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Apple Watch 6に新デザインのiPad Air! 秋のアップル発表会第1弾

覇道を歩み始めたApple Watch。すべての人のためのウェアラブルデバイスに

2020年09月18日 19時20分更新

文● 本田雅一 編集●飯島恵里子

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知るための道具からの脱皮

 振り返ると、Apple Watchは他の多くのスマートウォッチと同じく、情報を知るための道具として始まった。時を知る道具である腕時計を進化させ、スマートフォンに集まる情報をシンプルな方法で知るための道具として商品はスタートしている。

 当時のApple Watchは、まだ確たる目標を定めていなかったのかもしれない。

 交換可能なバンドの仕組みに加え、特別な工具なしにコマ数を調整できるメタルバンド、マグネットを多用する一般的な時計で禁忌とされてきた仕組みのレザーバンドなどの斬新さを盛り込む一方、長年、機械式時計を磨いてきた職人によるケースの仕上げにこだわるなど、腕時計という製品ジャンルの刷新をしているだけに見えたのだ。

 このころのアップルに対して「趣味としての腕時計の文化はそれほど単純なものではない」と反論を試みる論者が少なくなかったのも無理はない。

 多数のスマートウォッチがある中でApple Watchが特別な存在になっている理由は、ペアリングするiPhoneと密接に連携するようソフトウェアとハードウェアの両面で細かなすり合わせをしている面もある。

 おかげでユーザーは、細かな設定を行わなくともApple Watchを使いこなすことができる。同種の製品としては、圧倒的に簡単に使えるのがApple Watchの一つ目の美点だ。しかし、ここ数年の飛躍は"知るための道具"から踏み出したからだと考えている。

 Apple Watchをはめておくことで、心臓の細かな疾患を予防的に検出したり、苦しい時に心電図を計測して医師に送付したり(日本ではまだ承認されていない)といった機能は、ユーザーからの声が届いた結果、アップルが取り組み始めたものだ。

 ウェアラブルデバイスといえば運動習慣を振り返るための可視化ツールとして注目されてきたが、そうした自分の生活習慣を知る道具という部分を超えて、自分自身の体調変化などを事前に察知するためにどうすればいいのか?という取り組みへと歩を進めている。

 血中酸素濃度の検出に関しては、アップルは医療に応用できるものではないことを強調している。しかし、向いている方向は明らかだろう。

 時を知るために生まれた「ウォッチ」だが、ユーザーが気づかないところで健康や生命を守る存在を目指し始めている。とはいえ、まだまだ先の道のりは長い。冒頭で述べた"注目点"は、まさに理想とする最終目的地へ到達するまでの間に、より多くの人の健康と安全、生命を守るために踏み出す、小さな一歩だと思うのだ。

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