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なぜイノラボと東大がタッグを組むのか〈後編〉

私たちが解決するのは「2030年の日本」に潜む課題だ

文●石井英男

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これからの大学では社会に開いたコラボレーションが重要に

―― このプロジェクトはまだ始まったばかりですが、5年間続けていくとのこと。そこで今後のプロジェクトの方向性などをお聞きできればと思います。まず寺田先生には、ご自身の研究と関連するコラボの方向性も教えていただけないでしょうか?

寺田 5年間の共同研究のその先も含めた方向性となりますが、まだ社会に出てない学生が今回の共同研究に関わることで、例えばベンチャー精神を持った学生が巣立ち、その学生が10年、20年会社を続けて、うちの新しい学生を雇うといった流れを作れればと。

 常に最先端を追いかけて、新しいモノを作り続ける流れをうまく作っていくためには、社会に開いたコラボレーションが絶えないようにしたいです。「既定の5年間続けたから終了」ではなく、大学でこういった教育プログラムを常に動かし続けることで、柏キャンパス特有の「イノベーションが起こる雰囲気」を学生が社会に持ち出していくことを期待します。

東京大学大学院新領域創成科学研究科 環境学研究系自然環境学専攻 生物圏情報学分野(都市・ランドスケープ計画) 寺田徹准教授

 私の研究については……緑地環境デザインと自然環境デザインという、どちらも都市の緑に関わるスタジオに関わっています。

 個人的には、東京の街中に残る農地の問題にすごく興味を持っていまして。東京の特に西のほうですね。もともとの農村地帯に都市が拡大して、市街化されたので、住宅地と農地が混在している風景がよくありますけど、地価が高いので農家さんとしてもなかなか農地を持ち続けることが難しいのです。ただ、道路が狭く公園も少ないなかで、農地が街中の貴重なオープンスペースとして機能しています。

 つまり個人の持ち物ですが、街にとっても公益性があります。それをどう守っていくかというところに興味があるのです。

 そのために、農業をITでサポートしていくスマート農業のようなものも必要だとは思いますが、じつは農業ではない側面が都市農地にはあり、周りの住民の方に対して、その農地の価値をどう高めていくかが大きいのです。

 たとえば軒先で直売所を出した場合、周りの住民がお客さんになりますから、周りの理解がないと経営的にも成り立ちません。それは農業(一次産業)というよりはサービス業の課題であり、さらには住民どうしの交流という意味ではまちづくりにもつながっていく話だと思います。ですから今回のコラボで都市住民と農家さんをつなげられるようなコミュニケーションシステムなど、都市農地の価値を高めるための新しい提案ができるのではと思っています。

学生は10年後を見据えて研究して欲しい

木村 我々のほうは学生のいろいろな可能性を引き出したいと思っています。なかなか満点を付けられるものはできないと思うので、さまざまなアイデアからいくつかよいものを引き出していきながら、しつこいようですけど、とにかく社会で試していきたい。そして今回、少なくとも5年続けたい理由は、迷いながら進められる期間が欲しいからです。やはり結果はそんな簡単に出ないと思っています。

 それから最近、僕が(コラボに関わるイノラボの)メンバーに言っているのは、「学生さんたちは大学院生なので22歳、23歳の方が多いかもしれないけれど、10年後の2030年にはたぶん結婚して、もしかしたら子どもがいるかもしれない。だから、今を楽しむというより、自分の子どもが生きていく10年後に社会はどうなっているのか――という意識を学生さんたちから引き出してくれ」と。

 最近の流行りの言葉でいうと「エンゲージメント」、つながりが非常に重要だし、こだわってみたいなと思っています。今回のリモートワークで、最近の若い子たちにも利他的行動とか応援とか、地元愛みたいなものが芽生えたと思いますが、今の学生さんたちがその気持ちをどう活かしていくのか。1年後ではなく、10年後にある世界をにらんで、今できることは何か? 学生さんたちにはそれを発見して欲しいですし、期待しています。

株式会社 電通国際情報サービス Xイノベーション本部 イノベーションデザイン室長 兼オープンイノベーションラボ(イノラボ)部長 木村平氏

大学は常にオープンです!

―― 最後に読者へのメッセージをお願いします。

寺田 我々に興味を持っていただいたら、問い合わせて欲しいですね。いろんなコラボをしていますので。今回の枠組だけでなく、広く民間の方とコラボしていきたいと思っています。またリカレント教育として、社会人学生の方も受け入れています。次のステップに向けた充電期間、新しいことを取り入れる期間として利用いただければと。大学は常にオープンですというメッセージは発信したいですね。

木村 イノラボは、立ち上げから10年が経ち、IT業界界隈の方にはある程度知っていただけているかもしれませんが、今度はもっとその範囲を広げていきたいなと。じつは10年間で300もの実証実験をやっています。イノラボは、さまざまな場所でいろいろなものを社会実装してきた、チャレンジャブルな組織だということを学生の皆さんはじめ、多くの方々に届けていきたいですね。

―― ありがとうございました。

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