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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第614回

ネットワークプロセッサーの技法で高効率化を目指すexpedera AIプロセッサーの昨今

2021年05月10日 12時00分更新

文● 山県 編集●北村/ASCII

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 前回、ベンチマーク方法論で出てきたexpederaのOriginシリーズを今回は紹介したい。

 expederaは2018年創業の、しかもつい先日までステルスモードで活動していたスタートアップ企業である。創業者はDa Chuang(CEO)、Siyad Ma(VP Engineering)、Sharad Chole(Chief Scientist)氏の3人。これにNancy Gomes(Business Development)氏を加えた4人が当初のメンバーだった。

 2019年にはこれが9人まで増えており、現在はもう少し人数が増えているようだが、それでも20人に行くかどうかというあたりの非常に小さなチームである。

expederaの会社概要。一番下に「経験豊富なチーム」と書かれている

 おもしろいのはそのキャリアである。もともとexpederaの会社紹介の最後に“Experienced team with deep backgrouund in Network Switching ASIC & Memory IPs”(ネットワークスイッチング、ASICおよびメモリーIPに深い背景を持つ経験豊富なチーム)とあるが、重役の経歴を見ると以下のようになっている。

expedera社重役の経歴
Chuang氏 Cisco(Technical Leader)→Memoir Systems(創業者兼COO)→Memoir Systemが買収されてCiscoに復帰(Senior Director Of Engineering→Chief Scientist)→expedera創業
Ma氏 IDT(DFT Manager/Principal DFT Engineer)→Cisco(Technical Leader→Principal Engineer)→expedera創業
Chole氏 Memoir Systems(Software Architect→Senior Software Architect)→Cisco(Technical Lead→Manager→Design Lead)→expedera創業

 Chunang氏とMa氏はMemoir Systems時代からの関係で、これにCisco時代にMa氏が加わった格好だ。Chuang氏とMa氏はCisco時代に多くのスイッチ用ASICの設計に携わってきており、このASICの上で動くソフトウェアの開発をChole氏が手掛けていたという格好だろうか。

 特にキャリアでおもしろいのはMa氏の方で、Cisco以前は一貫してDFT(Design For Test:テスト容易化設計)に携わっており、Cisco時代はTCAM(Ternary Content Addressable Memory:連想メモリー)を利用したASICの開発もしていたという。TCAMは昨今ではネットワーク関連機器でしか使われることがない特殊なメモリーであるが、こうしたことに精通しているメンバーが立ち上げた会社というわけだ。

 これがなぜAIに絡んでくるかであるが、Ciscoに代表されるネットワーク機器ベンダーは、だいたい専用のASICを自社で開発している。これは、通常ではあまりない以下のような要求に応えるためだ。

  • 膨大な量の、しかもデータ長の短いパケットをきわめて短時間でさばく必要がある。
  • 中にはパケットの種類に応じて優先処理(QoS)が必要なものもあるので、毎回パケットの中身はきちんと検査する必要がある。
  • しかもこれらをなるべく短いレイテンシーで処理しなければいけない。

 これらの要求に応えるためには、汎用のCPUやDSPでは全然間に合わず、最近でこそ一部FPGAが使われるようになったが、かつては性能と消費電力の両面でニーズに合わない(ASICでは1チップで済む処理が、FPGAではハイエンド品だと複数チップ必要になり、消費電力とコスト、複数チップを経由することでのレイテンシー増大などが問題になった)ということでASICが普通に使われており、現在もまだASICへのニーズは高い。

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