ITの本質は「情報の形を変化させる」ことだ

なぜスターバックスは手話が共通言語のサイニングストアを開店したのか

文●石井英男 編集●ASCII

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さまざまな個性を持ったお客様が来店

―― この9ヵ月間を振り返っての手応えや課題があれば教えてください。

伊藤 じつは、聴覚に障がいのある方々が常連さんとして集っている、というわけではないのです。聞こえない方はお客様全体の1割~2割ですね。週末になりますと、遠方からサイニングストアを目指して来店される方もいらっしゃいます。

 オープンして私がびっくりしたのは、さまざまな個性の方がいらっしゃったことですね。ヘルプマークを付けている方、杖をついている方、車椅子の方、目が見えない方、車椅子で手話される方、外国の方で日本式の手話をされる方、ありとあらゆるいろんな個性の方がいらしてくださいました。

 私たちはいつでもOur Mission and Valuesに沿ってどなたでも受け入れる姿勢でおりますが、まだまだ社会では飲食店に入ること自体にハードルがあるのだと、まざまざと感じさせられました。

―― 新しい試みですから、視察に訪れたいという団体も多いのでは?

伊藤 行政のほか、ろう学校の関係者が多いですね。

車椅子用のテーブルなど、バリアフリーにも配慮した店舗となっている

地域住民の誇りとして受け入れられている

―― 期間限定ではなく、恒常の店舗として運営されていることも特筆すべき点です。その場合、地域の方々にファンになってもらったり、サイニングストアがあることを地域の方々が誇りに思うような関係性を築くことが大切だと思いますが、そういうことに関して特別な施策をされたのでしょうか?

伊藤 まず、特別な施策は一切していません。そして、初めてオープンするなら、ろう文化や聴覚に障がいのある方々と関わりのある土地のほうが地域の方も理解があるし、従業員の安全性も担保できるだろうという考えのもと、オープンする場所を探しました。

 そして、立川ろう学校があり、お店の近くのバスターミナルから毎日ろう学校にバスが出ているという立地の良さ、そして同性パートナーシップ制度を他の都市に比べて早く進めているなど、多様性を推進している自治体であること、つまり個性を受け入れる土壌があるというところから国立市を選びました。

 今のところ『自分たちの街にこんなお店があるんだ!』とびっくりされている方が多いようです。また、サイニングストアを伝える新聞や雑誌をわざわざ持ってきてスタッフに見せてくれたりすることはよくありますね。

但馬 とても素敵な話だなと思ったのが、ろう者の方に留まらずさまざまな個性を持った方々がサイニングストアを訪れていることです。これは『国立駅前の“あの”スターバックスなら自分も行きやすい』と感じたからかな、と。

 その結果、いろんな人に勇気を与えるお店として認知されただけでなく、サイニングストアという特徴を持ったお店でもちゃんと美味しいコーヒーが飲めて、素晴らしい体験を受けられるのだと消費者に対して伝えることができました。

 そしておそらく、メッセージを受け取ったのは消費者だけではないでしょう。スターバックスらしい顧客体験が提供できるだろうかと日々悩んでいたパートナーの皆さまにも勇気を与えた出来事だったと思っています。時代の流れからすると、とても大きな一歩を踏み出した素晴らしいアクションだったと感じています。

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