お世話になっております。フードジャーナリストでラーメンWalker百麺人の、はんつ遠藤です。コロナ禍ですが、ありがたい事に昨年の2020年は一年間で47全都道府県に取材&撮影で伺うことができました。全部で約500軒。特にラーメン店は全体の3分の1程度で一番多く、やはりラーメン人気は健在といった感じですね。
とはいえ、全国にラーメン店は約5万軒あるとも言われ(ウェブサイトごとに数字は違いますが)、伺いたい店舗は本当に多いですが、とても人生一度じゃ周り切れません。新店も続々とオープンするし♪
昨今はご当人ラーメンとかご当店ラーメンとかで括られる、いわゆる個性派ラーメン店も増えてきましたが、それでもご当地ラーメンの類も根強い人気があります。
僕は祖父が福島県喜多方市の出身ということもあり、喜多方ラーメンには、かなりの思い入れがあったりします。
以前に南東北のラーメン本を3回ほど出版させていただいたので、喜多方市も相当、取材&撮影で伺いました。実際は店舗ごとに味が結構違うんですけど、一般的にはあっさり醤油スープに、ぷるぷるっとした多加水の平打ちちぢれ麺、みたいな印象が一番強いでしょうか。
そのような喜多方ラーメンですが、本場に行かずとも各地で美味しい1杯に出会える時代になりました。それは喜多方市の「坂内」をルーツとする、1984年(昭和59年)に東京の内幸町に「くら」を開店、また1988年(昭和63年)に長野県東御市に「坂内」を開店し、各地に続々と出店している株式会社麺食や、1954年(昭和29年)に福島県会津若松市で「味よし食堂」として創業し、のちに店名を変え、全国展開している「幸楽苑」などの功績が大きいと言えるかもしれません。
そんな中、今、僕が注目している喜多方ラーメンチェーンが「きたかた食堂」です。
もともと東京の稲荷町に「麺や玄」という店舗があって、その流れを汲んでいます。新橋店、神保町店のほか、大阪などにもあります。
特に一番の注目株は、千葉県市川市に2021年(令和3年)1月6日にオープンした本八幡店。JR総武線本八幡駅の南西方向、徒歩約2分という立地の良さもあって、この界隈の方々の間で話題になっています。
テーブル席主体の店内は、コロナ禍でも安心なソーシャルディスタンスに気を配った、ゆったりとした作りで、もちろん透明のパーテーションで仕切られています。オープンしたてというのもありますが、ジャズが流れて清潔感ただよう雰囲気も素敵。
店長は、小倉大輔さん。ずっと飲食に携わってきたそうで、以前は上野で国産A5ランクを主体とした高級焼肉店の店長さんだったとか。
こちらは、最初に券売機で食券を購入するスタイルです。
「きたかた醤油ラーメン」の「あっさり」680円をいただきました。
まずは、スープがいいですね~。確かに“あっさり”とした清湯の醤油なんですが、透き通る中に動物系の旨みがぎゅっと閉じ込められた美味しさで、魚介テイストも優しく香ります。
「すごくバランスの良い醤油スープですね~!」と声をかければ
「このスープの取り方、ちょっと大変なんですよ」と小倉さん。
簡単にいうと、動物系のスープと、鶏やカツオなどの魚介を用いたスープの2種類を作って、その2つを合わせて完成するというもの。醤油だれ(いわゆる、かえし)は作らずに、その2番目の魚介も入ったスープにダイレクトに醤油など入れているとか。
この手のやり方、大変なんですよ。他の系統でも聞いたことあるけれど、醤油だれ&スープの作り方ならば、何cc&何mlって感じで合わせられるけれど、この方式だと煮詰まっていくと徐々に醤油感が濃くなってきちゃう。それを、どう同じ味で常に提供するかが。
なんで、そんな大変な作り方にしちゃったんですか? と伺えば、
「そう、習ったもので……」と涙目になってる(汗)
しかも、後味がすっきりしています。
これも根掘り葉掘り伺ったところ【無化調】(いわゆる天然素材のみ使用)であることも判明!
ちなみに「まったり」もあって、そちらは背脂が加わるのだとか。それも美味しそうです!
そして「きたかた食堂」が美味しい訳のひとつは麺! 本八幡店も、やはり高レベルでした。
多加水で、艶やかで、やや平たい中太ちぢれタイプで、まさに口の中で踊る麺。
小麦粉の良さも感じつつ、ぷるぷるとした舌触りも楽しめます。
チャーシューも柔らかくて美味。とろっとした口当たりもGOOD!!
と、ここまでで終わらないのが「きたかた食堂」なのです。僕が好きな要因なのは、こちらはラーメン&海鮮丼という二刀流なんですね~♪
能書きも、ちゃんとあります
「江戸前鮨の伝統を守り、新鮮なうちに丁寧に『仕事』を施し、有名店仕込みの『赤酢』と合わせたこだわりの小丼。生よりも凝縮された旨み、ねっとりとした独特の舌触り。日本で最も相性のいい食べ方と言われる醤油ラーメンと鮪との至福のマリアージュをお楽しみください」
醤油ラーメンと鮪は日本で最も相性のいい食べ方だったんだ。知らなかった……。
ていうか至福のマリアージュって、ワインかよ!!(大汗)
(ちなみに、店長に「私服のマリちゃんって、誰?」ってボケをかましてみたけど、「はい?」って瞬殺された悲しい人を知ってます。僕だよ!!!(涙))
さて、海鮮丼(小丼)は4種類あるようなので、誰と結婚しようかと悩んだのですが(これこれ、日本語にするでない……)、「新作があるんですよ!!!」と店長が。
それが「大トロ小丼(上)」450円
というわけで、また券売機で食券を購入して、お渡しして、そして登場。
うわぁぁぁぁ、見るからに美味しそう。まさに大トロ全面推し。大トロ2枚、赤身2枚。 いただけば想像どおりの美味しさです。トロケル~~~♪
ここで、凄く失敗したことに気づきました。ラーメン食べた後に、大トロ小丼(上)にしちゃった。やっぱり能書きどおり一緒にオーダーすればよかったなぁ。これじゃあ新郎が先に式を済ませて、あとから新婦を投入!みたいになっちゃった。変なマリアージュだ(汗)
ていうか、この大トロ小丼(上)が450円って超お得です。
「これでまたお客さんが増えれば、それで……」って、ヤバいよ、店長また涙目になってきちゃった。すごい客寄せパンダ商品、やっちゃったなぁ。
店長が「もうムリ!」って言いださないうちに、みなさんも、ぜひ(笑)
きたかた食堂 本八幡店
千葉県市川市南八幡4-3-7
047-303-3364
※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策により、営業日・営業時間・営業形態などが変更になる場合があります。詳しくはお店にご確認ください。
はんつ遠藤
1966年生まれ東京在住。早稲田大学教育学部卒業。海外旅行雑誌のライターを経て、テレビや雑誌、書籍などでの飲食店紹介や、飲食店プロデュースなどを行うフードジャーナリストに。ライターとして執筆、カメラマンとして撮影の両方をひとりでこなし、取材軒数は、1万軒を超える。全国のご当地グルメの知識と経験を活かし、ナムコのフードテーマパーク事業にも協力し、中国・上海の日式ラーメンテーマパーク「拉麺競技館」の名誉館長も務める。『日経トレンディ』にてトレンドリーダーにも選出。「週刊大衆」「JAL(Web)」などに連載中。また近年はYouTube【はんつTV】で飲食店を紹介している。ラーメンWalker百麺人も。岐阜高島屋「はんつ遠藤の全国ご当地ラーメンリレー」監修。
著書は『はんつ遠藤のうどんマップ東京・神奈川・埼玉・千葉』『おうちラーメンかんたんレシピ30』『おうち丼ぶりかんたんレシピ30』『東京やきとり革命!』など27冊。
百麺人(https://ramen.walkerplus.com/hyakumenjin/)
本人Twitter @hantsendo
YouTube【はんつTV】 https://www.youtube.com/channel/UCgu9hL89X4k5mWpz8BetHjw
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