このページの本文へ

今のマイクロソフトを「あらためて伝える」、Family Days 2019

家族と楽しむだけではない、2019年のファミリーデーで見えたマイクロソフトの変化

2019年08月28日 16時00分更新

文● 三浦優子 編集 ● 羽野/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 日本マイクロソフトは2019年8月19日、社員の家族やパートナーをオフィスに招待する「Microsoft Family Day 2019」を開催した。8月いっぱいで社長を退任し、米本社への転籍が決まっている平野拓也氏が日本法人の社員家族と触れ合う最後の機会となった。また、例年のFamily Dayとは異なる部分から、品川オフィスの新しい方向性を垣間見ることができた。

1階がFamily Day参加者のための登録場所に

参加者が揃って写真を撮ることができるコーナー

あらためて“今の日本マイクロソフト”を伝える

 2019年のFamily Dayには、午前の部、午後の部あわせ490家族、1646人が参加した。子供達を連れて参加するだけでなく、両親、祖父母、配偶者など、幅広い年齢の参加者が集まる。今年ですでに8回目の開催となるが、すっかり定着しているようだ。「東京以外のオフィスでも開催して欲しい」という声があったことから、東京に次ぐ規模の関西支社でも同様のFamily Dayを開催する予定もあるという。

 Family Dayの基本は、参加する家族が楽しむことだが、今年は例年と展示内容に若干の違いがあった。

 家族をオフィスに招待するという基本は変わらないので、子供達や家族が楽しめるイベントは多数用意されている。例えば通常は立ち入ることができない執務エリアのマーケティング&オペレーションズエリアでは、執行役員常務の岡玄樹氏主導で、お菓子やおもちゃがもらえる宝探しゲームが開催されていた。初心者から経験者まで、マインクラフトを使ったプログラミングを学ぶセッションが複数あり、ゲーム感覚で楽しそうにプログラミングを体験する子供達の姿もあった。

マーケティング&オペレーションズが利用する26階フロアの一部で行われていたのは、マーケティング&オペレーションズ部門担当の執行役員常務 岡玄樹氏企画の宝探しゲーム。

ガチャに入っている地図をヒントに宝探しを行う。豪華な賞品が用意され、子供達から歓声があがったものの、「ちょっと難しすぎる」という声も。

 こうしたプログラムだけでなく、今回はこれまでにはなかった「現在の日本マイクロソフトを伝える」という要素が加わっていた。

 その方向性が最も端的にあらわれていたのが、「ネットニュースで話題 日本マイクロソフトの『働き方改革』って何ですか?」というプログラムだ。同社は今年、8月に週休3日を実施している。その狙いについて、コーポレートコミュニケーション本部の岡部一志本部長が説明した。

 岡部氏はあらためて社員の家族向けに話しをした狙いを、「新しい取り組みを、社員はもちろん、家族の皆さんにもきちんと理解していただきたいと考えた」という。確かに週休3日のインパクトは大きかった。だが、週休3日になっても仕事量は変わらないわけで、どう仕事を進めるのか?休みとなった時間を使ってどう過ごすのか、日本マイクロソフトの社員の皆さんにとっては、新しい課題が与えられたということかもしれない。

 ちなみに、Family Dayの翌日、日本マイクロソフトでは「新年度経営方針説明会」が開催された。岡部氏が所属するコーポレートコミュニケーション本部は、そのための準備に追われており、Family Day当日も作業に追われていたようだ。そんな中でも社員とその家族に、「日本マイクロソフトの働き方改革」については、改めて伝える必要があったということだろう。

大きな話題となった8月に実施した「週休3日」はどんな狙いで行われたものだったのかを説明するセッションも

社内の部署間での相互理解にもFamily Daysが役立つ

 他の展示でも、「あらためて伝える」試みが行われていた。エンターテイメント性が高いプログラムだった「リアルパックマンを体験 PAC IN TOWN HoloLens&UNI-CUB版」は、単に楽しめるだけでなく、マイクロソフトの最新テクノロジーを体験できるプログラムだった。バンダイナムコエンターテインメントの「パックマン」をプレイするゲームだが、HoloLensとHONDAのモビリティ「UNI-CUB」を組み合わせたことで、ユーザー自身がパックマンになってプレイする新しいゲームに生まれ変わった。

 プレイしている人を見ると、初めて乗るUNI-CUBに最初は慣れないものの、すぐに操作方法を体感し。プレイを楽しんでいる。自分自身がパックマンとなったゲームをプレイするのは、MRデバイスHoloLensならではといえるだろう。

 このプログラム開発に協力したバンダイナムコ研究所 イノベーション戦略本部フューチャーデザイン部の本山博文氏は、「これまでにもHoloLensの活用を行ってきたが、HONDAさんのUNI-CUBと連携すると、一気にゲーム性が高まった」と興奮気味に話す。マイクロソフトのテクノロジーにパートナーのコンテンツや技術が加わると新しい魅力が生まれることを実感した。

 これまでFamily Dayで紹介されるゲームというとXboxの最新ゲームを紹介するといったプログラムが多かったが、今年は「最新技術を活用する」という要素が加わった。これは日本マイクロソフト社員の家族に向け、「自分たちの仕事を紹介する」という狙いとともに、「意外に、隣の部署が提供している最新テクノロジーは知らないものも多い。こういう機会に社員が最新テクノロジーを体験してもらう場になれば」という狙いもあったそうだ。まさに、「あらためて伝える」ための場としてFamily Dayが活用されていたのだ。

ナムコの協力で誕生した2種類の体験型リアルパックマン。PAC IN TOWNは、HoloLensをつけたプレイヤーがHONDAのモビリティ「UNI-CUB」に乗り、自分自身がパックマンとなってプレイするゲーム

HONDAのUNIーCUB。初心者でも数分で慣れて乗りこなせるという

 もっともマイクロソフトの取り組みをより深く理解してもらうための取り組みは、Family Dayだけにとどまらない。最近、米本社からきた幹部に、AI、クラウド、セキュリティなど新しいテクノロジーを企業が取り入れるためのヒントはどこにあるのか?と質問すると、「マイクロソフトのこれまでの取り組みを見てください」いう答えが返ってきたことがあった。成功だけでなく、成功に至るまでどんな失敗があったのかといった参考となる事例として、「マイクロソフト自身がどんな取り組みをしてきたのか公開していきます」というのだ。

 マイクロソフト自身の取り組みを公開する、提供するソリューションを体験してもらうことは、クラウド、AIなど最新技術を理解してもらうための重要な要素となりそうだ。文字でスペックや概要を紹介するだけでは伝わらないことが、体験が加わることで理解しやすくなることが確かにある。

 実は日本マイクロソフトの品川オフィスも、来社した人が製品やサービスを理解しやすいものとするために、一部分をリニューアルする準備が進められているそうだ。品川オフィスに移転したのは2011年2月。その時点では、複数に分かれていたオフィスの統合、外部から来社した人に来てもらいやすいように、会議室を増やすといった試みが行われた。

 しかし、それから8年経過し、日本マイクロソフト社内からは、「来社した外部の人と、会議室をとって打ち合わせするというスタイルだけでなく、もっとカジュアルに話しをする場が欲しい」といったリクエストがあがってくるようになったのだという。

 現在の日本マイクロソフトのビジネスを紹介するという観点で考えても、品川オフィスに移転する前、新宿オフィス時代のようにハードメーカーと協力して大型サーバーを展示することはそぐわなくなった。同じサーバーといっても、現在はオンプレミスよりもAzureが圧倒的に推されているからだ。

 最新のマイクロソフトを知ってもらうためには、最新技術を体験してもらう仕組み作りができないか、現在は様々なことが検討されているという。こうした変化を受けて、Family Day 2019は、これまでとは違う要素が取り込まれていたようだ。

「触覚でエッグハント」はHoloLensと触覚デバイスを装着してイースターエッグを探す、MR時代の体験型ゲーム

まずはHoloLensを装着

さらに触覚デバイスを装着する

画面を見ながらというより、音と触感を頼りに、隠されているイースターエッグを探す

社長の椅子に座る

 変化と言えば、8月いっぱいで日本法人から米本社に転籍する平野拓也社長の社長室も、Family Dayで公開されていた。社員といえども、普段はあまり足を向けることがない社長室だけに、家族を連れて社長室を訪れる人があとを絶たなかった。

 空いている社長の椅子を見て、「座ってみる?」と配偶者や子供さんに勧める社員や、逆に家族から、「せっかくの機会だから社長の椅子、座ってみればいいじゃない」と勧められる社員の人もいた。

平野拓也社長室の「社長の椅子」。

Family Dayならでは、社長室が開放され、「社長の椅子」に座ることができる。社員でも、「この部屋に来るのは初めて」と漏らす人もいれば、せっかく座った社長の椅子に「嫌だ」と話す子供も

 米国への転籍直前といっても、社長室は特に引っ越しの準備は行われていなかった。平野社長の社長室は、かなり特殊で、デジタル化を進めているために書類の類いがほとんどない。キャビネットの引き出しの中もほぼ何も入っていない。机の上には書類は全く置かれていない。それだけに、「引っ越しといってもほとんど準備は必要なくて。部屋にかかっている絵が入っている額をまとめるくらいかな」と平野社長本人も話していた。


■関連サイト

カテゴリートップへ