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非常時を想定した適切なキャッシュレスとの付き合い方とは

災害大国におけるキャッシュレスの意外な弱点

2019年10月31日 08時00分更新

文● 戸津弘貴 編集●北島幹雄/ASCII STARTUP

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 北海道の大地震、関西の台風被害での停電で、コンビニなどでICカードやクレジットカードなど、電子マネーをはじめとするオンラインでの支払いができなくなった。キャッシュレス化が進まないと非難されてきた日本だが、災害大国におけるキャッシュレスの意外な弱点が露呈した。災害とキャッシュレスの関係性の現在を考えてみたい。

キャッシュレス後進国日本

 野村総研によると、日本における現金以外の支払い割合は、およそ20%未満で、一位の韓国(96.4%)に大きく差をつけられているほか、以下上位6位までは半分以上がキャッシュレス決済が行なわれている。

 欧米でのキャッシュレス化の傾向は強く、現金による支払い手数料がクレジットカードなど電子マネーによる支払い手数料を超えるなど、現金を使用するコストを増やしてキャッシュレス化を加速させている。紙幣の印刷を国外に外注したり、紙幣の印刷を停止する国も現れたほどだ。

中国でもWechatやアリペイなどの電子マネーの導入が進んでいる。QRコードをスマホのカメラで読み取るだけで決済ができるなど、決済端末すら不要なのも普及を加速させている。商品やサービスの支払いだけでなく、ホームレスまでQRコードで施しを求めるという先進的な? 状態も生まれている

 キャッシュレス後進国と言われている日本だが、EdyやSuicaなどの交通系ICカードの総発行枚数は日本の人口を超えている。ほとんどのコンビニエンスストアでは、電子マネーが使用でき、駅に隣接する売店や駅ナカのショップでは交通系ICカードが使えない店の方が珍しいほど電子マネーは浸透していると言える。

 一方で、電子マネーはおろかクレジットカードも使えない、現金オンリーの店も依然存在する。根強い現金信仰がある一方で、少額決済を中心に電子マネーが、高額決済ではクレジットカードなど使い分ける人も増えており、支払い方法の多様化という意味ではキャッシュレス化が進んだ国よりも日本はダイバーシティが高い状態とも言える。

 キャッシュレス化が進まないと言われる日本だが、完全キャッシュレス化の道のりが厳しいと思われるのが、災害時の決済対応だろう。関西地方の台風被害や、北海道での地震にて、停電と通信回線のトラブルにより決済処理が行なえず現金での支払いしかできなかった状況が発生したのは記憶に新しい。

 非常時を想定した適切なキャッシュレスとの付き合い方とは何かを本稿では考えてみたい。

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