生き物的な可愛さを追求した、もふもふのAIペット「MOFLIN」
「Kickstarter」でコンセプトモデルの予約販売を開始
遺伝的アルゴリズムを用いたAIペット
Vanguard Industries株式会社は7月29日、AIペット「MOFLIN」の予約販売をクラウドファンディングサイト「Kickstarter」にて開始した。MOFLINは、遺伝的アルゴリズムを用いた独自のAIを搭載するペットロボット。
周囲の環境に反応して、生き物のような可愛らしい動きや鳴き声で感情表現をするのが特徴だ。支援金額は、100個限定の「Super Early Bird」が3万7800円から、2000個限定の「Early Bird」は3万9800円から。出荷は2021年3月の予定。
MOFLINは、生物的なアプローチで開発された、感情が育つ新しいタイプのAIペットだ。見た目は、ウサギやモルモットくらいの大きさで、ふわふわの毛で覆われ、愛らしい鳴き声を持つ。
感情表現のために小さく体を揺らしたりはするものの、手足はなく、移動をしたり、何かを動かしたりはしない。毛皮に隠れた本体には、触感センサー、マイク、ジャイロ/加速度センサー、照度センサーが内蔵されており、周囲の環境に応じて感情が変化し、学習を重ねることで独自の性格が形成されていくという。オーナーとの関わり合いによって個性が生まれ、自分だけのペットとして、愛着が深まっていくのが特徴だ。
製品には、巣箱のようなワイヤレス充電器が付属し、MOFLINを入れるだけで充電できる。充電中も、動物が眠っているかのような可愛い声や反応が楽しめる。
MOFLINは、2019年11月にポルトガルのリスボンで開催されたWeb Summitで初披露され、海外イベントでの手ごたえを受けて、量産化に動いた。今回キックスターターにて、コンセプトモデルの先行予約を開始。支援者への出荷は2021年3月以降になる予定だ。
生物的なアプローチで「可愛い」を追求
MOFLINを開発したVanguard Industries株式会社は、企業や大学の研究機関と連携して、新しいモノづくりに取り組むハードウェア・スタートアップ。CEOの山中 聖彦氏に、MOFLINの開発経緯や今後の展開について、うかがった。
MOFLINのプロジェクトは、大企業の研究開発部門との連携による、ロボット向けの人工知能の研究から始まった。
「ロボットに搭載する人工知能にはいろいろな方法論がありますが、我々は当初から、『可愛い』とは何か? を追求し、生物的なアプローチを考えました」(山中氏)
ペットロボットといえば、サーボモーターで移動し、決まった動きや鳴き声をするよう事前にプログラムされているのが普通。しかし、決まったパターンの動きや声では、必ずしも可愛いと感じるとは限らない。むしろ、パターン化された可愛さは、不自然さを感じて気味が悪く思う人も出てしまう。
MOFLINの場合、事前に何かのパターンを組み込むことによって可愛さを表現するのではなく、動きや鳴き声の生成に遺伝的アルゴリズムを用いている。ひとつひとつの小さな動きや鳴き声の単位の組み合わせから、遺伝的に優位なものを残し、進化していく仕組みだ。
つまり、オーナーがMOFLINをなでたり、声をかけて可愛がったりすることによって、人気のある組み合わせを学習し、個体ごとに振る舞いや鳴き方の異なる個性的なペットに育っていくという。
「放置すると、寂しがったり、怒ったりしますし、優しく育てれば、優しい性格に、乱暴に扱うと、気性が荒くなったりします」(山中氏)
穏やかになったり、怒りっぽくなったり
環境に影響を受けるので、静かな環境で育てると穏やかな気質になるという。例えば、テレビの前に巣箱を置いておくと、怒りっぽくなる。ちなみに、お披露目の場となったWeb Summitの展示会場は賑やかだったため、終始ご機嫌斜めだったそうだ。
開発した山中氏にすら、何をすれば、どんな動きや鳴き声をするのかわからないらしい。
「僕のMOFLINは、最近たまに見たことのない可愛い動きをするようになったのです。でも、どうすれば同じ動きをやってくれるのか、まだ再現する方法がわからないんですよ」と、山中氏は嬉しそうに話す。
MOFLINはBluetooth 4.2に対応しており、ソフトウェアのアップデートやセンサーが検出した環境データや学習履歴の収集も、技術的には可能だ。
今回のKickstarterで出荷されるコンセプトモデルには、ソフトウェアのオンラインアップデートなどの機能は備えていないが、次回以降のモデルでは、子どものSTEM教育のきっかけづくりや、高齢者の見守りなどのさまざまなサービスへの展開を計画しているとのこと。