5月12日、HTCはVRプラットフォーム上で開催したイベント「VIVECON 2021」にて、VRヘッドマウントディスプレー(VR HMD)の新製品、「VIVE Pro 2」と「VIVE Focus 3」を発表した。
VIVE Pro 2は従来のVIVE Proシリーズ同様、いわゆるPC VR向けの新製品。常時PC接続が必要になるが、高品質かつ豊富なアプリに対応でき、「VIVEトラッカー」などのアクセサリーも使用できるのが特徴といえる。一方のVIVE Focus 3は、スタンドアローン型の新製品で、PCを必要とせず単体でも動作する手軽さが売りとなる。それぞれ異なるニーズに沿った製品を同時発表した形だ。
今回、HTC NIPPON本社にて、そんな新製品のVIVE Pro 2を実際に試す機会に恵まれたので、体験時の様子をレポートしていきたい。
解像度5Kの衝撃!
2018年に発売した初代「VIVE Pro」は、解像度が片目あたり1440×1600ドット(両目2880×1600ドット)、リフレッシュレート90Hzと当時としてはかなりのハイスペックを誇り、その翌年に登場した「VIVE Pro Eye」は、同社の製品で唯一アイトラッキング(目の動きの認識)に対応することで、研究機関などでも活用されてきた。
そして今回、新たに発表されたVIVE Pro 2は、なんと片目当たり2448×2448ドット(両目4896×2448ドット)という5K相当の解像度。NVIDIAおよびAMDと連携して、VRヘッドセットで初めてディスプレイストリーム圧縮を利用することで、これを実現している。リフレッシュレートも120Hzに対応し、視野角は前世代から10度アップした最高120度。総合的に大幅な進化を果たした。
また、これは前世代からではあるが、搭載ヘッドフォンはハイレゾ認証を取得しており、より高品質なハイレゾ音源の再生にも対応している。ハイクオリティーな映像・音声を再現することで、VRならではの没入感をさらに高められるわけだ。
HTCは、4月に「VIVEフェイシャルトラッカー」「VIVEトラッカー(3.0)」という2つのトラッカー新製品を発売しているが、VIVE Pro 2はどちらにも対応している。VIVEフェイシャルトラッカーによって表情を、VIVEトラッカーによって体の細かい動きをトラッキングできるようにするなど、アクセサリーによる機能拡張が可能だ。
ベースステーションは1.0/2.0に対応し、コントローラーも従来のVIVEシリーズのものを使用可能。また、VALVE INDEXの“knuckle”コントローラーやVRグローブなど、既存のSteamVR用コントローラーも使用可能だという。
theBluにジサトラハッチも大興奮!?
今回は、VIVE Pro 2を使って実際にコンテンツを体験させてもらうことができた。プレイしたのは「theBlu」。海中の映像をVRで体感できる映像美が特徴的なコンテンツで、筆者は過去のVIVE製品を含め、いくつかのVR HMDでこのコンテンツをプレイした経験がある。
従来のVR HMDでの体験と比べながらプレイしてみたのだが、没入感はこれまででも最高峰に感じた。
初期のころのVR HMDは、ディスプレーのドット間の隙間が格子状に見えてしまう「スクリーンドア現象」などがあり、没入感の阻害につながる例もしばしば見受けられた。とはいえ、近年のVR HMDは解像度の向上などもあって、そうした現象はあまり見られなくなっている。
5K/120HzのVIVE Pro 2は、当然スクリーンドア現象を感じないどころか、そんな近年のVR HMDの中でもかなりの映像美を実現していると言える。クラゲのテクスチャーの模様にアラ探しをしてしまったのは、(筆者の性格の悪さもあるが)解像度の高さ故だろう。
また、リフレッシュレートの向上も大きく、海藻の揺らぎなどより滑らかに見えた。視野角は120度になっているが、人間が両目で同時に見られる視野がおよそ120度ほどとされているので、これに近づいた形になる。これも没入感の向上に一役買っていると言えるだろう。
ただ、これだけのスペックをフルに動かすためには、接続するPCにも十分な性能が要求される。従来のVIVE Proが快適に動いたとしても、大幅にスペックアップしたVIVE Pro 2の性能を発揮するには力不足な場合がある。公開されている推奨スペックは以下の通り。
「VIVE Pro 2」の推奨PCスペック | |
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プロセッサー | インテル「Core i5-4590」(4コア/4スレッド、3.3~3.7GHz)または AMD「Ryzen 5 1500X」(4コア/8スレッド、3.5~3.7GHz)同等かそれ以上 |
グラフィック | NVIDI「GeForce GTX 1060」または AMD「Radeon RX 480」同等かそれ以上 ※フル解像度モードでは、GeFoce RTX 20シリーズまたは AMD Radeon 5000シリーズ同等か以上 |
メモリー | 8GBまたはそれ以上 |
ビデオアウト | DisplayPort 1.2またはそれ以上 ※フル解像度モードではDCSを搭載したDisplayPort 1.4以降が必要 |
USBポート | USB3.0またはそれ以上 |
OS | Windows 10 |
今回体験時に使用したPCでは、GPUはGeForce RTX 2070 SUPERを搭載しているとのこと。コンテンツにもよるだろうが、少なくとも「VR Ready」のミドルクラスくらいのゲーミングPCは用意したほうがよさそうだ。
発売予定は6月末
一次予約は即完売
VIVE Pro 2の発売日は、6月末を予定している。まずはVR HMD単品のパッケージを販売し、その後コントローラーやベースステーションをセットにしたフルパッケージを販売する予定とのこと。価格はHMD単品で10万3400円、フルセットが17万8990円となる。
前述の通り、ベースステーションやコントローラーは従来製品のものを使いまわせるので、過去のVIVEシリーズなどを購入していた人は、HMDのみ切り替えることが可能だ。なお、VIVE Pro 2 HMD単品は日本国内でもすでに予約販売が開始している。すでに一次予約分は完売しているが、二次予約が開始しているため、購入希望の人はチェックしてみよう。