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玉川社長と振り返った「みんなのSORACOM」6年間の軌跡、そしてスタートライン

大谷イビサ 編集●ASCII 写真●曽根田元

提供: ソラコム

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 IoTを実現するための通信とクラウドを包括的に提供する「SORACOM」のプラットフォーム。起業から6年が経ち、ソラコムはどんな軌跡をたどってきたのか? そしてどこへ向かうのか? ソラコム代表取締役社長の玉川憲氏といっしょに振り返ってみた。(以下、敬称略 インタビュアー アスキー編集部 大谷イビサ)

いよいよ300万回線突破 マジッククアドラントにも初登場

大谷:今回は年次カンファレンスDiscoveryの直前ということで、ソラコムの歩みを聞いていこうと思います。まず6年目の現状を教えてください。

玉川:先日、IoT総回線数が300万回線に到達しました。契約アカウント数は2万を超え、パートナー数も700社以上です。お客さまやパートナーには感謝の気持ちしかありません(関連記事:IoTプラットフォームのソラコム、6社と資本提携を含むパートナーシップを締結)。

ソラコム 代表取締役社長 玉川憲氏

大谷:最初からグローバル前提でしたよね。

玉川:はい。ソラコムは当初からグローバルプラットフォームを標榜してきました。お客さまがソラコムと契約すれば、世界どこでもつながり、日本であれ、米国であれ、ヨーロッパであれ、キャリアニュートラルで使えるという環境を目指してきました。

そのため、日本でまずはMVNOになり、グローバルでフルMVNOになり、グローバルSIMを出して、昨年ようやく「サブスクリプションコンテナ」という機能を使って、プロファイルを選べるようになりました。描いていたグローバルコネクティビティがようやく整いました。

先日は、ガートナーのマネージドIoTコネクティビティサービスに初選出され、やっとグローバルでも認知度を得てきた感じがします(関連記事:ソラコム、「2021 Magic Quadrant for Managed IoT Connectivity Services」において、ニッチ・プレーヤーに選出)。

大谷:マジッククアドラントに載ると、やはりグローバルプレイヤーとしては達成感がありますよね。

玉川:ガートナーさんとは何回もインタビューやったし、質問も300項目以上ありました。精査な調査と取材、ヒアリングの結果なので、うれしいですね。日本だけでなく、北米、欧州、アジアの3リージョンでグローバルのコネクティビティを確保している点もポイントかと思います。

大谷:とはいえ、ジャンルとして認知されたからには、競合のプレイヤーも多いということですよね。

玉川:ただ、あのレポートに載っているのはAT&T、ボーダフォン、オレンジなどほとんどがキャリア。もともと通信網を持っていて、IoTも手がけていますというプレイヤーです。だから、通信もいわゆるセルラー中心で、LPWAはおまけ程度にやっている印象。だから、われわれのようにクラウド主体にやっていて、セルフサービスで数枚単位でSIMを使えるというプレイをしている専業事業者は本当に少ない。グローバルでもソラコムだけのような気がします。

しかも、われわれは「ワイヤレスアグノスティック」という戦略をとっているので、セルラーやLPWA(Low-Power Wide Area)など通信手段を選べるし、キャリアの選択肢も広い。ビジョンとして「IoTを民主化する」を掲げているので、通信手段にこだわりがない。クラウド上に構築したテレコムコアネットワークは最大の競争力ですが、18ものサービスの多くはセルラーでも、LPWAでも同じように使えます。

大谷:6年間を振り返って個人的に意外だったのは、ソラコムの後にも、先にも、ソラコムのようなプレイヤーが出てこなかった点です。SORACOMのようなサービスを作れなかったというのが正しいと思うのですが。

玉川:キャリアからしてみたら、われわれの領域って規模的にはあまりおいしくない商売に見えるのかもしれません。確かにニッチかもしれないけど、お客さまの規模はどんどん拡大していくんですよね。

始めた当初はキラーアプリがわからなかった

大谷:6年前のSORACOM AirとBeamのデビューは本当に鮮烈でした。単なる格安SIMではなく、IoTを選定とした通信サービスとクラウドのプラットフォーム。展示会で初お披露目を見たあとに、ゆりかもめの中で興奮して記事書いたの思い出します(関連記事:半年でNGNの世界観を実現したソラコム、どんだけすごいんだ)。

玉川:以前の記事で大谷さんに「みんなのSORACOM」って書いてもらったのは、本当にうれしくて(関連記事:ベンダーの垣根を越えた「みんなのSORACOM」が止まらない)。今日の朝はグローバルでも「みんなのSORACOM」になりつつあるなあいう話を安川(安川健太CTO)ともしていました(笑)。

大谷:なつかしいですね。書いた当時は「みんなのSORACOMになってほしい」という応援の気持ちの裏に、「みんなのSORACOMになれるのだろうか?」という不安もちょっとだけあったんです。でも、6年間を振り返ったら、SORACOMを好きになってくれた「みんな」は思いのほかいたという話なんですよね。

玉川:はい。思いのほかいたということです。300万のデバイスがコネクテッドになるというのは、まさに最初思い描いていたビジョンに少しずつ現実に近づいた感触です。

まあ、時効でもあるので「最初は200枚しか売れなかった」というなつかし話を暴露してしまったのですが(笑)、そこからユーザーに使ってもらおうという努力は毎日続けられたと思っています。だから、6年間は長かったし、ポイントごとには覚えてるんだけど、もう記憶はあいまいです。

大谷:それくらい毎日が濃厚だったということですね。

玉川:AWSの影響もあって、開発者を魔法使いにするようなサービスを作ろうということで、われわれも最初にAirとBeamを作りました。でも、AWSの場合、スタートアップとか、ソーシャルゲームといったキラーアプリがありましたが、ソラコムの場合はそれがわからなかったんです。だから、プロダクトとマーケットがうまくフィットするか不安な部分もありました。

でも、6年間でキラーアプリがいろいろでてきました。ポケトークのようなコンシューマ機器、決済端末、動態管理、遠隔監視、果てはニチガスさんのような社会インフラまで。ニチガスさんの場合、85万台というレベルなので、郊外を散歩しているとき、ふと路地裏のぞくとニチガスさんのIoTデバイス「スペース蛍」があるんですよ。見ると、うれしくなりますよね。

大谷:6年間でサービスの種類も増えましたね。

玉川:最初はAirとBeamしかなかったですからね。でも、通信も4Gから5Gへ、LPWAへみたいな感じで進化していくし、クラウドもやれることが増えていくのは見えたので、この通信とクラウドの間でソラコムができることはいっぱいあるとは思っていました。そんなこんなで気がつけば、クラウドサービスも18種類になっています。

しかも、最近のサービスは当初想定してなかったサービスです。データを溜めるSORACOM Harvest、可視化するSORACOM Lagoon、グローバルアドレスなしでリモートアクセスできるSORACOM Napter、SIM単位でパケットを見られるSORACOM Peakなど、部品がひとしきり揃った感があります。そういえば、AWS時代にRDSやDynamo DBが出たときも同じような感覚になりましたね(笑)。

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