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末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢 第277回

リアル&バーチャルのハイブリッド開催されたMWC 転換期を迎えた業界イベント

2021年07月07日 12時00分更新

文● 末岡洋子 編集● ASCII

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 例年最新スマートフォンの発表の場となっていたMWC(旧Mobile World Congress)だが、今年は6月最終週に移された。リアルとバーチャルのハイブリッド形式となったが、サムスンやエリクソンといったビックネームがイベントに合わせて大型発表をすることもなく、決定的話題が無いままに終わった。主催者には重い宿題が残されているように見える。

MWCでSpaceXが進めるStarlinkをアピールしたイーロン・マスク氏

リアルでも開催したが、来場数はいったい何人だったのか?

 今年のMWC Barcelona 2021は6月28日から7月1日まで、スペイン・バルセロナで開催された。毎年2月末に開催されるが、6月になったのはもちろん新型コロナの影響だ。今年半ばにはワクチン接種が進み落ち着いているだろうという想定のもとに昨年9月に設定された。なお昨年のMWCは開始数週間前にキャンセルとなったため、1年半ぶりとなる。

 主催者のGSMAは5月、リアルでも開催することをあらためて宣言した。そしてEU域外からMWCのために来場する人に対するスペイン政府の措置(ワクチン接種証明は必須ではなく、隔離や事前PCR検査も不要)もセットで発表した。

 さて、何人が来場したのか。

 MWCの発表によると、リアルの来場者数は2万人以上、MWCとパートナープラットフォームには毎日約10万人のユニークビューアーがあったとのことだ。なお、GSMAは5月時点で、3~5万人の来場者を見込むと語っていた。

サムスンは次期Galaxy Watchに搭載する
「One UI Watch」をバーチャル発表

 シスコなどの米国企業のほか、エリクソン、ノキア、ドイツテレコム、Vodafoneといった欧州企業も出展を控えた。ファーウェイ、シャオミなど中国のビックネームもなし。その代わりに多くがMWCの前後に自社イベントを開いている。

 そんな中でもサムスンはバーチャルで発表会を開き、スマートウォッチのUIとなる「One UI Watch」を発表した。同社は5月に「Tizen」の取り組みをグーグルの「Wear OS」に統合する計画を発表済み。MWCでは、統合されたプラットフォーム上で動くOne UI Watchを次期Galaxy Watchで採用することを明らかにしたという流れだ。新しいGalaxy Watchは、夏に開催するUnpackedで発表を予定しているとのことだ(https://news.samsung.com/global/mwc-2021-samsung-presents-new-watch-experience-with-a-sneak-peek-of-one-ui-watch)。

 このほかレノボはMWCで「Yoga Tab 13」など3機種のタブレットを発表。クアルコムは新CEOとなったクリスティアーノ・アモン氏がビデオで基調講演をしたほか、製品も「Snapdragon 888 Plus 5G Mobile Platform」などを発表した(https://www.qualcomm.com/news/onq/2021/06/28/qualcomms-incoming-ceo-cristiano-amon-mwc-barcelona-2021-building-next-decade-5g)。

 一方で、ZTEはブースを設け、ネットワーク機器に加え、「ZTE Axon 30」などを展示したとのこと。だが会期中に新機種の発表はなかったようだ。

モバイルのイベントなのに主役を奪ったのは
テスラのイーロン・マスク氏

 ステージでは、オープニングでGSMAトップのMats Granryd氏が5Gの時代を強調し、「2021年中に世界の人口の5分の1を5Gはカバーする」「2025年までの間にネットワークに投じられる9000億ドルのうち、80%が5Gだ」とコメントした。

 だが、そんなモバイル業界の”中の人”よりも注目を集めたのは、テスラやSpaceXで知られるイーロン・マスク氏だろう。リモートから参加した同氏は、SpaceXが開発中の衛星インターネットのStarlinkについて話した。Musk氏はStarlinkを「5Gとファイバーでは接続できないギャップを埋めるもの」と位置づけた。「最もリーチするのが難しい(世界の人口の)3~5%にコネクティビティをもたらしたい」と狙いを語った。

 マスク氏は航空宇宙業界と自動車業界に風穴を開けた存在だが、通信業界で目立ったのがDanielle Royston氏だ。名前のイニシャル「DR」をとってTelco DRというコンサル企業を営む。Telco DRは米国を拠点とするが、知らない人が多くても無理はない。2020年9月創業の新興企業なのだ。通信業界にパブリッククラウドをもたらすことがミッションで、MWCでは2日目に基調講演を行なった。

MWCの基調講演2日目に登場したDanielle Royston氏

 だが、Royston氏とTelco DRにスポットが当たった最大の理由は、MWCには初参戦であるのに(おそらく)最大の展示面積を持ったことだろう。ブースはホール2、いつもならエリクソンがブースを構えるエリア(約6038平方メートル)を陣取り、「Cloud City」を設けた。OpenRANで注目のMavenirなどがこのエリアに集まったようだ。

 このように異例づくしの……と言いたいところだが、通信業界は変革期にあり、Telco DRやAWSなどのクラウド側が存在感を出してもおかしくない。また端末ベンダーにとってはMWCで発表する意義はあるのかと考え直す機会にもなっただろう。新型コロナは大規模な業界イベントのあり方も問いただしている。状況が落ち着いた後、MWCはどうなるのか。GSMAは次回を2022年開催としている。

筆者紹介──末岡洋子

フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている

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