とにかく主役はビーフ、ごはんにも合う
まずはビーフですね。このビーフがいいんですよ。ちゃんとやわらかくて、でも歯ごたえはきちんと残っている、いい塩梅です。まさに“ビーフ”シチュー。「ビーフ」「ビーフ」ばかり言っていてどうなのかと思わなくもないものの、主役がおいしく調理されている点は、特筆してもしすぎることはありません。
とろとろした食感のビーフに、どっしりとした味わいのソース。コクが不足しているとか、味に深みがほしいとか、ぜいたくはいくらでも言えましょうけれど、800円以上でも納得するクオリティーには達していると思います。
ジャガイモとニンジンも、ゴロゴロとした食感でよいですね。火の通り加減も悪くない。ホクホクしていて、赤ワイン風のソースとよく合います。このソースは、たしかに「赤ワインを使って煮込んだような感じ」の味わいで、なかなかよくできています。ちょっと濃い目かな……とも感じますが、ジャガイモやニンジンを食べる分には、これぐらいの主張があったほうがよいかと。
そうそう、松屋の「シュクメルリ鍋定食」のときは、「シチューはごはんに合うか?」という、ネットでも論争を巻き起こすテーマに対して、ずいぶんと悩んだものです。やっぱりシチューにはパンが合うんじゃないかとか、どうせ白米と食べるならカレーとかハヤシライスとかを選ぶんじゃないのかとか。
しかしこのビーフシチューは、合います。赤ワイン風ソースが、ちゃんと白米に合うように作られています。ハッシュドビーフ感覚でいけるから大丈夫。ビーフシチューはごはんに合う。はい論破! 終了!
なお、みそ汁との相性に関しては、コメントすることがないです。U2の横に氷川きよしさんがいるようなもので、あまりにも別ジャンルすぎて、合う合わないを通り越して「なんで一緒なんだろう」と感じるのみ。
そもそもシチュー(stew)は汁物ではなくて、煮込み料理のことですから、和食でいえば肉じゃがのようなものです。そう考えれば、みそ汁がついてきたところで、何ひとつ不思議なことはない。まあ、必要かどうかと言われると疑問ですが。
ともかく、松屋のビーフシチューは、実にビーフシチューです。こんな言い方は愚か者みたいで見果てぬ夢に男はさまよい女はこがれるといった感じですが、「ビーフのシチュー、すなわち主役は肉である。よって、ごはんにも合う」ということを我々に啓蒙する味わいになっております。クリスマス時期の一人めし、ちょっとぜいたくにキメたいときにどうでしょう。
モーダル小嶋
1986年生まれ。担当分野は「なるべく広く」のオールドルーキー。編集部では若手ともベテランともいえない微妙な位置。
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