「Dell Technologies On Demand」提供の狙い、Dell Financial Serviceの担当幹部に聞く
Dell Technologiesは従量課金サービスでクラウドに近づけるのか?
2019年11月20日 07時00分更新
Dell Technologiesが11月12日、最新のコンバージドインフラ「Dell EMC PowerOne」と共に発表した新しい購買モデル「Dell Technologies On Demand」。Dellと合併する前のEMCがストレージ製品で提供していた「Flex on Demand」を、サーバーなど他の製品でも提供するというものだ。“使った分だけ支払う”従量課金型モデルで、オンプレミスのインフラ製品調達がよりパブリッククラウドに近づくことになる。
顧客のメリットは何か、そしてDell Technologiesの狙いとは? ――発表の場となった「Dell Technologies Summit 2019」の会場で、Dell Financial Services(DFS)バイスプレジデントのダレン・フェドロヴィチ氏に話を聞いた。
――「Dell Technologies On Demand」を展開する狙いは何ですか?
フェドロヴィチ氏:顧客企業では現在、データの爆発とともに、さまざまなトランスフォーメーションが起こっている。インフラ、アプリ、どのように人が仕事をしているかのワークプレイス、セキュリティなど、すべてが変化し始めている。だが、あまり語られていない変化もある。「顧客がどのようにテクノロジーを消費するのか」という部分だ。
テクノロジー業界は現在、ハイブリッドクラウド環境の提供にフォーカスを移しつつある。顧客が必要としているのはパブリッククラウド、プライベートクラウドの「どちらか」ではない。マイケル(・デル氏)も述べているように、クラウドとは場所ではなく「オペレーションモデル」であり、クラウドのようなIT環境を「どのように」提供するのかが重要なのだ。
われわれはEMC時代に「Flex on Demand」というかたちで従量課金モデルを提供していた。今回はその対象製品を「Dell EMC PowerEdge」サーバーなどにも拡大する。今回発表した、最新のコンバージドインフラ「Dell EMC PowerOne」でも利用可能だ。
Dell Technologies on Demandは、ある一定量にコミットしてその金額を毎月支払い(ベースとなる定額使用料部分)、さらにリソース使用量が一定量を超えるとその分を追加で支払うかたちとなる。これにより、毎月の使用量に応じた支払額となる。ストレージ製品ではコミットの設定が40~80%だったが、サーバー製品の場合は70~80%になる。
――Dell Technologies On Demandはどのような顧客に適しているのですか?
フェドロヴィチ氏:Flex On Demandは10年以上前から提供してきたが、特定の業種セグメントではなく、大手からスタートアップまで幅広い企業が利用している。どこか特定の企業層というわけではなく、「どのような用途で使うのか」との関連が強いだろう。
従量課金といっても、単一のモデルで顧客ニーズをカバーするのは難しい。そこでFlex on Demandに加えて、成長を予測して支払う「Pay As You Grow」、サーバーやストレージなどインフラ全体をユーティリティとして利用できる「Datacenter Utility」という、合わせて3タイプのコンサンプションソリューションを提供する。
――将来的に、どのくらいの割合の顧客が従量課金モデルを選択すると予想していますか?
フェドロヴィチ氏:まず、DFSのビジネスは73億ドルに達しており、全体の資産管理は100億ドル規模となっている。実に大きなビジネスだ。Dell Technologiesは「支払い」という面で、顧客に選択肢と柔軟性を提供したいと考えてきた。最初に支払いたいのであればそれでいいし、オンデマンドで支払いたいならばそれにも対応できる。
ガートナーでは“クラウドライクな経済”への移行を予測しており、将来的にはオンデマンドでの支払いニーズが高まるだろう。Dell Technologies On Demandはそうした動きを見越したもので、すでにあるビジネスをプログラムとして体系化し、顧客ニーズに応えようとしている。
――選択肢が増える、消費モデルが柔軟になるという点以外で、何かメリットはありますか?
フェドロヴィチ氏:Dell Technologies On Demandにおいては、われわれが顧客のインフラリソース使用量を計測し、詳細なレポートを提供する。分単位での計測も可能なこのレポートは、これまでCIOやCFOが抱えてきた「IT予算のプランニング」という課題の解決を支援できるだろう。
ITは社内にも社外にもユーザーを抱え、多国籍企業になると地域もまたいで使われている。そのためCIOやCFOは、それぞれの事業部がどの程度ITリソースを使っているのかを正確に知りたいと考えている。実際に、CIOが参加したパネルでは多くの参加者から「ITリソースの使用量を詳細に知りたい、透明性がほしい」といった声が上がった。予算に制約がある中で投資を効率化したいからだ。
90%のCIO、CFOが予算の制約に悩んでいるが、その一方でデータの爆発(増大)とデータ活用のニーズには対応しなければならない。そこでIT使用量の正確かつ詳細なレポートがあれば、予算管理がしやすくなる。
――Dell Technologies On Demandは、オンプレミスのインフラを“IaaS風”に消費できるソリューションですが、パブリッククラウドのIaaSには「常に最新技術が使える」というメリットもあります。その点はどう考えますか。
フェドロヴィチ氏:まず、パブリッククラウドサービスプロバイダーのほとんどが、サーバーやストレージ、またVMwareの仮想化環境など、Dell Technologiesの技術を採用している。つまり、パブリッククラウドが提供する最新技術のほとんどが、われわれの提供する技術だと言える。
次に、Dell Technologies On Demandでハードウェアを使用している顧客は、ハードウェアが進化して最新版が登場した場合に、新しいハードウェアに乗り換えることも可能だ。その際は、われわれのコンサルティングチームとともに既存の契約を見直して、最新技術が利用できるよう調整する。
ストレージ製品でFlex on Demandを提供していたころから、単一の契約でも最新技術を利用可能にすることは実現していた。われわれはすでに従量課金モデルのノウハウを蓄積しており、これは競合優位性になるだろう。