最新技術の展示と名だたる登壇者のラインナップで知られるテクノロジーカンファレンス「Web Summit 2020」、今年は2020年12月2日から4日までオンラインで開催された。スタートアップのピッチコンテスト「PITCH」を獲得したのは、エチオピアの医療テック、Lalibela Global-Networksとなった。
コロナ禍でWeb Summitもオンラインとなった。だが参加にあたって物理的障害がなくなったため、参加者は2019年のリスボンと比べると3万人増え、168ヵ国から10万5000人近くが参加した。このうち約46%が女性とのこと。
スタートアップの参加は89ヵ国から2007社が参加した。PITCHには700社の応募から140社が選ばれ、最終的に3社に絞られた。
最終選考に残った3社は米Rheaply、英国のSwIDch。エチオピアのLalibela Global-Networks。
Rheaplyは、「Asset Exchange Manager(AxM)」として、企業、政府、学校などにある使われていない資産を共有、レンタル、スワップできるサービスを提供している。組織内、組織間で利用でき、調達コストを抑えられるだけでなく、環境問題の解決にもつながる点がウリだ。
共同創業者兼CEOのGarry Cooper氏は、「サーキュラーエコノミーを実現できなければ、CO2排出ゼロを達成できない」と述べた。サーキュラーエコノミー市場は4.5兆ドルと見積もる。
SwIDchは企業向けに認証技術を提供するスタートアップ。サイバーセキュリティは世界的に大きな問題だ。「サイバーセキュリティは1240億ドル規模の大きな問題。2020年、世界はこの問題に毎分290万ドルを費やしている」と同社の最高開発責任者、Heesung Moon氏、80%はパスワード関連した攻撃という。
SwIDchは、ネットワーク不要で動的にトークンを生成するOTAC(One Time Authentication Code)アルゴリズムを開発、特許を持つ。エンドユーザーはモバイル端末を利用してワンタイムのコードを生成して認証を行う。これによりセキュリティを強固にでき、同時に拡張性も得られるという。IDアクセス管理、財務、IoTなどでの利用を想定している。
Moon氏は「OTACが認証の”空気”のような存在になること」とビジョンを語った。
PITCH Winnerを獲得したのはLalibela Global-Networksはエチオピアの医療テックのスタートアップだ。医療カルテの電子化「ABAY-CHR」をはじめ医療管理プロセスのデジタル化に取り組む。APIを利用したローコードを特徴とする。
4人のジャッジを前にしたピッチで、共同創業者兼のWuleta Lemma博士は、「エチオピア、そしてアフリカ全体のヘルスケアサービスをさらに効率化したい」と述べた。
Lemma博士によるとアフリカの医療システムは紙ベースで効率性がなく、紛失などの問題があった。カルテの保守などの費用がかさんでいるという。これは患者が通院時に支払う金額にも跳ね返っており、「病院で診察を受ける度に10ドルを払わなければならない」と述べる。これまでの慣習や規制などの複雑さがあるが、「これを解決できるのはテクノロジー」と起業の背景を明かす。
「健康は人間の基本的権利」というLemma博士は、28年前からアフリカのヘルスケア改革を試みてきた。すでに4つの病院で採用され、電子化した電子カルテの患者数は120万人。3年前に初参加したWeb Summitの出会いが、急進展を招いたと振り返る。出展したブースで多数の人にPITCHに応募することを推奨されたという。同時に、新型コロナの流行も医療システムへの注目のきっかけになったと述べた。
PITCH優勝のコメントとして、「アフリカを変えることにコミットしてきた。3~5年でアフリカの医療を変える」と決意を語った。
Web Summit 2020の報告会をオンラインにて実施
2020年12月21日(月)、オンライン開催となった「Web Summit 2020」の報告会を横浜のYOXO BOXからオンライン配信する。参加者と視聴者によるパネルディスカッションも予定しているのぜひチェックしてみてほしい。
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