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松村太郎の「"it"トレンド」 第294回

映像配信サービスの帯域制限と5Gについて

2020年04月03日 09時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII

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 YouTubeやNetflix、Amazon Prime Videoといった動画ストリーミングサービスは、テレビに先駆けて、4Kなどの高画質ビデオが視聴できるようにしました。Appleも、Apple TV 4Kを登場させ、自社サービスのApple TV+を高画質で配信しています。

4Kコンテンツは映像配信サービスが先行、またNHKがネット上での同時配信サービスを開始するなど、一昔前によく言われた「放送と通信の融合」は完全に果たされたようにも思えましたが、新型コロナウイルス感染拡大からの回線逼迫はあらためて放送と通信の違いも浮き彫りにしました

 家にある(壊れたので、正確には「家にあった」)4Kテレビを最大限に生かせるのは、テレビでありながら、テレビ放送ではなくストリーミングの方だった、という状態が長らく続いていました。しかし2018年12月からは国内でも4K/8Kの放送がBSでスタートし、チューナーさえあればパネルの解像度を最大限に生かせる「テレビ」放送を楽しめるようになりました。

 こうしてストリーミングの方が先に高画質化される状況は、米国などの諸外国でも続いています。しかしコロナウイルスの世界的な流行で、あらためて放送と通信の違いがフォーカスされるようになってきました。

一昔前のキーワードだった「放送と通信の融合」

 一昔前「放送と通信の融合」という言葉がよく聞かれました。言葉の定義からすれば、通信の方が大きな概念。「通信」の中に、映像を一方的に送出し、多数の人が受診する「放送」が含まれることになります。

 こうした法律上の区分とは別に、視聴者はデバイスで判断するかもしれません。一般的な家庭であれば、テレビは放送、電話は通信、というのがわかりやすい区分です。しかしこれも、ケータイの時代にだんだん曖昧になっていきました。

 そしてワンセグの登場です。ワンセグケータイなるモノが登場し、特に力を入れていたシャープは、ディスプレイが90度回転して横長画面を展開できる、テレビブランドを冠した「AQUOSケータイ」を登場させました。デバイス的な融合が果たされます。

 しかしもう少し融合は複雑です。放送を補完するケーブルテレビ会社が同軸ケーブルを活用してインターネットの常時接続サービスや電話サービスを提供したり、通信事業者が光ファイバーを生かして、ネット接続とは別に光放送サービスを提供したり。

 そしてそもそもケータイでNetflixやPrime Videoを見ている場合、動画をネットワークでストリーミングして見ているわけで、個別のデバイスのリクエストには応えているものの、映像が見られる体験自体は放送と同じです。

アクセス数が膨大になったらどうなる?

 このような“体験自体は同じ”という状況は、通常時は当たり前かもしれませんが、インターネットを通じた映像配信にとって、新型コロナウイルスは厳しい現実を突きつけました。

 世界中の大都市で、外出禁止や不要不急の外出の自粛となるなか、家にこもってストリーミングサービスを楽しむ人が増えたことで問題が生じました。増え続ける視聴者を、サービス側がさばききれない事態に陥ったのです。

 ストリーミングサービス大手のNetflixは、視聴者の増大によって、米国東部時間の3月25日正午頃から米国やヨーロッパでサービスが一時つながりにくくなる事態が起きました。これを受けて、Netflixは通信量を25%少なくする措置を欧州以外にも展開して対処しています。

 そのほかにも、YouTubeやApple TV+、Amazon Prime Videoなどのストリーミングサービスも、帯域を把握して映像を配信する措置を執りました。これはサービス自体がダウンしたり、つながりにくくすることを防ぐとともに、世界中でインターネットの通信量が増える中、帯域を空けて通信を円滑にする意味合いもあります。

 テレビには、その番組がどれだけ見られているかを測る指標に「視聴率」があります。国民的なスポーツやイベントなどは、視聴率50%に近づくこともあり、日本人の2人に1人はそれを見ていたことを意味します。もちろん視聴率調査はサンプリングによって実施されるため、必ずしも正確な数字ではありませんが。

 とは言え、たとえばサッカー日本代表戦で視聴率が50%近くなったとしても、テレビ放送が「混雑により見られなくなる」ことはありませんよね。ここに、放送と通信の違いがあります。

 通信には、ネットワークにもサービスにも、さばききれる人数やデータ量の限度があることを、あらためて認識させられました。いや、今まであまり気づかなかったのは、ひとえにネットワーク技術者やサービス提供者のご尽力のたまものだと思います。

 ただし、今回のように世界中のトラフィックが急増する中、1人あたりの通信量を減らす工夫が必要になったということでした。

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