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Azureネットワークサービスの社内技術検証に活用、今後はPOCや営業活動などでの活用も検討

日本マイクロソフトが「アット東京 Cloud Lab」を使って“驚いた”理由

2020年11月04日 11時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp 写真● 松木雄一

提供: アット東京

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 「このようなデータセンターサービスは非常に珍しいのではないでしょうか。弊社の米国エンジニアに話をすると、そんなサービスがあるのか、信じられないと驚かれました(笑)」(日本マイクロソフト 酒見一幸氏)

 アット東京が2019年に提供を開始した「アット東京 Cloud Lab(クラウドラボ)」(以下、Cloud Lab)は、アット東京の中央センター(CC1)内において、メガクラウドのダイレクト接続ポイントへの直接接続ができるレンタルスペース(作業室、ハウジングラック)を提供するサービスだ。

 Cloud Labは1日単位でレンタルができ、多様なネットワーク回線/機器が用意されているため、クラウドへの接続検証作業から、POCやハンズオンセミナー、コンテンツ/メディアなど大容量データのクラウド移行作業まで幅広く利用できる、これまでにないデータセンターサービスである。

 アット東京内には2020年2月、「Microsoft Azure ExpressRoute」の接続拠点も開設されている。このダイレクト接続ポイントを通じて、アット東京とAzureクラウドを結ぶ広帯域、低遅延のネットワーク環境が構築できる。

 そんなことから、このCloud Labを、Microsoft Azureが提供する各種ネットワークサービスの検証環境として利用するために訪れたのが日本マイクロソフトの酒見一幸氏だ。同社 プロダクトマネージャーの佐藤壮一氏も交え、Cloud Labの活用に至った背景や、施設での検証を通じて感じたメリット、今後の活用アイディアなどを詳しく聞いた。

日本マイクロソフト カスタマーサクセス事業本部 エンタープライズアーキテクト統括本部 カスタマーエンジニア 第一本部 カスタマーエンジニアの酒見一幸氏、同 Azureビジネス本部 製品マーケティング&テクノロジ部 プロダクトマネージャーの佐藤壮一氏(アット東京 Cloud Lab内にて)

※ 本稿の取材/撮影は感染症拡大防止対策を十分に行ったうえで実施しました。

クラウドの普及で「ネットワークサービス」の重要度が増す

 日本市場におけるAzureの製品マーケティングチームでインフラ担当を務める佐藤氏は、Cloud Labを利用した背景として、現在のパブリッククラウドではネットワークサービスの重要性が増していることを説明する。

 「パブリッククラウドで提供されるネットワークサービスといえば、『顧客データセンターとクラウドを専用線やVPNで接続するもの』という認識の方がまだ多いと思います。しかし実際には、より多様で、かつ品質の高いネットワークサービスが求められるようになっています」(佐藤氏)

 その理由はクラウド利用の普及と多様化だ。かつては、クラウドと閉域接続するのは企業データセンターや本社オフィスだけだった。しかし現在では、ブランチオフィス、リモートワーク環境のユーザーデバイス、コネクテッドカーやIoTデバイスと、多種多様なものがクラウドに直接接続するように進化しつつある。5G時代になると、その動きはさらに加速するだろう。

 そのため、クラウド各社ではネットワークサービスを強化している。たとえばマイクロソフトの場合、専用線接続サービスであるAzure ExpressRouteの機能拡充だけでなく、近年はSD-WANサービス「Azure Virtual WAN」の提供にも力を入れている。

 「そして、単に新しいサービスをラインアップするだけでは不十分です。ユーザーのニーズに合った最適なネットワーク設計をご提案したり、その構築や運用をお手伝いしたりするためには、個々のネットワークサービスに対する知見とプラクティス(事例や経験)を蓄積しなければなりません。われわれ自身も、なるべくユーザーに近いネットワーク環境で最新サービスをしっかりと試し、キャッチアップしておくことが必要になっています」(佐藤氏)

佐藤氏

 カスタマーサクセス事業本部に所属し、設計へのアドバイスなど顧客へのプロアクティブなサポートを行う酒見氏も、「自ら試しておくべき」という佐藤氏の言葉に同意する。顧客からの問い合わせに対し、さまざまな技術ドキュメントや海外でのケースを参照して回答することもできるが、ことネットワークに関して言えば、顧客が利用するキャリアやネットワーク構成によって「違い」が生じることも多い。「やはり実際の環境で、自分で試して得た知見でないと、100%の自信を持って『こうすれば大丈夫です』とは言いづらいですね」(酒見氏)。

 だが、これまではそうした「顧客に近いネットワーク環境」を用意するのは難しかったという。もちろんマイクロソフト自身も、Azure自体のサービス展開/更新専用テストリージョン、開発/エンジニアリング部門用のテスト環境、さらに一般社員向けのテスト環境などを整えてはいる。しかし、そこは厳密な管理とガバナンスが徹底された環境であり、日本の企業ユーザーに近いネットワーク環境、それも疑似障害を自由に発生させられるような環境を、一担当者レベルで準備、利用するのは難しい。ネットワークの障害テストまで自由に実施したいとなると、社内環境とは別に考えなければならなかった。

 「エンドユーザーに近い環境が欲しいからと、自宅にラックやネットワーク機材を設置するメンバーもいました。わたし自身も一度、自宅からExpressRouteに接続する専用線の見積もりを取ってみたことがあります」(酒見氏)

酒見氏

充実した検証環境を「誰でも気軽に」使える驚き

 そうした中で偶然、酒見氏が社内のサポートエンジニアから教わったのが、アット東京のCloud Labだった。

 「これは良さそうだと思い、すぐにメールでアット東京に問い合わせをしました。6月末に問い合わせて日程調整などを行い、実際に利用したのは8月下旬の3日間です。社内のサポートチームメンバー8人ほどで利用しました」

アット東京 Cloud Labで提供される作業室とラックスペース

 Cloud Labでは、CC1内にある各メガクラウドの接続拠点へ構内接続できる「ATBeX」回線が提供される。もちろんExpressRouteにも接続できるので、これを使ってさまざまな検証作業が可能になる。そのほかインターネット回線やフレッツ回線も用意されており、ルーターやスイッチなどのネットワーク機器もレンタルが可能だ。

 「今回はExpressRouteやインターネットVPNを使ったネットワークの冗長化構成を検証したかったので、回線を2本出してもらって取り組みました。スイッチやルーターもお借りしたので機材持ち込みの必要がなく、自分のPC以外はほとんど手ぶらで行きましたが、特に不足するところはありませんでした」(酒見氏)

 そもそも、こうした充実したネットワーク環境が「1日単位で」「気軽に」使えるのは驚くべきことだと、酒見氏は強調する。

 「キャリアの専用線を引くならば、まずは事前調査に1~2カ月かかり、さらに最低でも1年単位での契約をすることになります。そこにかかるコストや日数、手間と比べると、Cloud Labの使いやすさは圧倒的です。大げさな話にならず、社内の部門やチームといったレベルでも手軽に使える。このようなデータセンターサービスは非常に珍しいのではないでしょうか」(酒見氏)

 冒頭のコメントにあるとおり、米国マイクロソフトのエンジニアにCloud Labのサービス説明をしたが「ちょっと信じられないという様子だった」と酒見氏は笑う。

Cloud Labで利用できるネットワーク環境の概要。ATBeXを通じて各メガクラウドに接続できるほか、フレッツ網経由で自社データセンターなどと接続することも可能だ

 ネットワークが自由に扱えたことも、検証作業には非常に役立ったという。たとえば酒見氏は今回、冗長化構成をとったネットワークをダウンさせて、その際の細かな挙動を検証した。これにより、ExpressRouteからインターネットVPNへの切り替えがどう処理されるのか、ユーザー側のポータルにはどんなアラートが表示され、どんなログが残るのか、マイクロソフト側の管理画面ではどう見えるのかといったことが詳しく確認できた。

 そのほかの参加メンバーも、それぞれに確認したいことを実際に試して、具体的な知見を得ることができたという。こうした検証作業の大切さを、佐藤氏は次のように説明する。

 「サポートメンバーは社内に蓄積されたさまざまな知見を参照することができますが、たとえばそれと少し違う構成の場合はどうなるのかなど、細かな部分まではわからないことがあります。Cloud Labのように自由に使える検証環境があれば、そうした“知見のホワイトスペース”をひとつずつつぶしていけます」(佐藤氏)

 酒見氏は、検証作業がスムーズに始められ、そこに集中できた点も評価していると語る。あらかじめ回線や機材が用意されているのに加えて、ネットワークの設定情報なども事前にわかりやすいドキュメントが用意されており、検証前のセットアップはわずかな時間で済んだという。

 「他社の環境を借りて検証するとなると、通常はセットアップに時間を取られてしまいがちですが、Cloud Labでは非常にスムーズでした。そのほかにも、たとえばデータセンターへの入館手続きが煩雑でなかったり、ネットワークケーブルやテーブルタップといったものもすぐにお借りできたりと、細かな部分ですがストレスが少ない。他社環境なのに不便を感じず、本来やりたい作業に集中できました」(酒見氏)

Cloud Labの作業室内にはリラックスできる一角も用意されている

技術検証だけでなく営業活動にも、広がる活用アイディア

 Cloud Labの利用後、社内ミーティングでそれを報告したところ、ほかのチームメンバーも興味を持ったようだと酒見氏は語る。今後も、社内勉強会のようなかたちで利用したいと思っているそうだ。

 「今回は参加出来なかったメンバーもいるので、また同じ検証シナリオを試してみるのもいいですし、また違うシナリオも考えたいですね。今後も定期的にやっていきたいと考えています」(酒見氏)

 佐藤氏は、今後さらにAzureで新しいサービスが増えていくことを考えると、その検証作業をCloud Labで行えることはますます大切になるだろうと語る。

 「最初にお話ししたVirtual WAN(SD-WAN)のような新しいネットワークサービスが増えれば、ユーザーのネットワークシナリオもどんどん多様化していきます。サポート部門がそれらの知見を蓄積するためだけでなく、たとえば営業部門のメンバーがここにお客様をお連れして、技術デモやハンズオン、POCを行うことも考えられます」(佐藤氏)

 活用のアイディアはネットワークサービスにとどまらない。Cloud Labではラックスペースも利用できるが、たとえばそこに小規模なVMware環境を用意すれば、これから日本でも提供予定の「Azure VMware Solution」についても、テストが容易に行えるようになり、検討がより迅速に行えるようになるのではないかと語った。

 「Cloud Labのお世話になる機会は、これからきっと増えていくのではないでしょうか」(佐藤氏)

 アット東京営業本部ソリューション営業部の新妻氏は「お役に立てたなら何よりです。今後もぜひ、さまざまなことにご活用いただきたいです」と顔をほころばせる。さらに「アット東京はデータセンター事業者として、Cloud Lab内はもちろんのこと、他のエリアにおいても常日頃から十分な感染症対策を行っていますので、どうぞ安心してお越しください」と話した。

(提供:アット東京)

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