PCIe 4.0も魅力! ムチャな実験もしてみました
超高速なRyzen 9 3950Xを120mmラジエーターで冷やす「G-Master Hydro X570A II」はデュアル水冷で長時間高負荷作業も安定動作
2020年04月28日 14時00分更新
CPUとビデオカードを水冷化したサイコムの「G-Master Hydro X570A II」は、高いゲーミング性能を静かに使えるのが魅力の1台。前回は主にリニューアルされたケースやその内部について紹介したが、今回は性能面をチェックしていこう。
今回試用したモデルのスペックは、Ryzen 9 3950X、GeForce RTX 2070 SUPER(水冷)、メモリー16GB×2、1TB SSD(PCIe 4.0×4接続)という構成だ。
BTOメニューでRyzen 9 3950Xを選んでみるとわかるのだが、この場合CPUクーラーはラジエーターが240mmの水冷クーラーしか選べないようになっている。Ryzen 9 3950Xは16コア/32スレッドというハイスペックなCPUとになるので発熱が大きく、標準の120mmラジエーターでは冷却が間に合わないという判断なのだろう。
ここで気になるのが、本当に間に合わないのか、そうであればどのくらい冷却能力が足りていないのかという点。あえて嫌な言い方をすれば、「実は冷却性能は120mmラジエーターでも十分なのに、高く売りたいがためにサイコムがズルをしているのではないか」と疑いの目を向けてみたわけだ。
そこで今回は、Ryzen 9 3950Xを搭載しながらあえて標準構成の120mmラジエーターの水冷クーラーとしたテスト機を用意してもらい、この点を検証してみた。
なお、BTOで240mmラジエーターの水冷クーラーへと変更しても、価格差は470円~。Ryzen 9 3950Xを選んでおきながらケチるような金額ではないため、まったく意味はない。この時点で、高く売りたいがために~という疑いはなくなったも同然なのだが、せっかくなので興味本位でテストしてみよう。
比較対象は、CPUクーラーに「CoolerMaster MasterLiquid 240」を採用している以外はスペック構成がほぼ同じとなる、前モデルの「G-Master Hydro X570A」だ。なお、ベンチは過去にとったデータを利用しているため、ドライバーなどのバージョンに若干違いがある。厳密な比較とはならないものの、大まかな傾向を見るには十分だろう。
もっとも気になるCPU性能をいきなりチェック!
やはり熱による性能低下がみられる
まずはCPUの詳細から。Ryzen 9 3950XはメインストリームのRyzenシリーズにおける最高スペックで、16コア/32スレッド、最大4.7GHz動作という化け物じみたCPUだ。当然のようにTDPは105Wと高く、それだけ冷却性能の高いCPUクーラーが必須となる。
今回試した水冷クーラーは、「サイコムオリジナルAsetek 650LS RGBポンプ仕様 + Enermax UCTB12P」という、120㎜ラジエーターを採用したもの。簡易水冷として定番となるAsetekのカスタム品となる。
では、早速CPUの性能を見てみよう。ピーク性能が知りたいということもあり、十分CPUが冷えている状態から「CINEBENCH R20」を実行してみた結果が、下のとおりだ。
全コア利用時のCPUスコアで9234ptsというのは、なかなかお目にかかれない数字だ。この結果だけでも十分に感じてしまうが、今回の目的は、120mmラジエーターでは冷却性能に限界があるのか知ることだ。
240mmラジエーター搭載の前モデルのスコアを見てみると、CPUが9251pts、CPU(Single Core)が530ptsとなっていた。ほんのわずかに負けているとはいえ、これは十分誤差の範囲だろう。CINEBENCH R20のピーク性能だけ見れば、120mmラジエーターでも冷却性能は間に合っているようにみえる。
ただし、水冷クーラーは冷却液を循環させて冷やすため、急激な温度変化は起こりにくいという特性がある。つまり、長時間使うと緩やかに温度が上昇していき、ついには限界を迎えてしまうことがあるわけだ。
そこで、CINEBENCH R20を10回連続して繰り返し実行し、スコアが落ちないか、CPU温度が上昇しないかをチェックしてみたところ、5回目まではかろうじて9000ptsを保っていたものの、6回目以降は8900pts台に下落。最後は8931ptsというスコアにまで落ちてしまった。
CPUの温度を見てみると、1回目は約75度だったものの、回を重ねるごとに上昇。5回目で80度を超えてしまい、10回目の終了時には81.3度まで上がってしまった。
これに対して240mmラジエーターを搭載した前モデルでは、最大でも78.1度。CINEBENCH R20のスコアも9067ptsとしっかり9000台をキープしていた。わずか数度さとはいえ、80度を超えると性能の低下が大きくなってくるだけに、この差は大きい。
この結果を見る限り、やはり120mmラジエーターでは冷却が間に合っていないと考えるのが妥当だろう。とくにCPUに高負荷が長時間かかる用途……たとえば動画編集などでは、さらにこの差が大きくなっていきそうだ。
CPUに余裕があるゲーミング性能は変化なし
CPUにあまり負荷がかからない用途ではどうだろうと、ゲーミング性能もチェックしてみた。こちらも定番となる「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」(FFXVベンチ)を試してみた。画質は「高品質」でモードは「フルスクリーン」、解像度を「1920×1080」にして試している。
結果は見ての通りで、240mmラジエーターのほうがわずかながらリード……といえなくもないが、これはもう誤差の範囲。ほぼ変わらないというほうが正しい。
簡単なテスト結果から分かったのは、CPU負荷の低い用途であれば120mmラジエーターでも問題ないが、CPUに連続して負荷がかかる場合は冷却が間に合わなくなるということ。やはり、サイコムが用意している通り、Ryzen 9 3950Xを搭載するなら240mmラジエーターの水冷クーラーは必須といえる。
高速SSDが搭載できるのはRyzen環境の強み
RyzenはCPU性能の高さが魅力だが、もう1つの強みとなるのが、PCIe 4.0をいち早く採用していることだろう。これに対応するデバイスはまだ少ないものの、ストレージではSSDで対応モデルが普及してきており、このボトルネックを解消したいという人には注目となっている。
G-Master Hydro X570A IIの標準構成ではIntel 660pとなっているが、CFDのPCIe 4.0モデルを選択可能。今回の試用機にはこのPCIe 4.0対応のSSDが搭載されていたため、この性能を見てみよう。
ざっくりとした速度を言えば、PCIe 3.0では高速なものでも3000MB/秒台が限界。PCIe 4.0ならこれを軽々と越えられるだけに、速度を重視するなら使わない手はない。
なお、高速なSSDほど発熱も大きくなりがちだが、シーケンシャルテスト中の温度を「CrystalDiskInfo」で見てみたところ、最大でも61度までしか上昇していなかった。この温度であれば、何の不安もなく利用できる。
240mmラジエーター搭載ならRyzen 9 3950Xでもしっかり冷やせる!
G-Master Hydro X570A IIは騒音が気にならないデュアル水冷パソコンになるため、快適なゲーム環境となるのはもちろん、映画や動画鑑賞といった用途でも活躍してくれる。また、動画配信時はもちろん、最近必要となることが多くなったビデオ会議中でも、ファンの音がマイクに拾われないというメリットがある。
スペックだけを見ればBTOパソコンとして若干高めとなるが、デュアル水冷というそれに見合うだけの価値をもったモデル。静音性も性能のうちだと考えている人であれば、選んで満足できる1台となるだろう。
試用機の主なスペック | |
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機種名 | G-Master Hydro X570A II |
CPU | Ryzen 9 3950X |
グラフィックス | GeForce RTX 2070 SUPER |
メモリー | 32GB(16GB×2) |
ストレージ | 1TB SSD(PCIe 4.0×4接続) |
PCケース | Define 7 |
マザーボード | X570 AORUS ELITE |
電源 | SilverStone SST-ST75F-GS V3 [750W/80PLUS Gold] |
OS | Windows 10 Home(64bit) |