新型コロナウイルスの問題が、中国やアジア地域ならず、世界各国、そして産業やビジネスにまで拡大している。しかもその勢いは(今のところ)収まる気配なまだ見られない。スマートフォンをはじめとしたモバイル業界にはどのような影響を与えているのだろうか?
2月のMWCキャンセル時、まだまだ”対岸の火事”だった欧州
MWC 2020の中止が発表された2月12日(現地時間)、まだ現在のような深刻な状況にはなっていなかった。ファーウェイは2月24日に、バルセロナでハイブリッド発表会(発表そのものはビデオ、だが記者は会場に来ることも、オンラインで見ることもできた)を開催。その頃にはファーウェイのリチャード・ユー氏は、新型コロナウイルスの影響について「サプライチェーンへの影響は大きい」とコメントしていた。
そのユー氏は3週間前に欧州入り。ウイルスの影響を配慮して、オンラインでの発表会にしたとしながらも、次期フラッグシップの「HUAWEI P40」シリーズを3月末にパリで発表すると笑顔で話していた。当時、3月にここまで欧州で新型コロナウイルスの感染が拡大していると誰が予想しただろう(その後、3月26日のオンラインでの開催を公表)。
2月末といえば、ちょうどイタリアでの感染が広がり始めた段階だ。バルセロナ行きの飛行機がローマ経由だったので、行きと帰りで空港内の人々のマスク率が急に上がったことは感じていた。
バルセロナ滞在中は、地元の友人に同情された。2月27日の学校の休校要請のニュースは事が重大であることを知らせる大きなインパクトとなったようで、バルセロナから戻る直前には、戻って大丈夫なの? と心配されたぐらいだ。
その後は報道のとおり。イタリアでは感染者が急速に広がり、そこからフランス、スイスと勢いは拡大している。今は欧州中が半分パニック状態だ。
サムスンは製造拠点を一部ベトナムへ
サムスンはMWCの直前に、まだコロナが問題になっていなかった米サンフランシスコで最新のフラッグシップ「Galaxy S20」を発表。MWCの開催中止が新製品の発表に与えた影響は少なかったかもしれないが、その後の生産はダメージを受けている。
サムスンは3月に入り、韓国国内向けに「Galaxy S20」や「Galaxy Z Flip」を生産するクミ市にある製造拠点を閉鎖すると発表した。6人目の感染者が出たためなのだという。そして、すでに全体の半分以上を生産しているベトナムで製造すると発表した。
サムスンの工場閉鎖は韓国内の新型コロナウイルスの感染が影響した例だが、中国は言うまでもなく、“世界の工場”である。2009年には世界最大の輸出国になっており、全世界の貿易額の3分の1を占めるに至っている。アパレルからガジェットまでありとあらゆるものが中国と関連しており、スマートフォンやPCの部品も多い。
製造をFoxconnに委託するなど中国と縁の深いアップルも影響が大きいはずだ。同社は早々に2020年1~3月期の売上高が予想に到達しそうにないと警告を出していた。Foxconnは3月末には通常の生産レベルに戻るという見通しを出しているが、こうなってくるとそれすら楽観的に見えてくる。
調査会社のCanalysでは、新型コロナウイルスによりスマートフォンの供給が枯渇すると警告。モバイル市場へ影響として、2月の生産は通常レベルの35%にまで落ち込んだと記している。3月には85%に戻り、通常レベルに戻るのは4月だろうという見通しだ。
なお、PCを見るとデルが先の決算発表でサプライチェーンに影響を与えるとの見方を示した。デルに限らず、PCメーカーは軒並みこれまでより遅く納期を設定しているようだ。
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