AVIOTの完全ワイヤレスイヤホン「TE-BD21j」は、直径8mmのダイナミック型ドライバーと2つのBA型ドライバーを組み合わせたハイブリッド構成を選択している。
高級価格帯の有線イヤホンでは、複数のドライバーを組み合わせてワイドレンジ化を図るのが一般化しているが、完全ワイヤレスイヤホンでハイブリッド構成を選択した機種はまだ珍しい。小型のシェル(ハウジング)内に、ドライバーだけでなく、バッテリーや無線関係の回路など、様々な部品を収めなければならず、設計に制約が出るためだろう。
TE-BD21jは、この難しい課題に取り組んだ製品で、AVIOTらしい高音質と、コンパクトで質感の高いつくり、そして実売1万円台半ばの手ごろな価格などが特徴となっている。その機能と音質を見ていこう。
市場で珍しいハイブリッド型の完全ワイヤレス
まずはTE-BD21jの位置付けから。AVIOTは2019年に「TE-BD21f」という機種を発表している。ほぼ例がなかった、1D+2BA構成を採用し、完全ワイヤレスイヤホンのマルチドライバー化に先駆けた製品だった。
TE-BD21jはその流れを汲むもの。外観も似ているが、単なるマイナーチェンジではない。内部設計を新規に見直し、ドライバー、基板、そして内部配線など、徹底的な改良を加えたフルモデルチェンジを果たした。
市場を見渡すと、完全ワイヤレスイヤホンでは直径6mm程度のダイナミックドライバーを採用する機種が主流だ。一方、TE-BD21jのようなハイブリッド型イヤホンは、ダイナミック型/BA型というタイプの異なるドライバーを使用している。
BA型ドライバーはダイナミック型よりも繊細な表現が得意な半面、再現できる周波数帯域はダイナミック型よりも狭く、低域の量感・エネルギー感も譲る傾向がある。両者の持ち味を融合して高音質化を図るのがハイブリッド型イヤホンだ。複数のドライバーを組み合わせるため、中身が複雑となり、高コストになるが、TE-BD21jは上述したような手ごろな価格で提供されている。