米国政府がTSMCに制約を課すという報道に
「パンドラの箱を開ける行為」と警告
1時間半余りのオンライン発表会のうち、1時間を占めたのがQ&Aだ。そこでは目下誰もが影響を受けている新型コロナの話題が中心だったが、3月末にロイターなどから出た報道についての質問もあった。
その内容とは、米政府が最新のファーウェイ排除策として、米国外の企業でも米国の製造機器を使って自社チップをロールアウトしている企業は、ファーウェイに一部チップを供給するにあたって米国のライセンスを事前取得が必要という新しいルールを検討しているというもの。既報の通り、ファーウェイは2019年5月に、米商務省のエンティティリスト (輸出管理規制)にリストされている。これをさらに強化すると言える。
これによる影響を受けると見られるのが、台湾のTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Co.)だ。TSMCは最新プロセスで半導体を製造できるファウンドリで、ファーウェイ傘下のHiSiliconにも半導体を供給している。
米政府が更なる対策に出る場合はどうするかと聞かれたXu氏は、「パンドラの箱が開かれることになる」と語った。世界レベルでのサプライチェーンが悪い影響を受け、滅びる企業はファーウェイ一社ではとどまらないだろうと言う。さらには、「ファーウェイが窒息死するのを中国政府が黙って見ているとは思えない。中国政府も対抗策を講じるのではないか」と続けた。「中国がサイバーセキュリティーの懸念を理由に、米国の5Gチップ、基地局や米国企業のスマートフォンなどの輸入を禁じる可能性もある」(Xu氏)。
そしてTSMCから供給できないようになったとしても、「Samsungをはじめ他のベンダーから供給が受けられる」とした。「長期的には、チップ製造技術に取り組む中国企業が出てくるだろう」とも予想した。
2019年に30億ドルを売り上げたという5Gについては、中国とそれ以外の国の比率を公開しなかった。一方で、オーストラリア、イタリア、デンマークなど一部の国のキャリアが、これまでファーウェイの機器を使用していたが5Gでは採用しないことになったという。
日本については、「日本の5G市場に参加することが禁止されているとは聞いていない」としながらも、3大キャリアのうち唯一関係のあるソフトバンクと、「4Gにフォーカスした関係を構築しており、これが5Gにも拡大することを期待している」と話すに留めた。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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