高精度の削り出し技術によって、独自性のある使い勝手にできた
既存のノートPCから角の一部を落としただけなのだが、Specre x360 13は、これだけで今までのノートにない自由度をたくさん手に入れた。なぜほかのPCベンダーがやってこなかったのかと疑問に思うほどだ。
Tan氏 「この実現については最新の技術に注意を払い、取り入れていく必要があります。例えば同じプレミアムラインでも、ENVYはプレス加工なので、コストが安くできる反面、Spectre x360 13のCNC加工ほどの精度が出せません。今回、私はCNCに投資しようと決断しました。プレミアム・クラフトマンシップ・クオリティのためです」
また、CNCにしたことで、排気口などの加工精度もあげることができた。パッと見ただけでは分かりにくいが、底面から吸気してヒンジ部分の隙間から排気する仕様だ。これはラップトップスタイルでの使用時はもちろんだが、タブレットスタイルでの利用時では特に重要となるところで、こだわったポイントだという。
一方軽量化を実現する上で、マグネシウム合金やカーボンではなく、アルミ合金を採用した理由として、筐体第10世代のCore プロセッサーを搭載したことで上がる熱を効率よく放出することが理由であるとした。
Tan氏 「マグネシウム合金よりは重くなりますが、アルミ合金のほうが熱設計の面では有利です。なんですね。マシンのスペックが上がって発熱が増えると、熱を効率よく排出する必要がありますので、アルミニウムを採用しています。システム全体のパフォーマンスに配慮した結果ですね」
同じ画面サイズでも圧倒的に小さな筐体にできたわけ
そしてスペック面で注目を集めているのが、4Kの有機ELディスプレーを13インチクラスの製品ながら搭載可能な点だ。VESA規格のHDR TRUE BLACK認定にも対応、またBang&Olufsenスピーカーなども装備し、映像・音声のクオリティも期待できそうだ。ブルーライトカットによる長時間視聴に配慮したスペックも持つ。しかし、それ以上に注目したいのは、13型クラスでありながら、フットプリントが11インチクラスのノートと遜色ないレベルになっている点だ。なぜ、ここまで省サイズができたのか、聞いてみた。
Tan氏 「従来機種と比べてみましょう。いままでとの違いは主にベゼルです。特にカメラですね。次にアンテナ。最後に、ディスプレーを駆動するための基板が収納されているエリアとなりますね」
カメラについては発表会でも強調されていたポイントだ。2.2mmという赤外線カメラモジュールの高さは、驚くほど細い。またアンテナは上部からヒンジの少し上の部分に移動させている。とはいえ、ボトムケース側ではなく液晶ディスプレー側にあり、ほかのデジタル回路からの干渉や机からの電波の反射による悪影響は、最低限なくす仕様となっている。
というわけで、3辺が狭額縁できた理由は分かった。しかし基板サイズが半分になった理由は何だろう。
Tan氏 「いい点に気付きましたね。実は基板自体は同じ面積なのですが、2つに折りたたんで半分を後ろに回しています」
これにより画面比率90%、従来比約13%減の設置面積(フットプリント)を実現できたという。ターゲットとするデザインを考え、設計によってその課題をつぶしていく地道な努力と新しい発想の成果であることが理解できた。Tan氏によると「これこそがHPの独自性であり、ノウハウであり、技術であり、インテリジェンス」なのだという。米国にいるデザイン担当のステイシー氏と台湾の設計拠点にいるTan氏の間で常に議論が続けられている。