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操作は簡単、水深300mで自在に動く水中ドローンを体験してきた

映像を遠隔地にリアルタイム配信、水中データ分析クラウドも提供

 株式会社FullDepthが開発する水中ドローン「DiveUnit 300」の体験会が行なわれた。

FullDepthが開発する水中ドローン「DiveUnit 300」

 DiveUnit 300は、水産現場、プラントの冷却タンク内、水中構造物の点検などで活用するために開発された産業用途の水中ドローンだ。人の潜水限界深度をはるかに超えた水深300mまで潜り、フルハイビジョンの高精細カメラで撮影する。透明度が低くカメラ撮影が困難な水中でも、ソナーを使って対象物の形状把握が可能だ(オプション)。本体に搭載された7基の推進器により、空中を飛ぶドローンと同じように水中で姿勢を自動制御し、どの方向にも自由に動くことができる。

 DiveUnit 300の特徴は、およそ28キログラムの軽量な本体と、本体と操作用防水PCをつなぐケーブル径の細さだ。水中は電波が届かないため(可視光通信を使った無線通信技術はあるが濁った水の中では実用的でない)、一般的に水中ドローンは本体と操作ユニットをケーブルでつないで有線で操作する。DiveUnit 300は3.7mmの細い光ファイバーケーブルを採用することで、海流が強い場所であってもケーブルが流されることなく、軽量な本体を安定して操作可能にした。

 電波が届かない水中ではGPSも使えない。ダムや湾岸設備など大規模な水中構造物の保守点検、海底の地殻・資源調査などでは、ドローンが撮影した地点の位置情報が重要になる。DiveUnit 300は、GPSの代わりにUSBL音響測位装置を用意(オプション)。水上の船とドローンとの間で音響信号を送受信することで、ドローンの位置座標を取得する。

漁礁やダム、発電所の冷却水タンク内で活躍

 DiveUnit 300の開発元のFullDepthは、2014年6月に創業した筑波大学発のベンチャー企業。ロボット開発が専門で、さらに深海魚が趣味だった伊藤昌平氏(現 同社 代表取締役 CEO)が設立した。映画「ドラえもん のび太の海底鬼岩城」で登場した深海魚「ナガヅエエソ(別名 サンキャクウオ)」に心惹かれたのをきっかけに、深海と深海魚に強い興味を持つようになったという伊藤氏。社名のFullDepthは深海の最深部(約1万1000m)を意味する言葉で、「最深部まで解明することを目指したいという思いで社名にした」(伊藤氏)と語った。

 一方で、水中ドローンの産業ニーズは、「深海1万mどころか、もっともっと浅いところにあった。水深2mでも状況がわからない場所がある。潜水士が潜れずに水中を確認する手段がない場所もある」(伊藤氏)。

FullDepth 代表取締役 CEO 伊藤昌平氏

 実際の事例では、相模湾の漁礁の維持管理のためにDiveUnit 300が活用されている。漁礁は水深130mほどの海中にあり、これまで人が点検に行けなかった。ほかにも、潜水士の危険がともなう発電所の冷却水タンクやダムのひび割れ点検、養殖場で魚の健康状態を確認する作業などでDiveUnit 300が活躍している。

操作は簡単、持ち運びも楽

 今回、デモンストレーション用に用意されたプールで、DiveUnit 300の操作を体験してきた。同社の製品資料には、「操作は直感的にできるので2~3時間の練習で動かせる」とある。実際に操作してみると、空中を飛ぶ普通のドローンと変わらず、PCにつながったコントローラで簡単に動かすことができた。

普通のドローンと操作感は同じ、水中で自在に動かせる

 ケーブルの取り回しが必要な点が普通のドローンと異なるが、これもそこまで難しいことはない。何より小型で軽量であり、本体は約28kg、ケーブルユニットは12.3kgと人の手で移動できる重さなので、幅広い用途で活用できそうだと感じた。

水中で撮影した映像はリアルタイムで配信できる

自律制御できる水中ドローンを目指す

 同社は、水中ドローンのハードウェアだけでなく、水中ドローンが撮影した映像をリアルタイムに配信し遠隔地と共有するクラウドサービスや、ドローンから出力された水深、水温、位置情報などの各種データを蓄積するクラウドサービスも開発している。

 今後は、水中ドローンのカメラやソナーのデータをディープラーニングで分析するといったデータアナリティクス機能をクラウドサービスに追加していく予定だ。これにより、例えばソナーのデータから海底のサンゴがどのくらい死滅しているかなどが解析できるようになるという。さらに、USBL音響測位装置のデータを使った自律制御の実現も目指すとしている。

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