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社会変革や地域課題を解決するアクションはすでに100件超え

災害時に電気自動車を「動く蓄電池」として活用する日産の「ブルー・スイッチ」

2021年02月03日 11時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 環境にやさしく、静音性にも優れた電気自動車(EV)。日産自動車の「ブルー・スイッチ」とはこの電動自動車の普及を通じて、社会の変革や地域課題を解決する「日本電動化アクション」を指す。活動は世界で初めて電気自動車を量産化・発売までこぎつけた日産自動車が、日産リーフの国内販売累計10万台を記念して2018年5月にスタート。電気自動車や充電器の普及といった電動化ソリューションを活用することで、パートナーとともに問題解決を進めてきた。

災害時にEVを!日本全国に拡がる災害連携協定

 ブルー・スイッチで取り組んでいる問題は環境保護、災害対策、エネルギー・マネジメント、観光、過疎化など多岐に及んでおり、昨年末で取り組みは110件を超えた。このうち特に注目したいのは災害対策としての電気自動車である。

 日産リーフに搭載されている大容量バッテリーは、災害時に利用できる「走る蓄電池」としての役割を持っている。フル充電された「日産リーフe+(62kWh)」の場合、日本の平均的な世帯であれば、最大4日間分の電力を供給することができ、6,000台以上の携帯電話を充電することが可能。40kWhのバッテリー搭載グレードでも、43階建てのビルに設置されたエレベーターであれば100往復させることができる。

2020年で誕生から10年を迎えた「日産リーフ」(写真は日産リーフ e+ G)

 電気自動車を災害時の非常用電源として使うアイデアは、約500万世帯が停電した東日本大震災のときに生まれた。初代の日産リーフを被災地に送り出した経験を持つ日産自動車は、その後ブルー・スイッチの活動を立ち上げ、2018年9月に東京都練馬区と災害連携協定を締結。この協定を皮切りに、同社は全国数多くの自治体や企業と災害連携協定を締結しており、その数はすでに82件(2021年2月2日時点)に及んでいる。

 災害時に役立った実績も生まれている。2019年の台風15号と19号、さらに令和2年7月豪雨では、実際に日産リーフが多くの避難所や高齢者施設などで非常用電源として活用された。復旧支援に励むボランティアも、現地で明かりを灯し、工具を充電し、温かい食事を食べることができたという。電気自動車であれば、排出ガスが出ず、静かに電源が使え、移動できるため避難所の体育館などにそのまま入っていくことが可能だ。

災害時の非常用電源としてに日産リーフが活躍

 ブルー・スイッチは、電気自動車を活用した災害支援活動の推進と、エネルギー管理や気候変動対策に取り組む活動などが高く評価されている。実際、国内自動車メーカーとして唯一、「第6回ジャパン・レジリエンス・アワード(強靭化大賞)2020」の最優秀賞を受賞している。現在、日産自動車は電気自動車と電力網をつなぐことで、家庭や企業に電気を効率的に供給する「EVエコシステム」の実現を、目指している。電気自動車が暮らしの中の電源として溶け込む社会は、もう始まっているのだ。

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