ドローン時代に必要な「風況観測」をNTTの鉄塔で実現
NTT OPEN INNOVATION DAYレポート
NTTコミュニケーションズと造る
未来のコミュニケーション
NTTコミュニケーションズが大手町プレイスで開催した「NTT OPEN INNOVATION DAY」は、「未来のコミュニケーションを、共に考える一日」と銘打った、成果発表会兼ピッチイベント。
同社では、「NTT Communications OPEN INNOVATION」として、4つのテーマについて6パートナーと共に、事業化を見据えたアイデア創出や、実証実験に2019年4月から取り組んできた。
プラグラムにおいては、オープンイノベーションプラットフォーム「eiicon」を運営するeiicon companyと協業。社外の企業からアイデアや技術を募り、NTTコミュニケーションズが保有するサービス、技術、インフラ、データ、スポーツチームなどの豊富なリソースを活用した、新たな価値を共創するオープンイノベーションプログラムとして実施してきた。
本記事では、6社のパートナー企業によるピッチの模様をお届けする。
鉄塔で街おこし
株式会社フーモア
株式会社フーモアのピッチからスタート。同社はアプリを通じて、NTTコミュニケーションズの保有する「鉄塔」を用いたビジネスの創出を目指す。
同社によれば、鉄塔が通信で使われることが減っている背景があるそう。新しい役割を持たせられないかと考えたことから、プロジェクトがスタートしたという。
プロジェクトのスタート時にアンケートを実施したところ、「認識率は高いが、興味を持っている人は少ない」という結果になった。そこで同社が考えたのは、「インタラクティブストーリー」を用いた鉄塔の再利用。
インタラクティブストーリーは、ユーザーの選択によってストーリーの変化するコンテンツ。同社では、小説家で脚本家の藤咲 淳一氏にストーリー制作を依頼。合わせて、廃墟イラストで人気を集める東京幻想にイラスト制作を頼んだ。
現在は横浜市と協業の上、横浜を舞台としたコンテンツを制作しているという。来春にはアプリの配信もスタートする予定だ。
風況を把握するソリューション
メトロウェザー株式会社
メトロウェザー株式会社も、鉄塔を利用したソリューションを発表した。
同社では、大気中の微粒子の動きを検知し、風向きや風速を測定する「高性能ドップラー・ライダー」を開発。この機器を鉄塔に設置し、3Dの風況マップを作成し、ソリューションとして提供することを目指す。このソリューションを活用することで、ドローンを飛ばす際の障害となっている突風や乱気流を回避し、最適な航路の剪定が可能になるとする。
現在は、兵庫県の六甲山の鉄塔に機器を設置し、実証実験を進めている。ドローンは今後、物流などの分野でもさらに発展することが見込まれている。ドローン時代の重要インフラになる可能性のあるソリューションだ。
VR空間を活用した省人化
YouVR Inc.
YouVR Inc.は、AIを活用した映像処理技術で、室内空間を地図やストリートビューとして作成できるソリューションを開発している。
現在は、省人化による30%のコスト削減を目指し、NTTグループ内の施設で実証実験を進めている。将来的には、無人運営のデータセンターの構築を目指すとしており、さらにデータセンター以外業態にも幅を広げていきたいとする。
データでスポーツ支援
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科によるピッチ。
同科では、ウェアラブルデバイスの普及によって、スポーツにおけるデータの取得は誰でも可能になっている一方で、分析や活用はできていないケースが多いことを指摘。
そこで、NTTコミュニケーションズのラグビーグラウンドで、スポーツにかかわる人物を対象に、実証実験を実施。選手たちのウェアラブルデバイスから取得したデータを集積し、分析。このデータをもとに選手たちと話し合い、「ファシリテーション(合意形成や相互理解をサポートし、組織の活性化を図る)」の重要性に考え至ったとした。
今後は、この「ファシリテーション」をキーワードに、データを活用したスポーツチームのコンサルティング、またそれを専門にするファシリテーターの育成に取り組むとした。
株式会社構造計画研究所
リモートロックで物理鍵をなくす
株式会社構造計画研究所は、「RemoteLOCK」の名称でスマートロックを展開中。
このRemoteLOCKを活用し、データセンターの物理鍵をなくすという取り組みを紹介した。NTTコミュニケーションズの保有するAIを認証に利用。顔認証や姿勢の認証を組み合わせ、高度なセキュリティーを維持しながら、キーレス化を実現できることを説明した。
データセンターでは、部外者の進入が許されないという特性上、鍵の管理に膨大な時間を要しているケースが多いという。同社では、データセンターのほか、商業ビルや保育園、福祉施設といった、高いセキュリティーが求められる業種へも進出したいとした。
東京ロボティクス株式会社
遠隔作業をロボットで実現
東京ロボティクス株式会社は、「テレイグジスタンス」技術を活用したソリューションを紹介。
テレイグジスタンスとは、遠隔地にあるものを近くにあるように知覚しながら、作業、操作がリアルタイムでできる体系を指す。この実現には、通信、VR、ロボティクス(ロボット工学)が不可欠だと解説。
NTTコミュニケーションズの通信、VRと、東京ロボティクス株式会社のロボティクスを組み合わせることで、テレイグジスタンスが事業化できることをアピールした。
現在は、技術的な実現を目指しつつ、同時にクライアントを探しているという。その過程でヒアリングを進める中で、化学プラントや原子力関連事業など、危険を伴う可能性のある作業には大きな需要があることも判明したとする。
メトロウェザーがダブル受賞!
続いては審査結果を紹介。
審査員としては、内閣府 政策統括官 イノベーション創出環境担当 企画官の石井 芳明氏、合同会社ユーグレナSMBC日興リバネスキャピタル リアルテックファンド 業務執行役グロースマネージャー 室賀 文治氏、株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ 代表取締役社長 稲川 尚之氏、NTTコミュニケーションズ株式会社 代表取締役副社長 丸岡 亨氏、パーソルイノベーション株式会社 eiicon company 代表 founder 中村亜由子氏が参加。
「最優秀賞」と「審査員特別賞」に加え、来場者の投票による「オーディエンス賞」も用意された。
オーディエンス賞はメトロウェザー株式会社、審査員特別賞は、メトロウェザー株式会社、東京ロボティクス株式会社の2チームが同時受賞、最優秀賞はYouVR Inc.が受賞した。以下には、受賞者のコメントを紹介する。
「苦しいこともたくさんありますが、世の中にある課題を解決するのが大きな使命だと思っています。リアルと夢をつなげていきたいです」(メトロウェザー株式会社)。
「素晴らしい賞をありがとうございます。正直なところ、自分たちでも最高峰のロボット技術を持っていると思っているので、すごいことができるんじゃないかと考えています。自分たちもこれから1年後、2年後、どんなものができるかワクワクしています」(東京ロボティクス株式会社)。
「優勝すると思っていなかったので、ドキドキしていますが嬉しいです。自分にとって必要で、周りの皆さんに喜んでもらえるものをより広く広めていきたいなと思っています」(YouVR Inc.)。