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ヘルスケア業界向けのデータレイク「Amazon HealthLake」を発表

ビルダーに機械学習を拡大 DBエンジニアや産業用途、ヘルスケアでも

2020年12月16日 10時30分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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MLをフル活用した鉛筆工場の生産ラインをのぞいてみた

 産業分野の機械学習について説明したのは、Dr.マット・ウッド氏だ。「クラウドとエッジのノードを使うことで、すべてのデザインプロセス、生産ライン、完成品に至るまで、サプライチェーンをカバーできる」とウッド氏は語る。

 産業分野はソフトウェアと違い、画一的で密結合なので、重要なシステムの障害はサプライチェーン全体に大きな影響をもたらす。しかし、今までのモニタリングは固定的なしきい値で監視されていたため、有用に活用されていなかったという。また、データを元にした予測保全に関しても、適切なセンサーがなかったり、前時代的な製品だったり、クラウドやMLを使いこなせないという課題があった。こうした課題に対して発表されたのが、MLを活用したモニタリングソリューションの「Amazon Monitron」だ。

Amazon Monitronについて紹介するDr.マット・ウッド氏

 Amazon Monitronはセンサー、ゲートウェイ、モバイルアプリまでセットで提供される。電池寿命は約3年というワイヤレスセンサーは振動や温度を測定でき、モーターやタービン、コンプレッサー、ファン、ポンプなどさまざまな機器に容易に取り付けられるという。収集されたデータはクラウドに送信され、分析結果をモバイルアプリで確認することも可能だ。「ここまで実現するのにMLの知識が不要だ。企業は容易に予測保全を実現できる」とウッド氏は語る。また、「Amazon Lookout for Equipment」であれば、既設のセンサーから振動や温度のデータ、「Amazon Lookout for Vision」であれば、画像から産業機器や製品の異常を知ることができる。

 リアルタイム性が必要な場合はクラウドではなく、エッジでの処理が必要になる。これに関しては、既設のスマートカメラの画像を使った機械学習での分析が行なえる「AWS Panorama Appliance」が発表されている。最大20台までのカメラの画像を認識でき、MLモデルはSageMakerで開発でき、他のAWSサービスとの連携も容易だ。また、同時発表された「AWS Panorama SDK」を用いれば、メーカーはスマートカメラにMLモデルを組み込むことが可能になる。

 ウッド氏は、鉛筆を生産する工場のラインを例として、具体的な使い方を披露した。「鉛筆を作るのはボリュームが多く、マージンの少ない事業だ。しかも、いくつかのマニュアルステップが重要で、これを継続して運営していかなければならない」とウッド氏は課題について語る。このラインにセンサーが用意されていれば、Lookout for Equipmentで製造プロセスにおける異常値を検出し、予測保全に役立てることができる。もしセンサーがなければ、Amazon Monitronを追加すればよい。

 また、ラインにおいてAmazon Lookout for Visionを使えば、カメラ画像からリアルタイムに製品のへこみや傷、変形を検知できる。さらにPanorama Applianceを利用することで、複数のカメラで製造工程全体を俯瞰し、生産状態や在庫を検証することも可能だ。「MLを使うことで、すべてのプロセスをモニタリングし、ボトルネックを改善。全体のサプライチェーンをよりよくすることができる」とウッド氏は語る。

鉛筆工場を例にしたMLによる検査

ヘルスケアデータ専門の「Amazon HealthLake」発表

 こうした産業分野のような変革は、医療分野でも起こっているとウッド氏は指摘する。たとえば、製薬メーカーのノベルティスはMLを用いることで、本来20ヶ月かかる創薬プロセスを過程を42日間に短縮したり、重篤なイベントを検出したり、患者の不具合を予測している。

 しかし、医療分野で難しいのは、データがサイロ化されていて、共有しにくいという課題だ。電子カルテや医療データは互換性に乏しく、PDFや画像、メモ書きなど非構造化データも多い。これらを検索可能な構造化データに変換するには大きな負荷がかかるため、多くのヘルスケア企業が手をこまねいている状態だ。この課題に対して作られたのが「Amazon HealthLake」になる。

Amazon HealthLakeを発表

 Amazon HealthLakeは医療機関や健康保険会社、製薬企業などヘルスケア企業が、ペタバイトクラスの健康データを保存、変換、照会、分析するためのHIPPA準拠のサービス。分断された生の患者情報を整理・構造化し、セキュアで法令遵守した形で利用できるように変換する。

 たとえば糖尿病の場合、Amazon HealthLakeを利用することで分散した糖尿病患者や血糖値のデータが自然言語と医療用語で検索できるように構造化され、両者の関係を表したデータベースとして構成することができる。「数百万人の患者の数億にのぼるデータポイントに基づいた糖尿病集団の全体像が見えるようになる。血糖値の高い、糖尿病を管理できていない集団を特定できるので、この集団に管理を徹底し、合併症を予防することができる」とウッド氏は語る。

 もちろん、QuickSigthなどでデータを可視化することでトレンドやリスク要因、治療の経緯などを見ることができ、SageMakerを活用すれば糖尿病の予測につなげることも可能。ウッド氏は、「Amazon HealthLakeによって、ヘルスケア企業はデータの格納や正規化、整理など差別化につながらない作業から解放され、患者の支援と医療ケアの質の向上に専念できる」と語る。

 フィリップスで放射線情報科学を担当するイラッド・ベンジャミン氏は、「医療で難しいのは膨大なデータがさまざまなソースから生まれていること。縦割りのデータをいかに医師が判断して、治療につなげていくかが課題となっている」と指摘する。その課題を解決すべく作られた「Philips HealthSuite」では、AWSを基盤にして分散化していたヘルスケアデータを統合管理。また、MLによって診断システムを改善し、精度はもちろん、運用効率も向上させることができたという。「AIを加速することで、画像誘導治療や遠隔での患者モニタリング、価値に基づく診断などにつなげていきたい」とベンジャミン氏は語る。

Philips HealthSuiteについて説明するイラッド・ベンジャミン氏

重要なのは学び続けること

 最後、シバスブラマニアン氏は機械学習について学び続けることの重要性を強調。「AWSは『Learn and be curious』というプリンシパルに基づいて、社員がいち早く機械学習について学んで来たからこそ、こうした破壊的なテクノロジーをいち早く導入できた」と語る。その上で、機械学習に関しては幅広い教育プログラムを無償で提供していることをアピール。また、強化学習や深層学習、GANなどのより高度テーマについて学ぶコースや、DeepRacer、DeepLens、DeepComposerなどのML学習に最適なデバイスも用意していると説明した。

 DeepRacerのビデオを披露した後、シバスブラマニアン氏は「長い時間をかけて機械学習はここまでやってきた。参入の障壁は下がり、最大のチャンスを提供するものになってきた」と振り返る。

機械学習の可能性について語るシバスブラマニアン氏

 その上で「これはパンデミックによってさらに加速している。お客さまとのやりとりにもMLが使われるようになり、ビジネスニーズにより速く対応するためにもMLが必要になってきた。疾患のトラッキングや患者のケア、ワクチンの発見のためにもMLが使われている。ビルダーはMLを自由に使うことができ、われわれもそうしたビルダーを支援できる」とアピールし、機械学習キーノートを終えた。

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