『那由多の軌跡』は「外伝的作品」なのか?
ここからは「軌跡」シリーズを触れたことのある人向けに、個人的な考察を語らせていただこうと思う。テーマは冒頭でも触れた、ほかの「軌跡」シリーズと本作『那由多の軌跡』は世界観的、設定的な関連性があるのかどうか。つまり本作は「外伝」なのかという点だ。
自分の結論としては、「直接のつながりは薄い」といったところ。少なくとも、同一の世界観、時間軸で展開している「ゼムリア大陸」の物語とは異なっている。
お金の単位が「ミラ」であったり、距離の単位が「セルジュ」である点から見れば「ゼムリア大陸」と同じ世界観だと言えるかもしれないが、逆にそれ以外の固有名詞では共通項がほぼ見つからなかったこと、および本作の事件が「ゼムリア大陸」においてまったく触れられていないのがその理由だ。
もし、「シエンシア海」や「港町サンセリーゼ」という地名が今後「ゼムリア大陸」の物語で出てきたら、関連性が一気に強まるので覚えておきたい。なお、本作でも「帝国」などのワードはあったが、なに帝国なのかは明言されなかった。ちなみに年号は「新暦1579年」とのこと。
また、「世界の果て」というワードは「ゼムリア大陸」の物語をプレイ済みの人からすれば注目せざるを得ないだろう。あちらでは「枷(かせ)」など、複雑な設定がてんこ盛りでまだ明らかになっていないが、本作では答えが出ている。それがあちらと同じとは限らないが、じつに興味深く考察させていただいているところだ。
そして劇中の歴史の話では「大洪水」というワードが出てきたが、それが古代ゼムリア文明が滅びたという《大崩壊》と同一かというと、ちょっと違う気もする。
本作には「ゼムリア大陸」の物語と同一なら必ず出てくるはずのキーワード「七耀教会」や「空の女神」「古代遺物」などがまったく登場しないという点も大きい。このように、戦闘形式がアクションである点も含め、「ゼムリア大陸」を描く「軌跡」シリーズとは異なる点が多いため、本作は「外伝的作品」と位置付けられているのだろう。
「外伝的作品」と位置付けることに納得はできたが、「外伝だ」と言い切らないのは逆に「つながってるかも?」という期待感もあるから。そこは今後の「宿題」となりそうだ。
ちなみに、本作の主人公ナユタの姓である「ハーシェル」と、『閃の軌跡』に登場するトワ・ハーシェルとの関連性や、クレハと《盟主》のビジュアルが類似している点については、プレイしても答えは出なかった。いまのところは「関係あったらおもしろいな」と、留意しておくほかない。
さらに、2021年9月30日発売予定のシリーズ最新作『黎の軌跡(くろのきせき)』に登場する新キャラクター「シズナ・レム・ミスルギ」のミドルネームが、本作のとあるキャラクターと同一であることも気になってきた今日この頃。ただのファンサービスなのか、それとも何らかの関連性を今後持たせるための「匂わせ」なのか。
とは言え、これで「軌跡」シリーズはすべてプレイしたと胸を張って言えるので、もし今後関連性が強まったとしたら、いちファンとして大いに考察・感動していきたいと思う。
上記のように、シリーズファンは今後のシリーズも含めて考察がはかどるし、逆に「軌跡」シリーズをプレイしたことのない人も、単体のアクションRPGとして楽しめる作品となっている。
引き込まれるストーリー展開や、王道にして大正義の青春イベント、細かく用意された人間ドラマは「ゼムリア大陸」の物語と遜色ないので、個人的には間違いなく「アタリ」のゲームだった。もし買おうか迷っている人がいれば、ぜひプレイしてみてほしい。
【ゲーム情報】
タイトル:『那由多の軌跡:改』
ジャンル:ストーリーアクションRPG
販売:日本ファルコム
プラットフォーム:PlayStation 4
発売日:発売中(2021年6月24日)
価格:4378円(パッケージ版)/3960円(ダウンロード版)
CERO:B(12歳以上対象)
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