米中貿易戦争によるファーウェイ排除の動きが、無線通信業界に影響を与えている。日本では、NECがNTTを後ろ盾にグローバル市場に打って出る構えを見せ、3大メーカーのノキアはトップ交代が控えている。業界の勢力図が塗り替わるのだろうか?
NECは「最後のチャンス」をものにできるのか?
NECとNTTが世界の5G市場を狙った提携を発表した。背景にファーウェイ排除の動きがあることはまず間違いない。実際、NEC代表取締役執行役員社長兼CEO、新野隆氏が語ったという「世界に出ていく最後のチャンス」という言葉は、1~2年前と違って現実味を帯びている。たとえば、ファーウェイの扱いにてこずっている英国では、NECをベンダーリストに入れる動きがある。
このような世界の動きを受けて、NTTと手を組むことで信頼性と先進性をアピールしようということだろう(NTTは4.8%のNEC株式を取得することも発表している)。長い間、国内市場がメインだったNECにしてみればまたとないチャンスだ。
通信インフラ業界は3Gオークションなどが引き金となったテレコムバブル、そしてファーウェイの台頭により2000年代半ばに再編が進んだ。ルーセントとアルカテルは合体(その後ノキアに買収される)、モトローラもノーテルも姿を消した。残ったのはエリクソン、端末部門切り離してシーメンスと合併させたノキア(Nokia Siemens Networks、そしてNokia Networksに)の2強、そこにプラスしてファーウェイの3社体制から、一気にファーウェイの時代が到来。現在もこの3強で市場の8割を占める。残るのは、ZTE、Samsungぐらいで、NECは「その他」に分類されている(IHS Markit社のグラフより)。
その世界にNECは出て行くのだという。さらには「2030年までにシェア20%」を目指すそうだ。
CEO交代でシェア奪回目指すノキア
もう1社、同じ”N”でファーウェイの勢いを削ぐ動きをチャンスにしようとするのがノキアだ。同社は今年3月、Nokia Siemens時代を含めると11年もの間、同社を率いてきたラジーブ・スリ氏がCEO退任を発表。新CEOとしてペッカ・リュンドマルク氏が就任することになっている。
ノキアは、最大の市場である中国でもエリクソンが契約を獲得する中で苦戦を強いられており、やっとチャイナ・ユニコム(中国聯通)との提携を発表した。また、2018年に発表した自社チップセット「ReefShark」に関連して、Broadcomとカスタムチップ開発で提携したことも発表した。一方で、アルカテル・ルーセント時代から引き継いだフランスの拠点で約1200人規模の人員削減をすることも報じられている。これは、同社が4月に発表したコスト削減計画の一環となる。
CEO交代が発表された当初、リュンドマルク氏のCEO就任は9月1日付けを予定していたが、先に1ヵ月前倒しすることが発表され、8月1日から新CEO体制に入る。
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