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荻窪圭の“這いつくばって猫に近づけ” 第661回

2004年発売のコニカミノルタ「DiMAGE Z2」は味のある猫写真が撮れた

2020年05月12日 12時00分更新

文● 荻窪圭/猫写真家 編集●ASCII

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良い被写体ブレは写真に躍動感を与えてくれる。というわけでモミジの枯葉にじゃれついてるキジトラ。めちゃ楽しそう。2004年11月 ニコン D100

 おうちで昔の写真を発掘するシリーズも2004年になってしまった。連載がはじまったのが2007年なので(ずいぶん昔だ)あとちょっとですな。最後までやるかはわからないけど、緊急事態宣言延長となったので(まあ、解除されたからといって不用意に動き回ったら元の木阿弥なので、イチかゼロかで考えてはいかんのだが)、もうちょっといく。

 そのために1年分の写真を毎回見返してるわけだが、そうするとその1年はどんな猫を中心に撮ってきたかがわかって面白い。2004年は公園デビューの年だった。たまたま自転車で立ち寄った公園に人なつこい猫が何匹もおり、あまりに楽しくて遊んでしまったのである。

 それが4月のこと。持っていたカメラはコニカミノルタ「DiMAGE Z2」。この頃はまだミノルタブランドのカメラも元気だったのだ。DiMAGE Zシリーズは丸っこいユニークなボディーに大きなレンズの高倍率ズーム機だった。木のテーブルで仲良くシンクロ毛繕いしてる姿を遠くからそっと撮る。

猫たちはこのテーブルがお気に入りで、誰かしらがこの上にいるのだった。このときは2匹が仲良く毛繕い中。 2004年4月 コニカミノルタ DiMAGW Z2

 結局、ここの猫たちにハマってしまい、4~12月で15回ほど通うことになったのである。何しろ無警戒というかくつろぎすぎというか、あまり人が来ない場所とはいえ、目立つテーブルの上でこうである。きっと人に飼われていたんだろう。

仲良く昼寝していた2匹。ここまで近づいてもピクリともしないのだった。2004年6月 キヤノン IXY DIGITAL 500

 ただ、ひとつ厄介なことがあった。この場所、すごく暗いのである。ほぼ林の中で、だから訪れる人も少なく隠れるところも多く猫的にはよかったが、カメラには苛酷。当時のデジカメはまだ高感度に弱く、手ブレ補正機構も未搭載だったので、手ブレや被写体ブレを起こしてるカットがすごく多いのだ。

 何度か通ってるうちに、ちょうどここの猫の世話をしてる人と時間がかちあい、全員集合すると5~6匹いたことがわかる。まだ地域猫という言葉も一般的ではない時代で、去勢のペースも遅かったので親子もいた。

子猫といっても十分大きかったのだが、この1匹だけは最後までこんなだったのである。2004年9月 カシオ EXILIM EX-S100

 そのあとみな去勢手術を受けたのだが、猫は増え続けることになる(誰かが捨てたりするからだ)。中でも人なつこかったのがキジトラ一家だった。気がつくと自転車につけたバッグに入ろうとしたり、カメラバッグを占領したり、カメラバッグをベッドにしたり。

猫の餌やおやつは入れてないのだが、何かあると思ったのか気がついたらバッグに顔を突っ込んでたのである。自転車を倒されたらかなわん、と思いつつ、つい撮影。2004年9月 コニカミノルタ DiMAGE Z3

カメラバッグを開けっぱなしでおいておいたらいつのまにかベッドにされてたの図。2004年10月 ニコン COOLPIX 8800

 なんとも気が抜けない。この年は望遠に強い高倍率機や、レンズ前1cmというマクロ撮影に強い機種が続々と出てきた年。なので顔のアップ写真や寄った写真が多い。

 手ブレ補正がないので何かと大変ではあったけど、人に慣れない猫はちょっと遠くから望遠で撮れるので重宝した。1匹だけ毛色が違うチャシロは可愛い顔をしていたのだが警戒心が強く、近寄らせてくれなかったので望遠で。

目がくりっとして可愛かったチャシロ。警戒心が強かったのでちょっと離れて見つめあいつつ望遠で。2004年10月 ニコン COOLPIX 8800

 近寄らせてくれる猫はめいっぱいアップである。

思ったより近くでピントが合ったので驚いた記憶が。目元のアップで。2004年10月 ペンタックス Optio MX4

 最後は、せっかくだからいいカメラで撮っておこうと、ニコンのデジタル一眼レフ「D100」を持って撮影にいったときのカットを。

 冒頭写真はそのとき撮ったこの時のお気に入りカット。落ちていたモミジの葉を左手に持ち、箸が転んでも追いかけるような年頃の猫と戯れながら右手で撮ったカットだ。爪の先を中心にいい感じに回転ブレしてくれたのですごく動きのあるカットになった。ブレなきゃいいってもんじゃないのである。

 このキジトラたちは見てるだけで面白かった。よく動きがシンクロするので何度もシンクロカットを撮らせてもらったものである。その中から3匹がきれいに三角形になって毛繕いをした三角カットを。

テーブルの角を使っていい感じに三角になってたので思わず撮影。枯葉の色と合っている。2004年11月 ニコン D100

 ちなみに、うちにいるキジトラ猫のかふかは、ここのキジトラと親戚関係だそうな。このあと、地域猫の世話をしている猫ボランティアのおばさまと知り合いになり、去勢する前に子猫が生まれてしまったので里親を探してるのだけど、どう? といわれて引き取ったのである。

 では大あくびのカットを最後に。

ファインダーを覗いてたら大あくびしてくれたのでその瞬間を。2004年11月 ニコン D100

 なお、このあとこの公園の猫はどっと増えて一時期10匹以上になったが、事故や病気で亡くなったり老いて亡くなったり里親に引き取られたりしたので、今訪れても猫に会うことはない(はずである)。地域猫活動は、地域の猫としてボランティアが責任を持って世話すると同時に去勢をしてそれ以上増えないようにするものなので、ここにおいては活動が成就したということである。

 次回は新作行きます。緊急事態宣言の真っ只中に発売された唯一のカメラを買っちゃったので。

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筆者紹介─荻窪圭

 
著者近影 荻窪圭

老舗のデジタル系ライターだが、最近はMacとデジカメがメイン。ウェブ媒体やカメラ雑誌などに連載を持ちつつ、毎月何かしらの新型デジカメをレビューをしている。趣味はネコと自転車と古道散歩。単行本は『ともかくもっとカッコイイ写真が撮りたい!』(MdN。共著)、『デジカメ撮影の知恵 (宝島社新書) (宝島社新書)』(宝島社新書)、『デジタル一眼レフカメラが上手くなる本』(翔泳社。共著)、『東京古道散歩』(中経文庫)、『古地図とめぐる東京歴史探訪』(ソフトバンク新書)、『古地図でめぐる今昔 東京さんぽガイド 』(玄光社MOOK)。Twitterアカウント @ogikubokei。ブログは http://ogikubokei.blogspot.com/

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