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最新パーツ性能チェック 第340回

WQHDゲーミング向けGPU「Radeon RX 6700 XT」の実力を試す【後編】

2021年05月01日 11時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●ジサトラ ハッチ/ASCII

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カードの消費電力を比較すると……

 ゲームのフレームレート検証はこの辺りにして、次は消費電力、特にカード単体の消費電力(TBP:Total Board Power)を少し詳しく見てみよう。RX 6700 XTの補助電源コネクターは8ピン+6ピンと(やや)控えめな構成になっているほか、公称スペックによるBoard Powerは230Wとなっている。この230W枠をどこまで使っているかを調べることで、電源ユニットへの負担が分かる。

 だが現時点のRadeonのドライバーは「Adrenalin Software」や「HWiNFO」のような監視ツール経由からTBPを正確に算出する機能がないため、NVIDIAのビデオカード専用電力計測ツール「PCAT」を使用する。

 ここでの検証はCyberpunk 2077をプレイ状態で放置し、その時のTBPをログにとって分析することで行なう。ゲームの画質設定は前述のテストと同様に画質“ウルトラ”、解像度はフルHD設定とした。DXRを有効にしてRay AcceleratorやRTコアも動かしたかったが、DXR処理がボトルネックとなってそれ以外の描画処理が手すきになる懸念もあったので、DXRは無効とした。

ゲーム(Cyberpunk 2077)プレイ中のTotal Board Powerの推移。PCATのデータから1秒ごとの移動平均にしてグラフ化したもの

同じPCATのデータから、TBPの最大値と平均値を算出したもの

 まずTBPの折れ線グラフでは、RX 6800 XTのTBPはおおよそ235W前後と最も高い位置で安定する一方で、RX 6700 XTは200〜210Wのレンジでやや大きめに上下している印象を受ける。その中間にRX 5700 XTとRTX 3070 FEがほぼ重なるように入っている。この区間の平均値と最大値を見ると、RX 6700 XTは平均では206Wだが瞬間的に233W消費したということが読み取れる。

 今回最も高い性能を示したRX 6800だと平均235Wなので、消費電力が大きい分パワーもある(逆に絞った分RX 6700 XTの性能も絞られた)ということが分かる。RTX 3070 FEの平均値はRX 6700 XTの15W程度上だが、瞬間的に250W以上消費することもある、ということも分かった。

RX 6700 XTの泣き所は“発熱”

 ではPCATで消費電力データを取得したテスト条件をそのまま利用して、RX 6700 XTのクロックや温度などをチェックしてみよう。各種情報の取得は「HWiNFO Pro」を使用している。

ゲーム中のGPUクロックの推移

ゲーム中のGPUクロックの推移

 今回ゲーム状態でおよそ20分放置(バラック組み、室温27℃前後)したのだが、GPUクロックが2550MHzあたりでほとんど動かない点には驚かされる。7nmプロセスの強みを活かした高クロック動作がRX 6000シリーズの売りのひとつだが、RX 6700 XTのクロックは極めて高い。サードパーティー(業界風にいえばAICパートナー)製のファクトリーOCモデルでは、それ以上で安定動作が期待できそうだ。

 しかし、その一方で、GPU温度は80〜81℃で安定とやや高い印象を受けた。バラック組みでこれだから、PCケースに入れればさらに上がることは間違いない。RX 6000シリーズのリファレンスクーラーは見た目に惚れ込む人も多いが、RX 6700 XTのクーラーは上位モデルに比べ持っただけで分かるほど軽くつくられており、フィン容積などがかなり削られている印象だ。

 ここまでの高クロック動作のGPUに対し冷却力を犠牲にしたクーラーを組み合わせたのは残念としか言いようがない。ただライターの宮崎真一氏がレビューしたASRock製の独自クーラーモデル「Radeon RX 6700 XT Phantom Gaming D 12GB OC」検証記事から分かる通り、しっかりと作り込んだクーラー搭載モデルであれば、ゲーム中のGPU温度を気にする必要はなさそうだ。

まとめ:WQHD最高画質プレイには十分な性能はあるが、少々物足りない面も……

 以上で後編の検証は終了となる。RX 6700 XTのパフォーマンスはRX 6800にかなり水をあけられてしまったが、最新/人気ゲームを高画質設定のままで十分プレイアブル/高フレームレートで楽しめる性能を持っている。DXRが絡むゲームだとライバルであるRTX 3070に大きく引き離されるというRDNA 2世代特有の問題も再確認できたが、DXR無しであれば十分に速い。

 それゆえRX 6700 XTの評価は実売10万円という価格に納得がいくか、およびそれ以外のGPUの選択肢が今あるか? という点に集約される。Rainbow Six SiegeならWQHDで平均258fps、DiRT 5で110fps、GeForce最適化度の強いOUTRIDERSでも82.25fps出せる点をポジティブに捉えれば、今すぐゲーミングPCを強化したい・組みたい人には良い選択肢となるだろう。

 実際問題、より性能が見込めるRX 6800や、DXRに強いRTX 3070や3060 Tiがほとんど出回っておらず(遺憾なことに転売勢の養分になっているという噂もあるが……)、RX 6700 XTなら(原稿執筆時点では)圧倒的に手に入れやすい。“いまそこにあり、最新ゲームに耐えるグラボ”が欲しいならRX 6700 XTが最も現実的な選択といえるだろう。

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