2021年4月22日、チームスピリットは発表会を実施し、3月に本格販売を開始した「TeamSpirit EX」とエンタープライズ市場参入についても説明した。また、企業の働き方改革を支援するためのバーチャルシンクタンク「イノベーション総合研究所」の調査報告も紹介した。
ERPのクラウド化を前提に大企業での需要を狙う
働き方改革プラットフォームを謳う「TeamSpirit」は既存のERPにアドインするフロントウェア。Salesforce Platformをベースに勤怠管理、工数管理、経費精算、電子稟議、社内SNS、カレンダーなど複数の社内業務を統合し、データから働き方を可視化する。現在、導入社数は1400社以上、ユーザーは30万におよぶという。
東日本大震災のあった2011年3月にβ版がラウンチされ、おもに中小企業を中心に市場を開拓。2018年10月にはエンタープライズ版のTeamSpirit WSPをラウンチし、一部ユーザーに先行導入。TeamSpiritブランドの10年目にあたる2021年の3月「Team Spirit EX」と名称変更し、本格販売を開始した。
既存のTeamSpiritが1万人程度を想定しているのに対し、大企業向けのTeamSpirit EXは10万人程度を想定する。複雑なアクセス制御や承認プロセスを設定する際に課題となるSalesforceの制約を解決するためのアーキテクチャ刷新が行なわれている。機能面では、グループ企業単位での運用を前提とした組織管理、人事異動や組織変更に対応したマスターの世代管理、社内やグループ企業の兼務にも対応。「カスタムオブジェクト」と呼ばれるユーザー独自のDBテーブルも10個が標準提供され、ユーザー企業で独自に拡張することが可能になっている。
現在、TeamSpiritの大企業比率(従業員500名以上)は47%、ITRの調査によると大企業での就労管理SaaSの市場シェアは1位となっているという。エンタープライズの市場はいまだに自社仕様のスクラッチが半分以上を占め、パッケージは3割、SaaSは1割程度に過ぎない。しかし、オンプレミスだったERPがクラウド化することで、エンタープライズ市場のフロントウェアでSaaS化が進むと見込んでいる。
こうした中、これまでアーリーアダプターの獲得に焦点を当てていた組織体制も刷新。キャズム超えを前提としたブランディング施策、営業・サポート体制の拡充、パートナーとの連携を進める。
ウィズコロナ時代の働き方の意識はこう変わった
また、今回設立が発表された「イノベーション総合研究所」は、企業の働き方を支援するためのシンクタンク。オウンドメディア「WITH」を立ち上げるとともに、初期活動として「ウィズコロナ時代の働き方」に関する調査を3月に実施した。
25歳から64歳のビジネスパーソン1132名を対象とした調査では、ジョブディスクリプション(職業記述)を意識せずに働いている人が7割を占めており、3年後の「稼ぐ力」が「現状維持・低下する」と答えた人は4人に3人に達しているという。イノベーション総合研究所 所長 間中健介氏は、「7割が職務内容を意識せず働いており、大半の会社員が働くことに受け身に捉えている」と指摘する。一方で、ジョブディスクリプションを意識して働いている人は、半分以上が3年後も稼ぐ力が高まっていると答えているという。
また、自身が働きたいと考える会社の条件の1~3位は「ストレスが少ない」「心理的安全性が保たれている」「一緒に働きたいと思えるメンバーが多い」となっており、心理面が重視されている傾向が明らかに。その他、「大企業は中小企業より、業務の無駄を省く意識が高い」「コロナ禍で社内外を問わずコミュニケーション頻度が減少したと半数以上が答えた」といったサマリーが披露された。
こうした中、イノベーション総合研究所とチームスピリット社員との議論の結果、個人の潜在能力を引き出す「インテリジェンス・シェアリング」とチームの潜在能力を引き出す「チーム・エンパワーリング」が重要になると提言。働く意識の高い「積極・成長層」と「安定・成熟層」の二極化が進む中、①働くことへのストレス緩和、②組織が社員に期待することの明確化と目的設定、③コミュニケーションの時間作りが有効な打ち手になると指摘した。