しては、Spot by NetAppによってコストの最適化が挙げられる。無料のCloud Analyzerを使って、コスト最適化の余地を探った上で、クラウドへのリホストの場合はリザーブドインスタンスの自動買い付けを行なう「Eco」、ステートレス・動的なサービスの場合はスポットインスタンスを自動で買い付ける「Elastigroup」、リファクタリングする場合はスポットインスタンスとコンテナを活用する「Ocean」が最適だという。
導入は1500社以上、50万ノード以上におよび、データクラウドサービスで急成長を遂げるSnowflakeはElastigroupを提供することでコンピューティングリソース支出を約7割削減できたという。
新しいSpot by NetAppとしては、Kubernetes環境でのサーバーレスAparkを実現する「Wave」、Kubernetes環境下での継続的なデリバリを実現するOcean CDといった特定ワークロードに向けたクラウドオプティマイゼーションが挙げられる。また、新たにクラウドデスクトップとして「Spot PC」が発表された。エンタープライズ環境のDaaS運用で必要なオンボーディング、データマイグレーション、アプリケーションのデプロイ、レスポンスタイムのモニタリング、コストの最適化、バックアップなどの機能をサービスとして提供するという。
オンプレ回帰とハイブリッドクラウド利用の現実味
クラウドコストの課題に関しては、オンプレミス回帰やハイブリッドクラウド利用という選択肢も挙げられる。これに関してはData Fabric自体がそもそもこうしたハイブリッド環境を前提としたアーキテクチャとなっており、オンプレミスでのストレージはもちろん、パブリッククラウド上で動作するストレージ・コンピュートの管理サービス群が用意されている。
実際、サイバーエージェントはAIを用いた広告分析を実現する基盤をクラウドからオンプレミスに回帰させた。Kubernetes環境で高い性能を引き出す「NetApp Trident」を採用し、オンプレミスに「NVIDIA DGX-A100」とオールフラッシュアレイ「NetApp AFF A800」を導入。スナップミラーによって、パブリッククラウド上で動作する「Cloud Volumes ONTAP」とデータ連携させているという。
近藤氏は、スナップショットを用いたランサムウェア感染からの迅速な復旧、AIを用いたサイロのないDataOps環境の実現、ラボやDXの実現を支援するラボやワークショップなどを紹介。また、クラウドネイティブアプリのマネジメントを実現する「Astra」やAnsibleやTerraformによるインフラ管理の自動化を可能にするAPIについてもアピールした。最後に「今使えるハイブリッドマルチクラウド運用」のデモとして、「Cloud Manager」を用いたオンプレミスとクラウドサービスのオーケストレーション事例を披露。近藤氏は、「Data Fabricはビジョンではなく、現実的に使えるもの」とアピールした。