Easy-Switchによるキーボード切り替えやFLOWなども継承
PCとの接続はBluetooth Low Energyにより直接つなぐ方法、または2.4GHz帯デジタル無線接続のUSBドングル「Unifying」が使える。Logitechでは操作レスポンスのスピード、精度ともに安定するUnifyingによる接続を推奨している。
Logitech独自のEasy-Switchにより、最大3台のパソコンなど対応デバイスと同時にペアリングして、本体底面の専用ボタンを押して3つのチャンネルを切り替えながら使える。本機と同時にペアリングして使えるPCは1台までになる。
Logitechの先進的なソフトウェア技術により実現した機能「FLOW」はMX MASTERシリーズのマウスの真骨頂だ。同時に立ち上がっている最大3台までのパソコンに1台のMX MASTERシリーズのマウスを接続して、マシン間を横断しながらカーソルを移動させたり、パソコンからパソコンへテキスト、画像などファイルのコピーや貼り付けもできる。デュアルディスプレイならぬ、デュアル/トリプルのPC間同時接続とファイル操作ができるイメージだ。
FLOWのセットアップは各PCに専用アプリケーションのLogicool Optionsをインストール後、各々を同じWi-Fiルーターを中心としたホームネットワークに接続する。アプリケーションのセットアップが完了したら、あとはマウスカーソルをディスプレイの枠外に持ってくると、あたかも1台のPCの画面上でファイルをグラブ移動するような感覚で、隣のPCにファイルデータが移せる。
スクロースホイールを大幅に改良、磁力制御でトルク感を調節
最新のMX MASTER 3ではマウスポインターのセンサー方式が不可視レーザーから赤外線に変更されている。理由についてエメス氏は「レーザーよりも消費電力が低く長時間駆動ができることと、内部に組み込んだ後にモジュールの故障が発生しにくい堅牢性の高さなどメリットを考慮したため」であるとしている。
エメス氏はMX MASTER 3の開発を始める際にユーザーのレビューやアンケートをくまなくチェックして必要な機能の取捨選択をしてきたと述べている。「マウスは気に入ったものを数年以上使い込むユーザーが多くいる。皆様のためにMXシリーズとして、大事な機能を選びながら大きくステップアップすることを新製品の開発目標としてきた」とエメス氏が振り返っている。
特にMXシリーズのユーザーがスクロールホイールの使い勝手に高い満足度を示していることが様々なアンケートから判明したことから、エメス氏は今回、メインの「MagSpeedホイール」のスクロールに大胆な改良の手を加えたことを明かした。その変化は「ディーゼル車から電気自動車にいきなりステップアップするほど」のレベルに匹敵すると胸を張って詳細を語った。
MX MASTER 2Sから、長い文書やウェブページを閲覧する際のタテスクロールを高速移動できる「スピードシフト」と、精緻なスクロール動作に適した「クリック・トゥ・クリック」のふたつのモードが搭載されていた。最新のMX MASTER 3ではスピードシフトの加速性能と、クリック・トゥ・クリックの精度をともに高めただけでなく、より静かで快適な操作感が実現されている。
進化の革新にあるのはスクロールホイールの素材とその構造が大きく変わったことだ。MX MASTER 3ではスクロールホイールの基幹部分に2つの大きなマグネットコイルを搭載している。電流を流した時に発生する磁界を変化させて正極負極をスイッチ。磁力の吸引・反発を素速く正確にコントロールする。ホイールを回した時に指先に返ってくるトルク感(タプティクス)を再現するために、従来モデルではメカニカルな歯車による触感を利用していた。MX MASTER 3では「磁力」を制御しながら独特な触感を引き出していることが大きく異なる。
ホイールを低速で回転させているクリック・トゥ・クリックモードの時には歯車同士の間に磁石が引き合う力により歯車を近づけて、カチカチとした触感を指先にフィードバックする。反対にホイールを強くスピンさせると、マウス本体に内蔵する加速度センサーがホイールの動きを検知して高速スクロールモードへ自動的に切り替える。磁力を反発させて歯車の距離を離してホイールの高速回転を可能にする。
スクロールホイールは全12点のパーツにより構成されている。最新のMX MASTER 3では、スクロールホイールのメイン素材をMX MASTER 2Sのアルミニウムから、より比重の大きなステンレススチールの削り出し素材に変えている。慣性ムーブメントの力を活かしながら、指でホイールを回す力を極力抑えながら高速スクロールを可能にする。ロジクールの標準的なマウス製品と比較してスクロールスピードを約90%も向上。PCのOSに送り出す信号の精度も約87%アップした。エメス氏の説明によるとモジュールの設計と開発はすべてLogitechのスイスの拠点で行われているそうだ。
歯車同士は直接触れ合うことがなく、磁界のコントロールにより触感の違いを生み出しているため、パーツの磨耗や劣化が最小限に抑えられる。エメス氏は「長く使っても壊れにくいだけでなく、回転させた時に発生するノイズを低く抑えた静音設計が可能」であるとエメス氏が構造の特徴を説いている。
各モードの切り替えは加速度センサーがスクロールが回る速度を検知して、自動的に切り替える「スマートシフト」をMX MASTER 2Sと同様に実現している。加速度センサーが反応するスマートシフトの“しきい値”は専用アプリケーションから任意の設定にカスタマイズできる。
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