「センシングしやすい構造」という考え方の発見

初心者がIoTセンサーでドア開閉をセンシング! 家中の“段差”に苦労する

貝塚/ASCII 編集●大谷イビサ

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組み立てが完了した「IoT体験キット〜磁気センサー〜」

 ASCII編集部の貝塚によるSORACOM体験記をお送りする。第4回は、引き続きソラコム IoTストアで購入できる「IoT体験キット」で、自宅のドアの開閉の可視化を試みる。

IoTセンサーでどのドアを可視化するべきか?

 ソラコムの直販サイト「SORACOM(ソラコム)IoTストア」で購入できるIoTデバイスとSORACOMのサービスを試用する本連載。第3回では、IoT体験キット〜磁気センサー〜を開封し、組み立ててみた。

 IoT体験キット〜磁気センサー〜は通信機能を持った磁気センサーと、開閉を検知するためのマグネットのパーツをセットにしたもの。SIMも本体に内蔵されており、組み立てをして、ソラコムのコンソールに登録すれば、すぐに使用が開始できる。

コードをそのままにしておくと、引っかかりやすく、見た目にも美しくない。というわけで、用意したのは「ビニールタイ」だ

 組み立ての難易度は前回も伝えた通り、電子工作に不慣れな人でも難しくない。(この例えで伝わるか分からないが)ミニ四駆を組み立てるよりも簡単だ。ミニ四駆をひとりで組み立てられる人なら、朝飯前である。

綺麗に束ねれば、見た目も取り回しもよくなる

 さて、問題はどこに設置すると楽しいのかということだ。しばし考えつつ、センサーを手に持って部屋の中をうろついてみる。玄関のドアも良さそうだが、たかが知れているというか、「朝と夜に何回か開けているだろうな。昼間は妻が一回くらいは開けるだろうな」と容易に想像がつくので、設置する意味は薄いように思う。

本体は置ける場所があればおいても問題ないが、ほとんどのドアにそのような都合の良い場所はない。壁に貼り付けられる、厚手の強力な両面テープを用意しよう

センサーのサイズと同じくらいにカットする

裏面に、このようにセットすれば、壁に貼り付けて固定できる

 セキュリティー性が要求されるドアなら、相性は抜群だ。席を外しているあいだに、あるいはその場にいないときに、「勝手に開閉されていないかどうか」がいつでもコンソールから確認できる。だが、我が家にはそのように監視をする必要のあるドアはない。

 ドア……ドア……と呟きながら、「やはりここかな」と思えたのはバスルームへ通ずるドアである。我が家は構造的に、バスルーム全体へ通じるドアを通じて浴室、洗面所、トイレ、洗濯機置き場の4ヵ所へアクセスするようになっている。その大元のドアをセンシングしてみると、1日のあいだにどれくらい水を使っているのかが分かるし、トイレの回数などもなんとなく分かるので、面白そうだと思った。

センシングしやすいドア、しにくいドア

 さっそくセンサーを設置してみることにする。ところが問題が発生。IoT体験キット〜磁気センサー〜は、本体側のマグネットと、ドアに貼り付けるマグネットが、くっついたり離れたりする際に起こる磁界の変化を読み取るセンサーである。従って、ドアが閉じている時は“ピッタリと”くっついていなければならないし、離れているときは“確実に”離れていないといけない。

 にもかかわらず、うちのドアを来たらどうか。ドアがドア枠の奥に押し込まれたような構造になっていて「マグネットとマグネットがピッタリとくっついている状態」を作り出せない。いったい、この段差にどれほど重大な意味があるというのだろうか? 無用な段差にしか思えない。「床に段差があって危ない」とか「転びやすくて困っている」と、人が言っているのは聞いたことがある。でも、「ドアに段差があってセンサーが設置できないので困る」というのは聞いたことがない。まさか、ドアの段差に困ることになるとは。というか、こんなところに段差があったとは。

バスルームのドアには段差があり、マグネットがうまく反応する状態を作れない

 「くそう、この段差め」と思いながらドアを開いてみる。盲点だった。ドアの内側には段差がない! ドアと壁が「ツライチ」の構造になっていて、とてもセンシングしやすそうだ。

 こうして私は無事にバスルームのドアへセンサーを設置することができたのである。設置自体は、基本的に両面テープで止めるだけなので、とても簡単だ。マグネットのセンサーにはネジ穴が空いているので、ねじ止めしてしっかり留めてしまうことも可能ではある。

内側には段差がなかった!

ドアを開くと、このようにマグネット同士が離れ、センサーは「ドアが開いた」と判断する

 コードがドアの開閉に引っかかってセンサーが外れたり、断線したりすると厄介なので、設置位置にも気をつけたほうがベターだ。

センシングしにくい構造という目線

 ……と、無事にIoT体験キット〜磁気センサー〜の設置が完了したわけだが、その後しばらく部屋をうろついていて、「いや、ちょっと待てよ」と思った。「こっちの方が面白いかもしれない」と感じるものを見つけてしまったのである。

 それは冷蔵庫である。冷蔵庫を1日に何度開けているかは、見てみたい。人は1日のうちに、けっこう、冷蔵庫を開けていると思う。朝起きて、お茶や水を取り出すとき。スーパーから戻ってきて、買ってきた食材を収納するとき。「お昼ご飯は何にしようかな?」と考えつつ、備蓄してある食材を把握したいと考えたとき。あるいはただなんとなく、何か小腹を満たせるものはないかと考えながら。

 私はバスルームに設置したばかりのセンサーを剥がし、冷蔵庫への設置を試みた。しかしながら、問題が再び発生する。冷蔵庫の場合、見えやすいところにセンサーが付いていると非常に不便なのである。なぜなら、冷蔵庫のドアのうち、どのあたりに手をかけるのかということは、背の高さや、日頃の“クセ”によって異なる。普段手をかける位置にセンサーが設置してあると、いちいちセンサーが手に当たってストレスになるし、センサーが剥落して故障するかもしれない。

 冷蔵庫の構造を観察してみて、「上ならいける」と思った。冷蔵庫を開けるとき、ドアのどこに手をかけるかは人によって異なる。しかし、冷蔵庫の上に手をかけてドアを開ける人はいない。よし、よし。上に設置しよう。

まだ段差かよ! と思った。知らないだけで、私たちは段差に囲まれて生きているのだ

 久しぶりに見た冷蔵庫の天板はホコリが積もっていて不快だった。清掃し、センサーを設置しようとしてみる。しかし、再び段差だ! ドアと天板には3cmほどの段差があり、やはりマグネットがピッタリくっついた状態を再現できない。1日のうちに、二度も段差を発見。

 なぜ人は、こうも無用に段差を作りたがるのか? いや、冷蔵庫の段差は無用ではないのかもしれない。冷却に有利な状態を作るためには、段差を設けた方がよかったのかもしれない。しかし、私はいつかメーカーの人に言ってみるつもりだ。「なぜここに段差を作るんですか? センサーが設置しにくいじゃないですか」と。

開閉の軸となるヒンジの部分には段差がなかった

開くと、問題なくマグネット同士が離れる状態を作りだせた

 冗談はさておき、段差があるとIoT体験キット〜磁気センサー〜はうまく使えない。再び冷蔵庫を観察してみる。開閉の軸となる“ヒンジ”の部分には、段差がないことに気づいた。位置をうまく調整し、無事に冷蔵庫にセンサーを設置することができた。

人は段差を作りたがる

 今回、IoT体験キット〜磁気センサー〜を設置しようとしてみて、家の中には無闇に段差があることに気付かされた。これまで気にすることはなかった、しかしIoTデバイスでセンシングしようと思えば、重大な障壁になり得る段差である。

 いまはとにかく、冷蔵庫からどのようなデータが取れるのかを楽しみにしている。しかしそれ以上に、街を歩きつつ、「センシングしやすそうなドア」を探すことが楽しくなってしまったのであった。

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