CES 2021レポート 第18回
GeForce RTX 3060&ノートPC向けRTX 30シリーズが発表!CES 2021 NVIDIAイベントを振り返る
2021年01月13日 08時10分更新
RTX 3060にモバイルAmpere、Resizable BARへの対応も!
CES 2021でNVIDIAが明かした新製品&新技術
2021年1月13日2時、NVIDIAはCES 2021に連動したオンラインイベント「GeForce RTX Game On」においていくつかの発表を行なった。本稿ではNVIDIAが何を発表したのかについて、要点のみをまとめておきたい。実際のパフォーマンスレビューについては、製品の投入時までおあずけだ。
VRAM 12GBのミドルクラス「RTX 3060」
NVIDIAスペシャルイベント最初の注目トピックは「GeForce RTX 3060」だ。既に同社はRTX 3060 Ti(レビュー記事)を出しているが、今回はその下に位置付けられる“ミドルクラスAmpere”となる。また発売日は2月終盤(Late February)、北米MSRP(希望小売価格)は329ドルと発表された。RTX 2060の価格がMSRP349ドル、国内では5万円〜だったことを考えると、RTX 3060は4万円台中ごろになると筆者は予想している。
RTX 3060の基本スペックについては既に公式サイトに掲載されている。CUDAコア数3584基(28SM構成)であるためRTX 3060 Tiよりもざっと4分の3程度の性能になることが推測されるが、VRAM構成はGDDR6 12GBに増えている点に注目だ。
すぐ上のRTX 3060 Tiどころか、フラッグシップのRTX 3080よりも多い。ライバルであるRadeonの新モデル(RX 6700XTなど)が12GB搭載と噂されているため、これに対する先制パンチと考えられる。
ただしVRAM搭載量は多くなったものの、メモリーバス幅はRTX 3060 Tiの256bitより狭い192bitであるため、性能が劇的に向上するとは言い切れない。CUDAコア3584基程度でVRAMを食いまくるAAAタイトル(例えば「Cyberpunk 2077」)を動かしても、CUDAコアのほうが先に手一杯になる可能性も大だからだ。
ただ動画編集用として考えた場合、CUDAコア数の多さはゲームほど劇的な結果は生まないため、動画編集用のGPUとしてRTX 3060は非常に注目すべき存在になるのでは、と筆者は考える。TGP(Total Graphics Power)は170Wと低く抑えられているため、補助電源は8ピン×1がスタートラインと予想できる。
ノートPCでもAmpere世代のGeForceが!
だが今回の本当の目玉といえるのはモバイルAmpere、即ちノートPCに搭載可能なRTX 30シリーズの投入が発表されたことだ。今回明らかにされたのはモバイル版RTX 3060/RTX 3070/RTX 3080と第3世代Max-Qを組み合わせた薄型軽量のゲーミングノートPCの発売。発売日に関してはデルやASUSといったメーカーのアナウンスを参照していただきたいが、早いものは1月末発売の製品もあるようだ。
上の表の通り、モバイル版RTX 30シリーズはデスクトップ版よりも若干スペックが変わっている。上位のRTX 3080と3070はCUDAコアが減り、RTX 3060は逆にCUDAコアが増えている。
ただVRAMはRTX 3060では6GB、RTX 3080は8GBに減らされた(それぞれ12GB/10GBから減った)一方で、RTX 3080は16GB版も提供される。モバイル版RTX 3090はアナウンスされていないので、恐らく16GB版RTX 3080がデスクトップ版RTX 3090ポジションになっているのではと筆者は考えている。
今年のCESでは奇しくもインテル/AMD/NVIDIAが次世代ゲーミングノートについて非常に多くの時間を割いていた。PC市場ではかなり前からデスクトップPCよりもノートPCの方が支持されているのは周知の事実だが、特に今年は3大半導体メーカーの力の入れようが凄まじい。
AMDはRDNA2世代のモバイル向けRadeonのローンチは見送ったもののCPUを発表したし、インテルはモバイル向け第11世代Coreプロセッサー(Tiger Lake)とRTX 30シリーズ搭載ノートPCをアピールしていた。今年はゲーミングノートPCでも熱い闘いが観られそうだ。
今回RTX 30シリーズ搭載ゲーミングノートPCの見どころについて少し触れておくと、NVIDIAのお家芸であるAIを利用した機能は必見だ。ゲーミングノートPCでは処理を高速に進めるためのパワーリミットの調整が肝になるが、第3世代Max-QノートPCに搭載された「Dynamic Boost 2.0」では、AIを利用してCPU/GPU/VRAMのどこにパワーをより多く配分すれば良いかを制御する。この制御はフレーム単位(per-frame basis)で実行されるため、その瞬間にパワーを必要とする所にパワーをより多く割り当てられるようになる、というものだ。
そしてもう1つ、ファン制御に関してもAIが活用される。「Whisper Mode 2.0」ではCPU/GPU温度と冷却ファンを管理し、静音性やパフォーマンスを最大限に引き出すことが可能になるという。
GeForceにもResizable BAR対応が来る
ハードウェア以外に注目すべき点もある。昨年AMDがRadeon RX 6000シリーズの武器として採用したAMD言うところの「Smart Access Memory」の正体である「Resizable BAR」がGeForceにも投入される。
Resizable BARについては既にRadeon RX 6800XTのレビューで解説しているので省略するが、レビューでは「Assassin's Creed Valhara」や「Rainbow Six Siege」でフレームレート向上に劇的な効果が確認できている。
当初は「Ryzen 5000シリーズ+AMD 500シリーズチップセット+Radeon RX 6000シリーズ」という制約があったものの、現時点ではインテル製プラットフォーム(Z490マザーボード+第10世代Coreプロセッサー)や、対象外CPUだったRyzen 3000シリーズ等でもResizable BARが使えることが確認されている。残るGeForceさえResizable BARに対応してくれれば、AMD縛りという呪縛は完全になくなるのだ。
とはいえGeForceのResizable BARはすぐ成される訳ではなく、3つの段階を踏んで行なわれるようだ。まずは1月末以降に発売されるモバイルAmpere搭載ノートPCが最初に実装し、続いて2月下旬のRTX 3060搭載ビデオカード、そして3月以降で既存のRTX 30シリーズへ展開となる模様だ。
GPUパワーが高くVRAM搭載量も多いRTX 3090やRTX 3080が一番遅くなる点は残念ではあるが、Resizable BAR対応にするためにはビデオカード側のファームウェア(vBIOS)の書き換えが必須になる。書き換えミスはカードの死を意味するため、vBIOS書き換えのための検証や下準備に時間がかかるといったところだろう。
もちろんマザー側のBIOSもResizable BARに対応したものに書き換えが必要になるので、GeForceのResizable BAR導入を考えている人は十分に準備(マザーのBIOS更新やバックアップなど)をやっておきたい。
まとめ:30分程度と短いが見どころの多い内容だった
今年のCES 2021関連では、インテルは自動運転(Mobileye)に軸足を置き、PC分野はノートPC中心で、注目のRocket Lakeは一瞬で通り過ぎた。AMDはモバイル版Ryzen 5000シリーズや第3世代EPYCを発表したものの、期待されていたRX 6000シリーズのミドル〜メインストリームモデルには一切触れることなく終わってしまった(しかもパートナー企業やF1関連の脇道が長い!)。
これに対しNVIDIAはわずか30分程度のプレゼンテーションだったが、デスクトップPCとモバイルPCそれぞれに興味深い新製品をアナウンスして終了。総じて今回一番見ごたえがあったと感じた(噂のRTX 3080のVRAM増量版に対する言及がなかったのは残念だが……)。
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