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X570 AORUS MASTERと新旧比較 ホントにファンレスで大丈夫なの?

静音化&ストレージ周りが強化されたAMD Ryzen対応マザー「X570S AORUS MASTER」の実力を試す

文●加藤勝明(KTU) 編集●北村/ASCII

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パフォーマンスを検証する

 今回X570S AORUS MASTERの持つ冷却性能を確認するために以下の環境を用意した。比較対象として前世代のX570 AORUS MASTERを準備したが、筆者のレビュー記事などで相応に使い込まれてる個体なので、差異が出た場合は若干割り引いて考える必要があるだろう。

テスト環境
CPU AMD「Ryzen 9 5950X」(16コア/32スレッド、最大4.9GHz)
CPUクーラー Corsair「iCUE H115i RGB PRO XT」(簡易水冷、280mmラジエーター)
マザーボード GIGABYTE「X570S AORUS MASTER」(AMD X570、BIOS F1)
GIGABYTE「X570 AORUS MASTER」(AMD X570、BIOS F33i)
メモリー GIGABYTE「GP-ARS16G33」(DDR4-3333、16GB×2)
ビデオカード NVIDIA「GeForce RTX 3080 Founders Edition」
ストレージ GIGABYTE「GP-AG70S1TB」(NVMe M.2 SSD、1TB)
電源ユニット Super Flower「SF-1000F14HT」(80PLUS TITANIUM、1000W)
OS Microsoft「Windows 10 Pro 64bit版」(May 2021 Update)

 まずは最も注目(心配)すべきチップセット温度の比較だ。ファンありで出ていたチップセットをファンレスで運用しても本当に大丈夫なのだろうか?

 まずは「HWiNFO Pro」を利用してチップセット温度を追跡してみる。「CrystalDiskMark」を利用し、PCI Express Gen4接続の起動ドライブに対し64GiB×9の読み書きテストを実施。この時のチップセット温度に違いが出るかを観察する。

 SSDを取り付けるM.2スロットはCPU直結のスロット(グラフでは「-CPU」表記)とチップセット直結のスロット(「-PCH」表記)の2通りとした。また、X570 AORUS MASTERのチップセットファンはデフォルトの“Balance”設定とした(アイドル時回転数の実測値は1700rpm前後)。

 さらに、各テストの前にはテストランを実施し、シャットダウンから3分のインターバルを経て起動、5分後に本計測に入ることで温度条件がなるべくそろうように配慮した。

「CrystalDiskMark」実行中のチップセット温度の推移。室温は27度前後

 まずSSDをCPUに直結した場合、X570S AORUS MASTERのチップセット温度はX570 AORUS MASTERより最大12度、CrystalDiskMark試走終了時点で10度低い値を示した。X570 AORUS MASTERのチップセットファンを回転させてもここまで差が付くので、いかにX570S AORUS MASTERのチップセット冷却周りが進歩しているかがよくわかる。

 さらにおもしろいのは、SSDをチップセット直結にするとチップセット温度の上昇が加速されるという点だ。今回の検証ではCPU直結よりも2度の差が確認できた。

 CrystalDiskMark実行時のSSDの温度も同様の手法で追跡した。X570S AORUS MASTERの方がM.2用ヒートシンクがより大型化しているので、SSD温度が低くなることが期待される。ここでもX570 AORUS MASTERの場合と比較しているが、X570 AORUS MASTERのチップセット側M.2スロット用ヒートシンクは2280サイズ(22110サイズの方はビデオカードの真下なので不使用とした)と小さい点を考慮に入れておく必要がある。

上のチップセット温度と同時に取得したSSD温度の推移

 まずCPU直結時の温度推移に注目すると、より大型のM.2用ヒートシンクを備えるX570S AORUS MASTERの方がX570 AORUS MASTERよりもSSD温度が最大20度も低くなった。ただ検証に利用したX570 AORUS MASTERは相応に使い込まれた個体であるため、サーマルパッドが劣化、結果としてここまでの大差が付いたという可能性も排除できない。しかし新しいM.2ヒートシンクの効果は十分高そうだ。

 同様にチップセット直結の方でもX570S AORUS MASTERの方が冷えるという順当な結果が出ているが、X570S AORUS MASTERではCPU直結時よりもチップセット直結の方がSSD温度が3~5度低い。これはクーラーの表面積が大きいほか、チップセット直結時はCPU直結時よりも読み書き性能が若干下がるという点も関係ありそうだ。参考までにCrystalDiskMarkの読み書き速度の違いも見てみよう。

X570S AORUS MASTERのCPUに一番近いM.2スロットにGen4 SSDを装着した時の読み書き速度

X570S AORUS MASTERのCPUから一番遠いM.2スロットにGen4 SSDを装着した時の読み書き速度

 CPU直結時はシーケンシャルリード7GB/sec以上出せるが、チップセット直結時は6.4GB/sec程度まで低下する。この挙動の違いはX570マザーでも観測できる。

 次にCPUの電源回路の温度に違いが出るかもチェックしてみよう。ここでは「OCCT Pro」のExtremeテストを15分実行し、その間の「VR Loop1」温度を「HWiNFO Pro」で追跡する。ここでは定格設定のほかに「EasyTune」を利用して全コア4.5GHzに固定した時の値も拾ってみた。検証に用いたマザーはいずれもVR Loop1の値が2つ検出されるため、2つの平均値をプロットしている。

「OCCT Pro」Extremeテスト実行中のVR Loop1温度(平均値)の推移

 意外なことに定格の状態では1世代前のX570 AORUS MASTERの方がVR Loop1温度が明らかに低く、X570S AORUS MASTERは旧世代よりも約6~7度高くなった。しかし温度のブレは旧世代の方が激しく、X570S AORUS MASTERの方がより安定している。

 またクロックを全コア4.5GHz固定にすると、X570S AORUS MASTER定格よりもVR Loop1温度は約2度低くなった。X570S AORUS MASTERのクロックの実測値は定格時だと4.525GHz、4.5GHz固定にするときっちり4.5GHzで止まる。この時のPackage Powerは定格が131W前後、4.5GHz固定で105W前後だ。つまりクロックを250MHz絞った結果Package Powerも下がるが、それがVR Loop1温度に反映されているということになる。

ファンレスでも安心して運用できる

 X570でチップセットがファンレス運用できるマザーといえば、GIGABYTE「X570 AORUS XTREME」というエンスージアスト向けマザーが存在したし、旧世代X570マザーでもチップセットファンを止めることもできた。ただX570S AORUS XTREMEは実売約9万円前後という超高級マザー、さらに旧世代X570マザーはファンを回していてもチップセット温度が高いのでファンを止めても安心とは断言できない。

 この点においてはX570S AORUS MASTERはファンレスでもファンありのX570マザーよりも安心して運用できるマザーに仕上がったと言ってよい。X570 AORUS XTREMEのような重厚感や贅沢な冷却システムはないが、完全ファンレスという点においてはXTREMEに匹敵するものを得ている。

B550マザーでは性能に不満があり、X570マザーでは規格が古くて微妙、と考えている人にとって、X570Sマザーは期待通りのマザーボードとなるはずだ

 なぜこのタイミングでX570Sマザーを出すのか? DDR5サポートと言われるZen4向けX670マザーが出てくるまで待つべきか? といった疑問も沸いてくる。X670マザーの登場は来年第2四半期と噂されているため、今買えば1年は現役でいられる。Zen4が出てもすぐ買えるとは限らないし、新プラットフォーム移行はリスキーな側面もある。

 熟成されたSocket AM4で長く使いたいなら、設計や装備がリファインされたX570Sマザーを選ぶのも良い選択だ。その際はX570S AORUS MASTERが良いパートナーとなってくれることだろう。

(提供:日本ギガバイト)

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