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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第605回

Radeon RX 6700 XTのダイは6800 XTの6割程度の大きさ AMD GPUロードマップ

2021年03月08日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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DirectX 12でサポートされた
Radeon Anti-LagとRadeon Boost

 その他の話として、これはRadeon RX 6700XTというよりはRadeon Software側の話になるが、Radeon Anti-LagとRadeon BoostがDirectX 12でサポートされることになった。このうちRadeon Boostの方であるが、この説明にもあるようにこちらはMotion Adaptive VRSを利用した実装になっている。Motion Adaptive VRSそのものは実はそれほど新しい技術ではない。

解像度を下げてフレームレートを向上させるRadeon Boost

 もともとVRS(Variable Rate Shading)そのものはDirectX 12で搭載された技術である。例えば、画面で手前にある(=ディテールがわかりやすい)ものは、なるべく高解像度でシェーディングを行ないたい。ところが画面で奥にある(ディテールが良く見えない)もの、あるいはモーションブラーをかけている(当然画面は激しくブレる)場合、そこまで細かくシェーディングを行なっても意味がない。

 そこで、画面の中で高い描画品質を必要とするものと、そこまで高い品質を必要としないものを分けたうえで、必要としない場合には粗いシェーディングをかけることで、相対的に描画速度を向上させるという技術である。

可変レートシェーディング(VRS)はすでにWindows 10 May 2019 UpdateにてDirectX 12に加わっている

 VRSそのものはDirectX 12のTier 1(DiectX Feature Level 12_1)で搭載されたもので、Tier 2(DirectX Feature Level 12_2)ではさらに機能が増えている。このTier 2を現時点でサポートしているハードウェアとしてはNVIDIAのTuring/AmpereとAMDのRDNA 2、それとIntelのXe-HPEとなっている。

 ソフトウェアでこれを扱ったのはNVIDIAが一番最初で、2018年9月にはこの話が出ている。2020年3月のDirectX 12 Ultimateの紹介の際にもこのVRSの話題が出ている。

 NVIDIAはこのVRSに関して、Context Adaptive Shading(画面のコントラストが低く、オブジェクトのバリエーションが乏しい場合にシェーデイングレートを下げる)とMotion Adaptive Shading(高速な視界の移動などでモーションブラーが掛かった場合にシェーデイングレートを下げる)の2つを組み合わせ、NAS(NVIDIA Adaptive Shading)としてゲームデベロッパーに開発キットを提供している。

 また3DMarkに2019年からFeature TestとしてVRSのテストを追加しているなど、ある意味昔からあった機能である。

2019年の3DMarkには、まだTier_1対応のものしかなかったが、最近はTier_2対応のテストも追加されている

 さて、NVIDIAの場合は、アプリケーション側でこのVRSを明示的に使うことで性能が向上する、という話であった(だからこそNASといった名前でツールセットを提供した)わけだが、AMDがこれをRadeon Boostに追加したということは、非VRS対応(ただしDirectX12には対応)のアプリケーションであっても強制的にVRSを利用することで性能を向上できるという意味であろうか?

 もしそうだとすればこれは画期的な技術である。少なくとも「キーボードやマウスなど入力があった時だけ解像度を下げる」よりももっと効果的だし画質そのものがほとんど犠牲にならないからだ。といっても、実機で試してみないとその効果はわからないのだが。

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