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すべての請求書をデータ化してくれる「Bill One」の無料プランが提供開始

2021年05月27日 17時30分更新

文● 柳谷智宣 編集●大谷イビサ

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 2021年5月27日、Sansanは「Bill One(ビルワン)」の従業員100名以下の企業向け「スモールビジネスプラン」を無料で提供すると発表した。Bill Oneは2020年5月にスタートしたクラウド請求書受領サービスになる。

「Bill One」の無料プランが発表された

請求書の受領に課題 名刺のデータ化技術をサービス化

 請求書の受取り業務はとても手間がかかる。発行する請求書のフォーマットを統一するのは簡単だが、受領するフォーマットはばらばらだからだ。その上、郵送で送ってくるところも、メールに添付してくるところもある。そのすべてを人の手でチェックしてシステムに入力し、振り込みデータを作成する必要がある。

 Bill Oneは受領したすべての請求書をデータ化してくれる。法人向け名刺管理サービスでトップシェアを持つ「Sansan」で培った名刺を高精度でデータ化する技術を利用し、99.9%の精度でデータ化できるのは同社の強みだ。ユーザー企業はデータ化完了メールを受け取ったら、クラウド上で参照できるようになる。

 ファイルで送られてきた請求書はもちろん、紙の請求書まで代理受領が可能で、スキャンも代行してくれる。別途申し込みが必要だが、請求書原本の保管も可能だ。データ化された請求書は、クラウド上で一元管理でき、「勘定奉行クラウド」や「弥生会計」「kintone」「RMS」などの外部サービスと連携することも可能だ。

 コロナ禍のテレワーク需要もあり、急成長しているそう。2月13日からはテレビCMも流れているので見た人も多いはずだ。

「スモールビジネスプラン」は無料で利用できる

 これまでの料金は月額10万円(税別)からで、データ化する請求書の枚数に応じて従量課金されていたが、この度、100名以下の企業向けに「スモールビジネスプラン」が用意され、無料で利用できることになった。

 提供される機能は、通常のBill Oneと同じと太っ腹だ。請求書のデータ化だけでなく、代理受領やスキャン代行まで無料とのこと。初期費用もかからない。ユーザーは取引先に、請求書の送り先をBill Oneへ変更してもらうだけだ。

 無料で受け取れる請求書は月間100件まで、閲覧できる請求書は最新の500件までとなる。この制限を超えるなら、有料プランの契約が必要になる。とは言え、Sansan調べ(https://jp.corp-sansan.com/news/2021/survey_report_bill_one_2021.html)では、企業が月に受け取る請求書の枚数は平均96.1枚とのことなので、100名以下の企業であればほとんどが事足りることだろう。

 ただし、有料プランのようなコンサルティングサービスは受けられない。また、外部サービスとの連携もオプションになるとのこと。

無料で利用できるスモールビジネスプランの概要

請求書のDX化が遅れる2つの原因を解消

「日本で請求書のDXが遅れている原因は二つあります。まず、請求書業務は請求書を発行する側に依存していること。もう一つは、請求書の情報が限定的にしか活用されていない、ということです」と語るのはBill One事業部の事業部長である大西勝也氏。

 これまでは請求書情報を会計システムに蓄積していたが、その情報には経理など一部の人しか閲覧できず、活用しにくいという課題があったのだ。しかし、請求書は企業と企業の取引の証でもある。Sansanはこの情報に大きな価値があると考えたそう。

「いつ、どの会社に、どれだけの取引が発生したのか、という情報が正確にデータ化され、全社で共有、活用されることで事業的なメリットを生み出せるはずです」(大西氏)

 コロナ禍でテレワークが広まっているが、請求書に関わる業務のために経理担当が出社しなくてはいけないというニュースが流れ、問題になったこともある。請求書をクラウドで受け取れるサービスを利用することで、経理担当者でもテレワークを進められるようになるというメリットもある。

これまでは、請求書のデータをビジネスに活用してこなかった

 国内約419万社の中小・小規模事業者では、社長が経理業務を行っていることが多いという。Sansan調べでは請求書の受領から振り分け、支払いなどの処理に平均53.4分もかかっている。この行程を最適化できれば、役職者の生産性の向上にもつながる。

 中小・小規模事業者では、ITシステムに投入する予算が足りていないことが多い。そのため、ニーズがあっても非効率な業務をずるずると続けているところが多い。

「国内のDXは十分な状況にあるとは言えません。取り組めている企業とそのままでいる企業の乖離が進んでいます。DXを推進している企業は、大企業になるほど多く、企業規模が小さいほど取り組めていません。サービスを利用するだけで、仕事の一部がデジタル化する、つまり楽になる。そんなオンラインの成功体験を提供したいと思います」とCEOの寺田親弘氏は語る。

 2020年5月末までにスモールビジネスプランを5000社に導入してもらうのが目標とのこと。今後はさらに多くの外部システムと連携できるようにAPIの開発も完了している。また、全銀協形式で支払いデータを出力する機能もリリースを予定している。

スモールビジネスプランの導入目標は、今後1年で5000社とのこと

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