長野・八幡屋磯五郎に聞いた、名刺情報の共有効果と社内定着化に必要な努力
江戸中期創業、七味唐辛子の老舗が名刺管理を「Eight」でデジタル化
2019年11月22日 08時00分更新
「八幡屋礒五郎(やわたやいそごろう)」という社名を聞いて、皆さんは扱っている製品が思い浮かぶだろうか。もし社名を聞いてわからなくても、多くの人は製品パッケージのブリキ缶をひと目見れば「あ、知ってる」となること請け合いだ。
八幡屋礒五郎は、1736年(元文元年)に創業し、七味唐辛子を専門に作り続けてきた企業だ。元文といえば桜町天皇の時代で、江戸幕府第10代将軍徳川家治が生まれている。そんな時代に、初代室賀勘右衛門は長野の善光寺で七味唐辛子を売り出した。本名は勘右衛門だが、商売では礒五郎を名乗り、そこから「八幡屋礒五郎」という屋号が生まれたという。
創業から280年以上が経った現在、八幡屋礒五郎は室賀豊社長が9代目となり、急速にビジネスを拡大している。ただし、歴史のある企業にありがちな話だが、同社では取引先と交換した名刺はそれぞれの社員が「紙で」管理していた。こうした長年の慣習の非効率さに気付いた社長が改善を命令し、現在ではSansanが提供する「Eight 企業向けプレミアム」を導入して、各社員の名刺を一括管理するようになっている。
今回はこの企業向けEight導入にまつわるエピソードを、八幡屋礒五郎の常務取締役を務める室賀ゆう貴氏(以下、室賀氏と記す)にうかがった。
「名刺を見つけるのに5分かかる」非効率さからの脱却を目指す
八幡屋礒五郎には現在、100人を超える従業員がおり、昨年の売上はおよそ13億円。長野市柳町にある本社と工場のほか、善光寺の門前に本店とカフェ、長野駅の直営店、そして上水内郡飯綱町に工場と農園などを展開している。
ビジネスの拡大に伴って、営業部員は日々外回りに忙しく、全国各地の駅やデパートでの催事に出店することもある。最近では製品の海外展開も進めており、室賀貴氏を筆頭に海外出張する社員も増えた。そんな中で困っていたのが「名刺の管理」だった。
たとえば、出張している社長が本社の営業部員に名刺を渡して営業に向かわせたいとしても、会社に戻るまで対応できない。どうしても必要な場合は会社に電話をして、名刺を探してもらうことになる。電話をするのも手間だし、電話を受けた人も、それまでの業務の手を止めて名刺を探し、指示された人に渡さなければならない。そして、この作業には何の生産性もない。
米国など、時差の大きな地域に出張している場合はさらに困ることになる。名刺に書かれた連絡先の情報が必要だったとしても、現地時間の昼間には日本の本社には人がいないこともある。室賀氏自身もしばしば、必要な時に名刺情報にアクセスできないという体験をしていたという。
また、個々の社員がそれぞれのやり方で名刺を管理していたため、ほかの社員が名刺を探し出すのにも時間がかかった。名刺を見つけるのに5分以上かかることがざらで、翌日になってやっと見つかるというケースもあった。社員の中には、名刺を探しやすいようにカテゴリーごとにファイリングし、完璧に分類している人もいたが、そのファイリング作業に費やされた生産性のない時間は、経営者としては想像したくないところだ。
近年では「LINE」で社員どうしのコミュニケーションを行う機会も増えているが、そこに名刺情報を流して共有するわけにもいかない。そんな悩みを抱えていた2年前のある日、室賀氏は社長から名刺の共有ツールを探すように指示された。社長や各部長、営業部員などの持つ名刺を集め、情報共有できるようにしようというわけだ。
「9代目(社長)はもともと個人向けの名刺アプリ『Eight』を利用していたのですが、あくまでも個人向けアプリなので、社内での情報共有に使うには課題がありました。そこで、まずはEight以外のツールを探し始めたのですが、われわれのような小規模の、20人未満の社員で使うにはコストが高すぎる製品ばかりでした。どうすべきか悩んでいたところに、『Eight 企業向けプレミアム』が発表されました。社長がすでに使っているものをそのまま法人利用できるならいいよね、とすぐに導入しました。もちろん、コストが安かったのも決め手です」(室賀ゆう貴氏)