子どもをどう守るか、という視点
子どもに対するスマホ/タブレットの導入は、学校の教育方針もありますが、最も重視すべきは家庭の教育方針だと考えます。
しかし、家庭側については「教育方針」よりも大きなリスク管理の側面が出てきています。個人的にスマートフォンを子どもに持たせるべきだと考える理由は、自律学習のツールになること以上に、はじめは親との密なコミュニケーション、ゆくゆくは自律的なリスク回避能力を養うことで、情報によって自分の身を守る術を身につけてほしいという期待からです。
たとえば、ネットワークの高度化ゆえに、事故の際の運休がより大規模化する傾向にある鉄道網の問題。「未曾有」が連発される荒れた気象現象、今回のコロナウイルスのような新たな感染症の流行、夏の東京オリンピックも含めて、非常に多様な要因で“非日常”が広がります。
自治体の条例、学校の校則が、目の前で起きた非日常の事象に対応できると考えるべきではなく、親が頭を悩ませるべきは、どうすれば非日常の事態から子どもの安全を守ることができるのか、という一点しかないのです。
そのため、いろいろなことをゼロレベルで考えて、組み立て直していかなければならないと思います。
都心に住んでいて、中学や小学校などに子どもが電車で通っている場合、学校の近くに引っ越すという選択肢も当然ありえます。これで電車によるリスクはなくなりますね。もちろん誰もが簡単にできることではありませんが、今まで除外していた選択肢を含めて、考えるべきタイミングになっているのではないかということです。
また、子ども以上に親が、子どもの通学路に関連する情報に目を光らせ、電車が止まった、停電が起きた、交通事故が発生した、道に水があふれた、などをいち早く察知する「身の回りの情報強者」に進化しなければなりません。
幸いなことに、各鉄道路線のアプリは運行情報をプッシュ通知してくれます。またヤフーの防災速報アプリは、大雨や地震などの情報を自分がいる場所や、自宅や学校などの登録地点でプッシュしてくれるため、その情報を子どもに伝えることで、一緒に対処を考える事ができるようになります。
小さな鉄道の遅延の際、きちんと親子の連携が取れるかどうか、試しておくと良いかもしれませんね。
もちろん、スマホやケータイが異なるトラブルを生み、増幅しているという意見もわかります。クラスメイト同士のオンラインやモバイルにおける教室内外のコミュニケーションからトラブルが生じてしまう事象は絶えません。しかし、それ自体はLINEがない時代からあったわけで、リスク回避手段を奪う理由にはならないと思います。
教育機関の皆様におかれましては、どうか今一度、ケータイ/スマホのルールについて、未経験のリスクから安全を確保するという観点での見直しをお願いしたいと思います。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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