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Bang & Olufsenの「E8 Sport」を聴く、ほぼ4万円の高級スポーツイヤホン

2020年08月23日 12時00分更新

文● ASCII 編集●ASCII

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ハッキリとした音が好きならE8 Sport

 E8とE8 Sportを聴き比べてみた。

 まず両者の音調や音圧感などはほぼ同じで、同じ思想のもとに管理された製品であるというのが分かる。比べると、E8は高域が刺激的でなく、ややウォームな印象。中音域を中心に上品に整ったまとめ方をしている。E8 Sportはこれより高域が少し強めに出て、E8よりもハッキリとした音に感じる。また、低音の量感も若干増していて、気持ちのいいドンシャリ風味のサウンドになっていると言ってもいいかもしれない。

 音数がシンプルな、女性ボーカル+ピアノ伴奏のみの曲で比較すると、E8は声をより直接聞いている感じが強い。女声は男声よりも高いが、その中でも低い音が安定し、ボディー感がある声となる。一方、E8 Sportはピアノの硬質なタッチがピンと張り、空間の広がり感を意識する。

 ただし、これらは「あくまで両者を比較すれば」という話でもある。他社製品と比べれば、意識するのは共通性のほうだろう。ぱっと聞きなら、かなり近い音に聞こえる人のほうが多いだろう。

 筆者が考える、Bang & Olufsenらしさは、全体に柔らかく聞き疲れしにくく、中高域が繊細かつキレイであること。低域はしっかりと分離しているが、量感は出し過ぎない。音離れや解像感は非常に良いが、その一方でよくある高解像度系イヤホンとは異なり、滑らかさやつながりのよさも兼ね備えている。ひとことで言えば、中高域の表現が美しい、品のいい音である。

 出すところは出し、滑らかにするところは滑らかで、楽器や声の質感の対比がしっかりしている。複数の楽器のハーモニーは一体となり、調和して聴こえ、逆に木琴や金管楽器などアタックやハリのある音色の楽器は前に浮き立つ。高域にとがりはないが、ワイドレンジな表現で、かつ低域から高域まで、違和感を感じさせず、特定の帯域に強調感がない。オーディオ機器では音楽を聴いているよりも音を聞いている感覚になる製品も存在するが、あくまでも自然に音楽の魅力をリスナーに届けるサウンドと言える。

 例えば、ソニーの「WF-1000XM3」と比較すれば、ナチュラル、しなやか、柔らかいといった印象を強く持つ。WF-1000XM3は低域が充実していて、高域も上まで再現し、全体にハッキリ・クッキリとした傾向だが、これよりはだいぶ優しい雰囲気だ。また、筆者の手元には、中高域の美しさを重視したNoble Audioの「FALCON」があるが、これですらE8/E8 Sportよりは低域に誇張感があり、ズンズンと出しいたのだと気付かされる。

 E8/E8 Sportの低域は量感が控えめだが、誤解してほしくないのは、決して低域が出ていないわけではないという点だ。例えば、オーケストラのグランカッサやティンパニー、ロック/ポップスのキックやウッドベースなど、必要な低域はしっかりと感じられる。オーケストラのトゥッティなど、スケール感が求められる際の迫力感も申し分なし。芯が合って安定した、重心の低い響きが得られる。

 ただし、狙いはあくまでも、ボーカルのある中音域の情報を的確に伝えることなのだろう。全体のバランスもこれに合わせて調整されている。

 低域の量感があると、ぱっと聴き、安定していい音に聞こえるが、その上の帯域がマスクされてこもり感や情報の欠落を感じることもある。こういった悪影響を嫌い、音楽の中心、例えばボーカルなどがより良く伝わる点を重視したバランスにしているのだろう。特定の帯域が強調されないよう調和をとり、音楽やそのハーモニーが一体感を持って伝わるサウンドに仕上げているのがE8シリーズなのだ。

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