スマートフォンの使い過ぎに警告を発する本が話題になっているが、スマートフォン中毒が問題視されるのは新しい動きではない。iPhone登場から14年、何をもって依存症や中毒とするのかの定義がない中で健康や生活(学習)への影響が議論されている。
スマホ中毒の若者は3人に1人――英大学調査
英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)が2月、スマートフォン依存症と睡眠に関する調査を、精神医学誌Frontiers in Psychiatryに公開した。英国に住む18歳から30歳までの若者1043人を対象にした調査で、調査期間は2019年1~2月、新型コロナが流行する前だ(https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyt.2021.629407/full)。
調査では、スマートフォンの使用状況と睡眠の2つの分野で聞き取りをして、相関関係を調べた。その結果として、3人に1人にあたる38.9%がスマートフォン依存の傾向であることがわかった。睡眠に支障をきたしている人は61.6%だった。
スマートフォン依存と識別される人のうち、睡眠にも支障をきたしている人は68.7%に及んだ。スマートフォン依存ではなく、睡眠に支障をきたしている人の比率は57.1%だった。
スマートフォンの使用時間だが、「1日3時間」が24.7%、「1日5時間以上」も18.5%いたそうだ。調査では、中毒の要素はスクリーンタイムだけではなく、使い方も要素となりうる点も注意している。
スクリーンタイムよりもアプリやゲームが問題?
KCLの調査では、スマートフォン依存症かどうかを識別するにあたり、以下のような質問をしている。
・スマートフォンを使っていたために計画通り仕事(勉強)できないことがよくある
・スマートフォン使用のため、授業中/仕事中に集中できないと感じることがある
・スマートフォンを使っていない時もスマートフォンのことが頭の中にある
・Facebook、WhatsApp、WeChatなどで他の人とのやりとりを見逃さないために、常にスマートフォンをチェックしている
・スマートフォンが手元にない時、イライラや落ち着かなさを感じる
質問項目を見ると、スマートフォンへの依存症の問題は、デバイス自体より、SNSやゲームが大きいのではないかという感じもする。スマートフォンが脳に与える影響を説明した『スマホ脳』(アンデシュ・ハンセン著/久山葉子訳、新潮新書)では、学習系コンテンツの使用に対しても、現場からの報告とともに警告を出している。
なお英国の著名な中高一貫ボーディングスクールであるイートン校では、日本の中学3年に当たる学年で、夜間にスマートフォンを没収している。
他方、日本では2019年に東京都教育委員会は小中高のスマートフォンの持ち込みを容認する方針を出した。その時点で、高校生の97%がスマートフォンを利用しており、災害時の連絡手段という理由が大きく取り上げられた。
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