Ryzen Threadripper 3970X/3960Xを超えられるのか?
100万円以上かけてXeon W-3175Xを空冷と水冷でOCした結果
2020年01月03日 12時00分更新
2019年1月31日、Intelがコンシューマー市場のHEDT向けに倍率ロックフリーのLGA3647ソケット対応CPUを投入した。28コア/56スレッドのモンスターCPU「Xeon W-3175X」だ。1ソケットで運用するワークステーション向けのXeonブランドはこれまでもあったが、データセンター向けがメインのLGA3647ソケットに対応したモデルがようやく現実的な価格(とはいえ、初値は約50万円と高価だったが……)で自作PC市場に降りてきた形となる。
その背景には長らく席捲してきたデスクトップPC市場において、AMDが無視できない存在になってきたことにほかならない。事実、2019年7月からの猛攻は凄まじいものがあり、自作PC市場に与えるインパクトはここ数年にない規模となった。これはおそらくIntelが描いた未来予測よりもさらに悪い結果だったのだろうと思う。Intel CPUの供給不足も手伝った形とは言え、7nm製造CPUの性能は優秀で、かつAMDの価格設定もうまく働き、Intel CPUの存在感はかつてないほど薄まってしまった。
しかし、ノートPC向けでは10nm製造CPU「Ice Lake」を発表し、来年はHPCからCPU内蔵GPUまでスケーリングすると言われているIntelの独自GPU「Xe」も予定。現在不足している14nm製造CPUへもかつてないほどの投資を実行している。誤解を恐れずに言えば、ここまでやりこめられてようやくIntelのケツに火が付いたのである。
確かに、PC向けCPUの売り上げだけでやっていけるほど、ここから先の半導体市場は甘くはない。しかし、AMDが現在の勢いを取り戻すまでは明らかにPC向けCPUへの投資が甘くなっていたように思える。来るべき、5GやIoT、AI市場も大切だが、ひとりの自作PCファンとしての意見を素直に述べさせてもらえば、「周回差をつけて勝っていたAMDに足元をすくわれているようでは、新ビジネスだって知れたもの。まずはPC向けCPUで最強の座を取り戻してほしい」だ。
と、前置きが長くなってしまったが、要は「Intel、2020年はもっと頑張れ」である。というわけで、本稿ではそんなIntelに対する筆者からのエールとして、現状14nm製造CPUの最高傑作である「Xeon W-3175X」をオーバークロック(以下、OC)して、AMDの最新HEDT向けCPU「第3世代Ryzen Threadripper」にどこまで対抗できるのかを紹介したいと思う。
なーんて、まあそれは建前で、約50万円で買ったXeon W-3175XがCINEBENCH R20のスコアーで、Ryzen Threadripper 3970X(25万7200円前後)や同3960X(18万1300円前後)に負けていたのが癪だった、というのが混じりっ気のない本音である。もっと端的に言えば、「50万円で買ったCPUが1年も経たずに性能で負けたとか、絶対受け入れらない」だ。
というわけで、本稿ではライバルであるRyzen Threadripper 3970X(以下、3970X)と、Ryzen Threadripper 3960X(以下、3960X)のCINEBENCH R20スコアーを1ptsでも上回ろうと躍起になった筆者の、激闘OC記録をお楽しみいただきたい。