5月7日、ドイツのゼンハイザーがコンシューマーエレクトロニクス部門をスイスのSonovaに事業譲渡すると発表した。2021年末までに業務の移管を完了させる予定だという。Sonovaは補聴器の大手だが、これによりSonovaは、補聴器や人工内耳などこれまでの製品群に加えて、ヘッドホンとサウンドバーをラインナップに加えられるという。また、Sonovaは「SENHEISER」ブランドを使用できる権利を得ている。
ゼンハイザーの共同CEOであるDaniel Sennheiserは「我々と似たような企業価値を持ち、独自のオーディオ体験を共有しているという点でSonova以上に適切なパートナーはなかった」とコメントしている。これによりヒアラブル分野や完全ワイヤレス分野での大きな可能性を持つとしている。
家族経営でハイエンドヘッドホンの市場を作ってきた企業
ゼンハイザーといえば、世界初の開放型ヘッドホンである「HD414」をはじめとして「HD 650」「HD 800」シリーズなどのハイエンドヘッドホン、また「IE 800」シリーズのイヤホンなどが知られる歴史と知名度を兼ね備えたブランドだ。私も10年以上以前から使用していたし、HD 800はいまでもリファレンスとしているヘッドフォンのひとつだ。それゆえ自分自身もかなり衝撃を受ける内容だ。業務移管する内容には、「HD 800 S」「IE 800 S」といった現行機種も対象となる。

およそ600万円のヘッドホンである「HE-1」のような企画は今後も登場しうるのだろうか?
ただし、ゼンハイザーのリリース文にも注記されているように、同社は今年の2月の段階ですでに、コンシューマーエレクトロニクス部門を業務移管するという発表をしていた。それは「ゼンハイザーはプロビジネスに注力し、コンシューマー部門を強化するパートナーとの提携を目指す」というものであった。
これは海外でも話題となり、海外フォーラム「Head-Fi」の代表者であるJude氏が、ゼンハイザーにインタビューしている。それによると「パートナーシップは、コンシューマーエレクトロニクス部門の強化を見据えたもので、部門の売却や分割という特定の意図はない」ということだった。しかし、Sonovaの発表からはやはり「提携」というよりは「売却」という強い形になってしまったように思える。

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