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日本MSが製造業のDXに向けた支援策を説明、リファレンスアーキテクチャから知財保護まで

THK、コネクテッドサービス基盤「Omni THK」で日本MS、NWSと連携

2019年09月11日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 大手機械部品メーカーのTHKは2019年9月10日、顧客企業とのWebコミュニケーションプラットフォーム「Omni THK」の開発と提供において、日本システムウエア(NSW)および日本マイクロソフト(日本MS)と連携することを発表した。Omni THKは「短納期品の在庫検索」や「迅速な見積もり依頼」「設計図面の管理とAI画像分析」「需要予測と生産計画、部品供給の最適化」といったアプリケーションを提供するWebサービスで、今年7月から本格展開を開始している。

THKが顧客企業向けに提供する「Omni THK」において、日本システムウェアおよび日本マイクロソフトが連携する

 同日には日本マイクロソフトが記者説明会を実施し、「Microsoft Azure」のIoT/AIソリューションやリファレンスアーキテクチャなど、同社が注力インダストリーのひとつに掲げる製造業向けの幅広いデジタルトランスフォーメーション(DX)支援策について、あらためて説明した。またTHKもゲスト出席し、Omni THKの概要と狙い、NSWと日本マイクロソフトそれぞれの位置付けについて説明した。

日本マイクロソフト 執行役員 常務 エンタープライズ事業本部のヘニー・ローブシャー氏ゲスト出席したTHK 取締役 専務執行役員の寺町崇史氏

商談プロセスを“非対面化”し効率化、さらにデータ活用も促す「Omni THK」

 THKの寺町氏は、機械部品メーカーとして顧客や販売代理店向けにデジタルなサービスを提供する理由や狙いについて説明した。

 THKは機械要素部品の大手メーカーであり、中でも世界シェア50%を占めるLMガイド(Linear Motion Guite:直線運動案内部品)は、製造業の顧客企業が搬送用ロボットや射出成形機、自動包装機などを構築/設置する際に使われるほか、メーカー製工作機械などにも組み込まれ出荷されている。つまりTHK自身も、同社の直接/間接的な顧客企業の多くも製造業である。

 寺町氏はまず、現在の製造業では「製品開発期間の短縮」「需要変動への柔軟な対応」「労働人口減少に対応するための自動化」など、生産性向上が急務の課題になっていると語る。他方でDXや“Industry 4.0”実現に向けた取り組みが世界的なトレンドであり、企業間も含むデータ連携と活用が求められている。

 しかしながら、THKと顧客の間の商談プロセスはこれまで対面業務が中心であり、効率の良いものではなかった。そこでこの商談プロセスを“非対面化”し、さらにはデータ活用も進めることで、双方での効率化と自動化を実現するためのプラットフォームとしてOmni THKを提供することとした。

これまで対面で行われてきた商談プロセスを“非対面化”する

 具体的には、生産状況や在庫状況、価格や製品カタログ、図面といったデータベースを統合的に扱えるプラットフォームを構築し、このプラットフォーム上で個々の顧客ニーズに対応するアプリケーションを開発していく。寺町氏は、現時点ですでに提供を開始している4つのアプリケーションを紹介した。

Omni THKのシステム構成。IoTやAIのテクノロジーも組み合わせ、今後さらにアプリケーションを拡充していく

 「Fast Derivery」は、THKの提供する多数の製品群から「短納期品」を選定し、在庫検索できるアプリケーションだ。価格や納期を確認してその場で注文できるほか、製品のCADデータ(図面)やカタログも入手できる。セミオーダー品も選定可能。

 「Orders」は、顧客企業側の購買システムとTHKの基幹システムを連携させ、購買システム上での見積もり依頼や見積書取得、発注申請に必要な書類の取得までをワンストップで実現する。

 「Your Catalog」は、大量の機械設計図面を一元管理し、AI画像解析やメタデータに基づくタグ付けによって、さまざまな条件での検索を容易に実現する。図面から類似仕様の部品を見つけ出し、共通部品化を検討するうえでも役立つ。

 「Forcast」は、顧客企業における需要予測と生産計画、さらにTHK部品の供給予定時期や数量を一括管理し、フォーキャスト情報を可視化する。これにより生産計画に合わせた在庫管理を可能とし、THK側では過不足のない部品供給でサポートする。

Omni THKで提供するアプリケーションのイメージ(紹介ビデオより、Fast DeriveryとForcast)

 なお今回の3社連携においては、THKがサービスの企画開発を手がけるOmni THKを、NSWが継続的なアプリケーション開発で、また日本マイクロソフトがAzureの提供および技術支援でそれぞれサポートする。

 Omni THKのクラウド基盤にAzureを選択した理由について、寺町氏は、もともとNSWと日本マイクロソフトの関係が強固だったこと、顧客データを預けるうえでセキュアさが担保されていること、グローバル展開を前提としたサービスであること、の3点を挙げた。

 なおTHKでは昨年(2018年)10月にIoT技術を活用した部品障害予兆検知サービス「OMNIedge」を発表したが、このOMNIedgeもMicrosoft Azureベースで構築している(商用リリースは来年初頭の予定)。今後はOmni THKとのデータ連携/サービス連携も視野に入れた、統合的なサービス拡充を図っていくとしている。

製造業のテーマは「コネクテッドな製品/サービス/販売」「未来の工場」

 日本マイクロソフトでは、製造業および資源業界(マニュファクチャリング&リソース)向けの組織を編成して、さまざまな側面から顧客企業の支援を行っている。説明会ではその取り組みにおける現在のテーマや施策をあらためて紹介した。

日本マイクロソフト エンタープライズ事業本部 製造営業統括本部 インダストリ-マ-ケティングマネ-ジャ-の鈴木靖隆氏日本マイクロソフト 業務執行役員 政策渉外・法務本部 副本部長/弁護士の舟山聡氏s

 日本マイクロソフト 執行役員 常務 エンタープライズ事業本部のヘニー・ローブシャー氏は、日本の社会変革に貢献することを目的に同社が掲げる「Vision 2020」においては、インダストリーにおけるイノベーションの推進もひとつの大きな柱であり、7つの業界(自動車/製造業&資源/金融/ゲーミング/メディア&通信/流通&消費財/運輸&サービス)のそれぞれにおいて「どうすればデジタルテクノロジーが利用可能になり、企業をエンパワーメントできるのか、われわれは明確な視点を持っている」と語る。

 製造&資源業界におけるマイクロソフトの取り組みについて、同社 製造営業統括本部 インダストリ-マ-ケティングマネ-ジャ-の鈴木靖隆氏は、今年度は7つのテーマにフォーカスして展開していると説明した。業界を問わず推進しているテーマ「働き方改革」「持続可能性」を除き、製造業&資源業界向けとしては大きく5つのテーマとなる。

 このうち「コネクテッド製品」や「コネクテッドフィールドサービス」「コネクテッドセールス」といった“Product-as-a-Service”関連のテーマは、今回発表のOmni THKがまさにその一例だと鈴木氏は説明した。製品が接続性を持ち“つながる”ようになることで、メーカーが提供する価値も“モノからコトへ”と大きく変わる。「ここには大きなビジネス機会がある」とローブシャー氏は語る。

 また「未来の工場」のテーマにおいては、AIがック見込まれたインテリジェントなシステムによって製品品質の向上や安全性の向上といった価値が生まれる。もうひとつ「インテリジェントサプライチェーン」では、クラウドプラットフォームでデータを収集し、AIを適用することで需要予測などを実現、それによってスマートで効率的なサプライチェーン管理ができるだろうと、ローブシャー氏は述べた。

製造業分野でフォーカスするテーマと、具体的なデジタルテクノロジーの適用シナリオ

 さらに今後の取り組みとして鈴木氏は、製造業向けのリファレンスアーキテクチャを段階的に投入していくことを紹介した。これは具体的な「業務シナリオ」を軸として、機能要件をまとめた「ファンクションマップ」、システムアーキテクチャに落とし込んだ「アーキテクチャマップ」、具体的な製品/サービススタックでのサンプル実装である「パイロットインプリメント」の3点セットになるという。

 「これまでのマイクロソフトでは、どうしてもテクノロジー寄りの説明が多く、どういう業務に適用できるのかがわかりづらい部分があったと思う。そこであらためて特定の業務にフォーカスし、その業務ではどういう機能が必要になるのか、その機能をマイクロソフトやパートナーが提供するテクノロジーでどのように構成できるのかを表現し、提供していく」(鈴木氏)

 なおその第一弾として、コネクテッドフィールドサービスのリファレンスアーキテクチャを提供することも明らかにされた。これは顧客先に納品したコネクテッド製品に対し、IoTやAIのテクノロジーを適用して、予兆保全サービスやプロアクティブな部品交換発注、さらに取得したデータによる製品設計の改善などを実現するものになる。

業務シナリオを軸としたリファレンスアーキテクチャを製造業向けに提供
第一弾として「コネクテッドフィールドサービス」のリファレンスアーキテクチャを投入

知財保護やコンプライアンス対応の側面でも顧客企業を支援

 加えて、同社 業務執行役員 政策渉外・法務本部 副本部長で弁護士の舟山聡氏が、知的財産(知財)の保護やコンプライアンス対応といった側面におけるマイクロソフトの支援策を紹介した。

 ひとつは書籍「コンピューティングが作る未来:AIと製造業」の発刊だ。製造業におけるDXの可能性や顧客企業におけるDX事例ストーリーをまとめた書籍だが、それだけではなく、法規制などにかかわる内容も紹介されている。

 「新しいテクノロジーには新しい法規制が必要だという内容、またAI開発における倫理原則なども紹介している。技術者以外の方にも読みやすい内容であり、製造業のみならず、政策や法規制にかかわる方も読者対象と考えている」(舟山氏)

 また実践的な情報提供として、今年6月には業界別の法令・コンプライアンス対応ガイドブックもリリースしている。DX推進にあたって考慮すべき項目(たとえばデータセキュリティやプライバシー、クラウド事業者との将来にわたる事業競合の可能性、輸出管理と技術情報のコンプライアンス対応など)、そしてDX推進における法務/コンプライアンス担当部門の役割などを記している。

 舟山氏はもうひとつ、今年3月に顧客企業の知財保護を目的としたプログラム「Azure IP Advantage(AIPA)」の対象規模を拡大したことを紹介した。具体的には、Azureに接続された顧客のIoTデバイス(Windows 10 IoTやAzure Sphereを利用するデバイス)にも知財リスクに対する保護範囲を拡大している。さらにスタートアップに対して、いわゆるパテントトロール(NPE:特許非実施主体)からの保護対策や、マイクロソフトが保有する特許の利用許諾といった施策も用意していると説明した。

今年3月から「Azure IP Advantage(AIPA)」の対象範囲がIoTデバイスに拡大されたことも紹介した

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