ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第588回
Ryzen 5000シリーズはなぜ高速なのか? 秘密はZen 3の内部構造にあり AMD CPUロードマップ
2020年11月09日 12時00分更新
19%のIPC向上は
ユニファイドL3キャッシュの効果が大きい
こうした結果が、平均19%のIPC向上という結果だという。その19%の内訳が連載584回の画像になるわけだが、この中で見えない部分はCache Prefetchingくらいのもので、あとはおおむね納得できるものとなっている。
ちなみにZen 3における主要なバッファサイズやレイテンシーの比較が下の画像である。L3キャッシュのみ、レイテンシーが39→46と増えているが、これはCCXが8コアとなり、32MBのL3が共有になった=Tagの検索により時間がかかるようになったことを考えれば無理ないところだろう。
またCCXが8コア単位になったということは、それだけコア間の調停にも時間がかかることになる。ただそうしたペナルティーを払っても、ユニファイドL3キャッシュの効果が大きいのはKTU氏のレビューにある「コア間レイテンシーを確認する」でも偲ばれる。
このテストはコアというかスレッド間の通信に要するレイテンシーなので、L3アクセスのレイテンシーそのものではないのだが、スレッド間通信がL3経由で行なわれることを考えると、従来同じダイ上であっても異なるCCX同士では70ナノ秒以上かかっていたのが、25~27ナノ秒でアクセスできるようになったことの効果は大きいだろう。
これだけいろいろ盛り込みつつ、実はプロセスはN7+ではなくN7のままだった、というのがこれまた驚きである。つまりプロセス変更による性能向上やトランジスタ密度向上の恩恵には一切預かっていないわけだ。
AMDは現時点ではZen 3のダイサイズなどを発表していないが、早くもRyzen 5000シリーズを分解してダイサイズを測定した方がおられる。
Matisse (Zen2) vs Vermeer (Zen3) pic.twitter.com/Ic8Znyltql
— RetiredEngineerR (@chiakokhua) November 6, 2020
彼の測定によれば、Zen 2のCCDは7.43×10.31mmでおおむね76.6mm2、Zen 3のCCDは7.43×11.36mmで84.4mm2とされるが、ただ彼はAMD筋の数字としてZen 2が74mm2で39億トランジスタ、Zen 3は80.7mm2で41.5億トランジスタという数字も挙げており、どちらかというとこちらの方がリアルに近い気もする。
どちらにせよ、ダイそのものは良く似てはいるものの、かなりの部分が再設計され、より高い効率で動作するようになった。ただダイサイズの増分はごくわずかなので、(パッケージそのものは再設計されたと思うが)、既存のAM4に問題なく収まったというわけだ。
以上のことから、Zen 3は筆者の予想よりもはるかに手が入ったものであり、しかも将来のヘッドルームを十分持たせた設計であった。4命令/サイクルのデコーダーのままでここまで性能が引き上げられるのであれば、これを5命令/サイクルにしたらさらに性能が上がるだろう。
Zen 4は来年、5nmプロセスでの投入になるが、この延長で言えばインテルのGolden Coveとも良い勝負になりそうである。
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事
-
第868回
PC
物理IPには真似できない4%の差はどこから生まれるか? RTL実装が解き放つDimensity 9500の真価 -
第867回
PC
計算が速いだけじゃない! 自分で電圧を操って実力を出し切る賢すぎるAIチップ「Spyre」がAI処理を25%も速くする -
第866回
PC
NVIDIAを射程に捉えた韓国の雄rebellionsの怪物AIチップ「REBEL-Quad」 -
第865回
PC
1400WのモンスターGPU「Instinct MI350」の正体、AMDが選んだ効率を捨ててでも1.9倍の性能向上を獲る戦略 -
第864回
PC
なぜAMDはチップレットで勝利したのか? 2万ドルのウェハーから逆算する経済的合理性 -
第863回
PC
銅配線はなぜ限界なのか? ルテニウムへの移行で変わる半導体製造の常識と課題 -
第862回
PC
「ビル100階建て相当」の超難工事! DRAM微細化が限界を超え前人未到の垂直化へ突入 -
第861回
PC
INT4量子化+高度な電圧管理で消費電力60%削減かつ90%性能アップ! Snapdragon X2 Eliteの最先端技術を解説 -
第860回
PC
NVIDIAのVeraとRubinはPCIe Gen6対応、176スレッドの新アーキテクチャー搭載! 最高クラスの性能でAI開発を革新 -
第859回
デジタル
組み込み向けのAMD Ryzen AI Embedded P100シリーズはZen 5を最大6コア搭載で、最大50TOPSのNPU性能を実現 -
第858回
デジタル
CES 2026で実機を披露! AMDが発表した最先端AIラックHeliosの最新仕様を独自解説 - この連載の一覧へ



