GIGAスクール構想の影響が色濃く、平均単価の下落も
好調の最大の理由は、児童生徒1人1台のPC整備が進められているGIGAスクール構想の影響だ。2020年度中までに小中学校への整備が計画されており、急ピッチで導入が進んでいる段階だ。
GIGAスクール構想では、Windows PC、Chromebook、iPadが整備の対象となっており、Windows PCおよびChromebookでは、11~13型を最適なディスプレイサイズとし、それを中心に9~14型までが、学校に導入するノートPCの仕様に定められている。
JEITAの出荷統計では、画面サイズが14型以下および重量が1.5kg以下のものは、「モバイルノート」と定義しており、GIGAスクール構想向けのPCは、ここに当てはまる。
2021年2月の出荷統計では、モバイルノートの出荷台数は、前年同月比484.1%増の56万8000台となっており、前年実績の5.8倍にも増加している。過去の統計を見ても、モバイルノートは、2014年2月の16万8000台が最大で、今回の56万8000台という実績は、2月単月の集計では空前ともいえる実績であることがわかる。
また、ノートPCの構成比も91.1%となり、9割台を維持する状況が2020年11月から続いている。2020年2月の実績では、69.5%であり、構成比が21.6ポイントも上昇している。
GIGAスクールの影響に加えて、量販店店頭でも、ノートPCの売れ行きが好調なのが要因であり、引き続き、テレワーク需要が根強いほか、学校へのPCの整備に伴い、子供用にGIGAスクールと同等水準のノートPCを、家庭で購入するといったケースも増えているようだ。
GIGAスクール構想の影響は、平均単価の下落という形でも表面化している。
2020年2月には、PC全体で9万9203円だった平均単価は、2021年2月には、6万9103円と、1年間で約3割も下落。とくに、GIGAスクール構想の対象となるモバイルノートは、前年同月の11万5464円から、5万1937円と、55%も下落し、半値以下となっている。1台あたり4万5000円の補助金が用意されているGIGAスクール構想では、PCメーカー各社が、4万5000円以下で導入ができるパッケージ製品を用意しており、そうした動きが平均単価の下落に影響している。
実際、GIGAスクール構想の影響を受けにくいA4ノートPCなどの「ノート型・その他」のカテゴリーでは、前年同月の9万3626円から、8万4173円と、平均単価の下落率は10.1%に留まっており、GIGAスクール構想の影響をまったく受けないデスクトップPCに至っては、前年同期の9万8693円から、10万4167円と5.6%値上がりしている。
デスクトップは縮小傾向ながら、高性能・高級機へのシフトも
だが、デスクトップPCの需要は低迷している。
2月の出荷実績は、前年同月比37.1%減の9万6000台となり、オールインワンタイプが37.3%減の2万8000台、デスクトップ単体モデルが37.0%減の6万9000台となっている。いずれも、3分の2以下に市場が縮小しており、ノートPCとは対照的な結果になっている。
一部PCメーカーでは、テレワーク環境の整備において、家庭内へのデスクトップPCの設置を提案する動きもあるが、こうしたメッセージが届ききっていないともいえそうだ。ただ、デスクトップPCの平均単価が上昇していることを考えると、オンライン会議などのテレワーク環境や、家庭内での作業の効率化のために、性能の高いデスクトップPCを購入するといった動きが影響している側面もありそうだ。