金融の信用リスク評価が89%で維持
富士通研究所が開発した新たな技術は、精度の劣化を抑え、再学習などのコストを削減しながら、AIモデルの安定運用を可能にするのが特徴だ。
ここでは、AIモデルを学習する際に用いる学習データの分布と、運用時の入力データの分布を「形状」としてとらえ、学習時から運用時へのデータの変化の傾向を把握することで、運用時の入力データに対する正解付けを自動的に実施できるようになるという。
精度劣化の自動監視機能によって、劣化予測誤差は3%に留まり、精度劣化の自動修復によって、金融分野の信用リスク評価の場合には、69%の精度劣化を89%で維持。AIモデルを高い精度で長期間維持し、さまざまな業務において安定したAI運用を実現できるとした。
信用リスク評価以外にも成果があがっており、小売業においては季節性やイベントなどにともなう商品デザインの変更によって、商品画像分類の精度が66%まで劣化するのを、自動修復によって94%を維持。運送業では伝票入力形式の変更による文字体の変化による伝票文字認識が、そのままでは82%にまで精度が劣化するものが、自動修復によって92%を維持したという。
「これは、新たなAI運用を実現する画期的なものであり、現在、さまざまな分野で検証を行なっている。2020年度中には、富士通の目的指向型プロセスとフレームワークである『Design the Trusted Future by Data×AI』に組み込んで実用化を目指す」(富士通研究所 人工知能研究所の岡本青史所長)という。
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