麺、スープ、具材にこだわりが詰まったファミリーにも優しい注目店 麺処 天川(大阪府・大阪市西区)【大阪の麺スタグラマーによる「ラーメンの時間ですよ」】第15回
2020年10月13日 18時00分更新
はいはーい、ラーメンの時間ですよ♪
自分がラーメン店に求めるもの、美味しさは言うまでもありませんが、最終的には味も含めた総合的な「満足度の高さ」。お店を出る時「来てよかったー!」「また来たい!」そう思えるようなお店に出会えた時の嬉しさは格別ですよね。
今回ご紹介するお店は、京セラドーム大阪の近くにある『麺処 天川』さん。SNSでフォロワーさんたちが絶賛しているのを見て気になっていたお店に、初めて訪れたのは今年6月のこと。その時食べた一杯にも感銘を受けましたが、アットホームな居心地の良さにも惹かれ、気付けば何度か訪問するまでに。しかも最近では某誌で醤油ラーメン部門のグランプリを獲得するなど、今かなり注目のお店。
今回はそんな『麺処 天川』さんの核心に迫ります。
店舗の入口にアルコール消毒液。これは新型コロナウイルス対策として今や大抵のお店に設置されていますが、それだけではなく簡易式の手洗い場まで設置!ここまで徹底して取り組まれているお店は見たことがありません。アルコールに過敏な方でもこれなら安心ですね。
『麺処 天川』さんを経営するのは、店主の岡部大さん。奥様と二人三脚でお店を切り盛りしていて、仲睦まじい様子が微笑ましく感じます。
岡部店主がラーメン屋さんを志すことになったきっかけは高校時代。
大阪府下に店舗を構えるラーメンチェーン店『天下第一』系列の『五味八珍』さんでアルバイトをしたことから始まります。アルバイトをするうちにラーメンにハマったそうで、当時の店長と食べ歩きをするようになり、東京までラーメンを食べに行ったこともあるそう!
大学に入学した後もアルバイトを続け、その後もラーメン作りを学びたいと考え、ラーメン店を始めとして飲食店を多数展開している会社に就職し、店長として任されるまでに。ここではラーメン作りよりも、主に会計や計数管理といった飲食店経営について学ぶことができたとのこと。
ただ、よりラーメンのことを学びたいと考え、次なるステップに選んだ先は……ラーメン屋さんではなく、なんと乾物屋さん!
なぜ乾物屋さんに?「乾物の知識を深めることが今後のラーメン作りに役に立つと思ったので」
なかなか異色の経歴かと思いますが、提供されているラーメンを食べると、その時蓄積した知識が存分に活かされていると感じますね!
乾物屋さんで約10年勤務し、営業から製造、配達まで何でも経験。その後、満を持して2019年3月5日に『麺処 天川』をオープン。
なぜこの地に?「地元なんですよ。開業するなら今まで育ててくれた地元に貢献したいと思っていましたので」
しかしながら物件探しはかなり難航。たまたま今の場所に居抜き物件が見つかったものの、駅からは遠いし不安が。かなり悩んだそうですが、自分の追い求める味が認められればお客様は来て頂けると考え決断。
オープン直後は現場の第一線から離れて10年のブランクがあり、思うように体が動かずガチガチな状態。そんな岡部店主を奥様は「頑張れー!」って楽しげに見ていたそうで(笑)
「だって頑張ってもらうしかないですからね」と笑いながら答える奥様を見ていると、ご夫婦の絆の深さを感じます。
そんなお店のモットーは、
・食を通じて社会に貢献する
・商いに関わるすべてに感謝
・お客様へ活力の源のご提供
の3点。
このモットーからも、店主さんの真面目な人柄と想いがしっかりと伝わってきます。
そんな『麺処 天川』さん、とにかく食材にもこだわりが半端ないんです。
まずは水。食を取り扱う上で非常に重要ということで、アメリカのシーガルフォー社の浄水システムを導入。こちらは不純物だけでなく細菌までをも限りなく除去してくれるすごい浄水能力!
麺は鶴見製麺所にお願いしている国産小麦の麺ですが、一般的に生麺に使用されている添加物であるプロピレングリコール(PG)不使用のもの。いずれも安心安全で体に良い食材だけを使用したいという想いから。
また、「ラーメンのスープをゴクゴクと飲んで欲しい」という想いから、全てのラーメンにおいて塩分濃度を抑えているそうですが、単に塩分を少なくするだけだと味が薄くて物足りなく感じてしまう。それを補うべく、出汁感をしっかりと持たせることでカバー。優しい味わいながら風味の豊かさがしっかりと感じられるスープに仕上がっており、毎回気付けば完汁しちゃいます(笑)
そのスープのベースとなるのは、新鮮な丹波黒鶏の丸鶏、ガラ、モミジ、手羽元、それに沖縄県産アグー豚の背ガラを合わせた鶏・豚清湯スープ。
魚介出汁は釧路・道南産昆布に鰹節、鯖節など数種類の節から取ったもの。乾物屋さんの経験から魚介出汁をベースにしているのかと思いきや、「魚介出汁はあくまで脇役。香りを出しすぎずバランスを重視して合わせています」とのこと。
チャーシューにもアグー豚のもも肉を使用。アグー豚を使っているのは、今まで食べた豚の中で一番好きだったのでどうしても使用したかったから。肉の味が強いもも肉を使い、しっとりとした食感を出せるように調理する事で、アグー豚本来の柔らかさや旨味を更に強調させているのが特徴。しかし取り扱っている問屋などは知らないので、沖縄の食肉センターに直接連絡して取引開始。鮮度が重要ということでチルドの状態で空輸して取り寄せている力の入れよう!
トッピングのメンマに関しても、通常は漂白メンマを使用することが多い中、九州から取り寄せた塩水メンマを使用して3日間かけて作る無添加メンマ。お客さんから「メンマ嫌いだったけど、ここのメンマは美味しかった」と嬉しいお言葉を頂いたこともあるそうですが、これが秀逸の美味さ。
味玉子は卵黄の濃厚さと美味しさからついつい毎回頼んでしまうんですが、これが何と一個80円という安さ!一度食べたら病みつきになりますのでぜひ!
ちなみに「味玉を半分に割ってください」と注文時にお伝えすると、見た目にも美しいパッカーン仕様で提供してくれますよ(笑)
そんなこだわりの食材で作られるラーメンは、どれもが最高の美味しさですが、まずご紹介するのは『あっさり醤油らあめん』。
こちらは鶏と魚介のWスープなんですが、鶏の旨味を魚介の風味が下支えしており、そのバランスの良さが際立つ一杯!トッピングに大阪産の『しろ菜』を添えているラーメンは珍しいんですが、これがまたスープに合っていて美味しいんです。
次は『アグー背脂入り醤油らあめん』。
こちらはスープにアグー豚の背脂が入った、見た目はいわゆる背脂チャッチャ系。先ほどの『あっさり醤油らあめん』と違い、スープのベースも魚介出汁は使用せず、鶏・豚のスープにアグー豚の背脂を多くトッピングしたもの。一口含むと、アグー豚の背脂から抽出される旨味と心地よい甘さがスープに溶け出し、優しくも奥深い美味さの余韻に思わず「うまっ!」と叫んでしまったほど!今年食べたラーメンの中で個人的BEST3確定の一杯。
夏季限定で提供されていた『冷やしらあめん』もこの夏人気を博した一杯。
冷やしだと煮干し系や塩系の淡麗スープが多い中、敢えての醤油ベース。冷やしラーメンで醤油ベースだと醤油がくどく感じることが多い中、スッキリとした味わいに調整されており、暑い日にゴクゴク飲み干せる美味しさ。途中で別皿の酢橘をひと絞りすると、さっぱりとした柑橘系の清涼感に包まれます。
ラーメンだけではなく、日によって変わる旬の炊き込みご飯も楽しみのひとつ。基本的にご飯類などのサイドメニューは頼まない主義ですが、天川さんに来ると、入口のボードや券売機のPOPについ心奪われ気付けばポチッとしちゃうこと多数(笑)その一部をご紹介。
ちなみにお米は兵庫県但馬産コシヒカリ。こちらも生産農家から直接仕入れをしているこだわりぶり。
カウンターのみのお店ですが、小さいお子さんのいるファミリーの方にも気軽に来て頂きたいということで、『お子さまらあめん』やキッズチェア、ヌードルカッターなども用意しており、受け入れ態勢はバッチリ。岡部ご夫妻が以前苦労した経験もあり、小さいお子さんがいるからラーメン屋は行けない……というご家族にもしっかりとサポートしてくれますので安心ですね。
ここでふと疑問が。
店主さんの名前が岡部なら、屋号の天川はどういった意味なんだろう?と思い訊ねると「お世話になった祖父母の姓を屋号にし、感謝と恩返しの気持ちを込めた」のだそう。
折に触れ感じることができる岡部ご夫妻の優しさが充満しているお店であり、訪問する度に味に癒され、居心地の良さに癒され、そして岡部ご夫妻の笑顔に癒されまくり。まさにヒーリングスポットです♪
オープンして約1年半。口コミや賞獲得により日に日に人気は増すばかりですが、岡部店主は「生産者や近所の方々、お客様に支えられて今があるので感謝しかないです」と、あくまで謙虚な姿勢。
みなさんも美味しい一杯と癒しの空間を求めて訪問してみてはいかがでしょうか。もちろん訪問時は美味しい味玉をパッカーンで添えるのをお忘れなく(笑)
<店舗データ>
【店名】麺処 天川
【住所】大阪府大阪市西区本田1-11-20
【営業時間】11:00~14:00、17:00~22:00
【定休日】日曜日(第2、第4は昼のみ営業)、第3月曜日
【アクセス】
大阪メトロ中央線「九条」駅から徒歩7分
大阪シティバス「本田一丁目」から徒歩3分
※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策により、営業日・営業時間・営業形態などが変更になる場合があります。詳しくはお店の公式インスタグラム(https://www.instagram.com/mendokoro_amakawa_/)、公式ツイッター(https://twitter.com/men_amakawa_)をご確認ください。
<ライタープロフィール>
だいち Daichi
大阪府在住。年間300食以上を食べ歩くラーメンインスタグラマー。普段はバイク移動をしており、美味しいラーメンを求めて気の向くままにラーメン店巡り。仕事柄出張が多いことから、Instagramには全国のラーメンをポストしている。
本人Instagram @ramentimes
Twitter @elground7s